地方の中小企業にとって人材探しは、今や事業存続を左右するほど深刻な課題。知名度や福利厚生面などで不利な条件の下、減る一方の働き手を呼び込むにはどうしたらいいのか。スマートフォン(スマホ)などの携帯端末で仕事を探す求職者が増えている昨今、IT(情報技術)を活用した新しいアプローチが注目を集めている。地方企業が「スマホ時代の人材探し」で勝つ方策を紹介する。
採用活動の課題
- 地域柄、応募者数が少なく定着しにくい
- 業務を理解していない応募者が多かった
- 採用後、広告打ち切りや期間短縮難しい
求める人材像
コールスタッフ
- 一流人材にアプローチできる
- 安心感を持たれる知識と経験
親身で的確なアドバイス
他社と違う長所、検索される言葉で
景況感が全国的に改善するなか、事業拡大や新規事業展開に必要な人材集めの厳しさは一段と増している。大都市圏に働き手が流出していく地方の企業にとって、人材の確保は待ったなしの課題だ。 滋賀県守山市のRFCパートナーズ社長、中野慶太氏は、東京、神奈川を中心とする首都圏で建築・医療分野専門の人材紹介業を営んでいたが、縁あって同地に新会社を設立。自社コンサルタントが効率的に転職候補者に会えるようにアポを取るコールスタッフの採用に行き詰まっていた。
求人票作りに鍵
「業界の前線で活躍する 一流の人材に当社コンサルタントと会ってもらうためには、電話での第一印象の鍵を握るアポインターの対応が大切」(中野社長)。コンサルタントと連携して業界の知識なども求められる大事な仕事だが、地域柄、広告を打っても人がなかなか集まらない。そこで、スマホでの利用者が圧倒的に多く、求職者の検索履歴などのデータを基に企業を検索結果に表示させるIndeedを試すことにした。 「担当者が親身に求人票の言葉選びを手伝ってくれたのが大きかった」と振り返る中野社長。社内で使う職種などのキーワードや条件上の強み、仕事内容などを、検索されやすい言葉に変えていった。
「検索の反応データ分析し、即対応。コスト管理も簡単」
中野 慶太 氏, 社長
RFCパートナーズ株式会社
熱意高い応募多数
求める人材は「アポインター」というワードでは仕事を探していないだろう。成約インセンティブの仕組みが伝え切れていない。ならば――。求人情報掲載後の反応データを基に試行を繰り返した結果、安定した応募が来るようになった。しかも「検索の結果の出会いなので、当社の業務を理解した熱心な応募者が多い」(中野社長)という。
Indeed は求人情報を無料掲載することもできるが、有料オプションで得られたアドバイスは「現在の採用活動で不可欠な求職者視点で、検索エンジンの上位を狙う SEO 対策に非常に有効だった」と中野社長は強調する。
自社の求人情報の検索履歴や検索されるまでの流入経路などを分析し、応募の反応が悪ければいつでも掲載情報を変更できる。採用が計画通りに済めばすぐに打ち切ることも可能で、面接に無駄がなくなる。採用活動にかけられる人手も予算も少ない中小企業にとって「時間とコストの管理がロスなくできるのはありがたい」(中野社長)
当事者意識が大切
求人情報を投稿して待つだけでは、採用競争で後れを取る時代。中野社長は「自社の強みを伝えるためには、当事者意識を持つことが大切。より良い情報にするようタイムリーに更新していくのが一番」だという。
地方企業でも中小企業でも、強みはある。他社にはない魅力を、誰にどのように伝えるかが重要なのだ。
RFCパートナーズ株式会社
設立 : 2016年10月
事業内容 : 建築・医療専門の人材紹介業(スカウト・ ヘッドハンティング)
事業規模 : 初年度年商1億円
従業員数 : 15人
(2017年 11月 14日 日本経済新聞掲載)