人材育成とは何か
◆人材育成と企業経営は一体である
「人材育成とは何か」という定義は、企業や個人の考えによって様々ですが、「人材育成とは企業経営そのものである」という考え方があります。
企業という組織が目的に向かって進む時に、その目的を従業員一人ひとりが理解し、働く意味や喜びを知ることで仕事を通して人が成長し、伴ってまた企業も成長するという考え方です。
◆人材不足の時代だからこそ「人材育成」を今一度考える
企業の成長に、人材の成長は欠かせません。経営者や上層部が組織という全体構造のあり方を考えず、人材を替えのきく「道具」としてみなしていると、従業員が入ってもすぐに辞めてしまうなど、人が定着しない部署が生まれます。企業の成長も見込めないでしょう。
人材不足が深刻な現代こそ、事業と人材育成を分けて考えずに人を育て、従業員の成長を促すことが、企業の成長や繁栄につながっていくのです。
企業における人材育成のポイント
有効な人材育成を行うためには、どのようなポイントが挙げられるのでしょうか。いきなり研修などの企画に走る前に、まずは以下のようなポイントを確認してみましょう。
◆「自己決定感」(自己選択感)を持って社員は働いているか
従業員が意欲と満足感を持ち、質の高い仕事をするためには、従業員が「人生においてこの会社を選んでいるのは自分であり、ここで働くことにはこういった意味がある」という「自己決定感」(自己選択感)を持つことが重要なポイントになります。
こうした意識がないと、漫然と仕事に取り組んだり、やらされている感を抱いたりとモチベーションや生産性が下がりやすくなります。
◆「振り返り」の機会を設けているか
多忙な毎日を送っていると、仕事をこなすのに精一杯で自分の人生を見つめる余裕が生まれにくいのも事実。そこで、社内で自身の生き方を振り返る機会を定期的に設けることで人材育成の促進が期待できます。
上司との面談も有用ですが、同じような年次や職務等級の従業員が集まって、他者の意見を聞きながら自分の考えを整理することで、その場だからこその気づきや発見が得られ、「自己決定感」(自己選択感)が生まれやすくなります。
また、外部のキャリアコンサルタントを交えて振り返りの機会を設ける企業もあります。
リモートでの研修設計のポイント
コロナ禍で、リモートワークは対面の代替策というイメージがありますが、人材育成の研修において、学ぶ内容によってはオンラインで行う方が効果的なものもあります。研修内容に適した方法を選択しましょう。
◆知識を学ぶにはeラーニングが有効
専門用語の学習など、知識の習得は教室やオンラインよりも、各自で資料を繰り返し読みこんだりテストを行ったりできるeラーニングを用いるのが効率的です。コストを抑えられるメリットもあります。
◆スキル(技術)を学ぶにはオンライン研修が有効
「ロジカルシンキング」(論理的思考法)など、繰り返しのトレーニングが必要なスキル(技術)の習得と定着には、場所や移動のコストもかからず、個別対応もしやすいオンライン研修が適しています。
大人数でも個別でもコミュニケーションが可能で、チャットなどでそれぞれの意見を共有し、フィードバックしやすいのもメリットです。
◆信念や価値観に関する学びは対面が有効
自分の人生における「振り返り」や信念、価値観などに関する研修は、オンラインでも不可能ではないものの、職場の会議室などで対面で行うほうがより適しています。その場の空気感や一人ひとりの表情など、オンラインの画面ではわかりにくい非言語情報によって、他者との関係性が深まりやすく、より多くの気づきや理解をもたらすためです。
これらを踏まえ、テーマに合わせてeラーニング、オンライン、コロナ感染予防対策を施した対面でのワークなどを組み合わせて研修を行うのがベストです。
<取材先>
アルー株式会社 企画広報グループ 中村俊介さん
東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒。損害保険会社を経て、創業間もないアルー株式会社に参画。多くの大手企業の育成体系の構築や組織変革プロジェクトを手掛ける。納品責任者として東証マザーズ上場を迎えた後、現在はエグゼクティブコンサルタントとしてビジネスリーダーの育成やプログラム開発に携わる。
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト