BCP(事業復旧計画)を障害者雇用に対応させる際のポイント


2021年3月から引き上げられた障害者の法定雇用率。それに伴い、災害などの緊急時に備えて「BCP(事業復旧計画)」に障害者を考慮した内容を加えるなどの対策が必要です。作成時のポイントについて、企業の障害者雇用のサポートや障害者への就職相談などを行う「障害者雇用ドットコム」代表の松井優子さんに伺いました。

 
 

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障害者の法定雇用率引き上げとは


企業が障害者を雇用する割合を定めた「法定雇用率」は、「障害者雇用促進法」に基づき定められた制度です。2021年3月から、民間企業の法定雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられ、対象となる事業主の範囲は従業員数43.5人以上へと変わりました。

 
 

BCPとは


BCP(事業復旧計画)」とは、自然災害や機械の故障などの問題が起きたときに、会社が事業を継続・早期復旧させるための対策や手続きをまとめたものです。
 
あらゆる事象を想定したBCPを作成することで、緊急時に会社が受けるダメージを最小限におさえられるメリットがあります。

 
 

障害者を考慮したBCPづくりのメリット


障害者雇用に関しては、事業継続の観点よりも、緊急時の安否確認や安全管理などの対策が重視されます。そのため、障害者に向けたBCPを一からつくるよりも、従来のBCPに障害者を考慮した内容を加える方が現実的です。

 
 

◆BCPに障害者を考慮した内容を加えるメリット


・障害者へのシミュレーションになる
障害によっては、緊急時に想定外の対応することが難しい場合もあります。あらかじめいくつかのシーンを想定し、事前にシミュレーションすることで当事者が緊急時に対応しやすくなります。
 
・従業員が障害者をサポートしやすい体制を整えられる
緊急時の対応を事前に想定しておくことで、周りの従業員が何をすればいいのかがわかり、行動しやすくなります。

 
 

障害を考慮した内容を追加する際のポイント

 
 

◆障害に関係なく想定しておくこと


会社側としての対応と同時に、当事者に準備や対応をしてもらうための声かけも必要です。たとえば、次のようなポイントがありますが、当事者の意見も聞きながら会社に合う方法を選択するのが良さそうです。
 
<会社が想定しておくこと>
・避難経路の確認
エレベーターを使用できない可能性も含めて、複数の経路を考えます。
 
・交通機関がすべて止まってしまったときの対応
代替手段や連絡方法をあらかじめ確認しておく必要があります。
 
・服薬管理
服薬の有無のほか、帰宅できないときを想定して当事者に予備の薬を持っていてもらうなどの当事者への声かけも必要です。
 
・安否確認
電話がつながらないことを想定し、メールやLINE、安否確認メールの配信サービスの導入など複数の連絡手段を設けます。緊急時に活用できるように、訓練もセットで行います。
 
・複数の連絡先の確保
緊急時につながらない可能性を考慮して、従業員の家庭やその勤務先など複数の連絡先を把握する必要があります。
 
・災害発生時の集合場所
周囲に倒れそうな棚や障害物がない安全な場所を選び、従業員に周知する必要があります。
 
・支援者が不在時の対応
長期に渡る対応が必要な場合は、行政や福祉機関との連携も必要になります。
 
<当事者に備えてもらうこと>
・通信機器の準備
補聴器やスマートフォンなど情報を得るために必要なものは、常に身近な場所に置くように周知します。
 
・通信機器以外のツールの確保
通信機器が使えない場合も想定して、情報にアクセスできる手段やツールを複数確保してもらいます(例:聴覚障害などの場合、メモ帳やホワイトボードなどがあると役に立ちます)。
 
・ヘルプカードの作成
支援を受けるときに配慮してほしいことを書いたカードを作成してもらいます。
 
・通勤時の対応
安全確保の方法や助けを求める相手などを複数想定してもらいます。
 
上記の情報は一度周知して終わりではなく、リスク管理も含めて定期的にアナウンスすると効果的です。

 
 

◆障害別に想定する必要があること


障害別に想定する必要があることを挙げました。当事者がどのような合理的配慮を希望しているのかもあわせて確認しましょう。

 

・身体障害


車椅子の移動など、避難の際にサポートが必要かどうかを当事者に確認します。いざというときに車椅子などの操作ができるように従業員の誰がどのように対応するかも決めておきましょう。

 

・視覚障害


当事者が状況を把握しにくいため、安全を確保したうえで何が起きているかを伝える必要があります。
 
接し方のポイント:避難時にサポートが必要な場合は、突然体に触れることはせず、ひと声かけるなどの配慮をしましょう。移動の際には「この先に階段があります」「◯メートル先で曲がります」などの具体的情報を伝えます。

 

・聴覚障害


補聴器の使用や手話、筆談など、どのコミュニケーションが有効なのかは人によって異なります。あらかじめコミュニケーション手段を確認し、周囲の従業員にも共有しましょう。
 
接し方のポイント:急な動きは聴覚障害者を驚かせてしまう恐れがあるため、まずは相手の視界に入ってから行動しましょう。普段補聴器を使用している人でも周りの音にかき消されて通常よりも聞こえにくくなっている可能性もあります。話した情報が相手にしっかり伝わっているかの確認も必要です。

 

・知的障害、精神障害


個人差はありますが、不測の事態が起きたときに恐怖心が強まったり、混乱してしまったりする可能性があります。このようなときは、安全な場所でクールダウンしてもらいます。普段から接している人がサポートにつけるような体制を組んでおくといいでしょう。
 
接し方のポイント:先が見通せないと不安に感じることもあるため、周りの従業員は「ゆっくり、はっきり、簡潔に」話すことを心がけて、現状を伝えます。また、急に体を触られる、手を引かれるなどがきっかけでパニック状態になる当事者もいるため、どのような対応が適切かを事前に把握しておきましょう。

 
 

雇用者が安心して働き続けられるためにできること


BCPに追加した内容を緊急時に活用するためには、定期的に訓練の場を設ける必要があります。このときに、以下の点に気をつけて行いましょう。

 

  • 訓練の成功を目的にしない
  • 複数のシーンを想定する
  • 行動の優先順位をつける


訓練の成功をゴールにするのではなく、緊急時に対応できるかどうかを軸に進めることが肝心です。行動自体を決めるのではなく、行動の優先順位を設定することで、いざというときに当事者が判断できるようにする目的もあります。訓練で気づいた点や改善点を当事者にヒアリングするなど話し合いの場を設けるのも有効です。
 
サポートをする側も受ける側も、よく知っている相手かどうかで安心感が変わります。普段から従業員同士がコミュニケーションを図るなど、信頼関係を築いておくと緊急時にも行動しやすくなるでしょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年6月時点のものです。
 
<取材先>
障害者雇用ドットコム 松井優子さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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