建築現場で女性が活躍するために必要なこと


人材不足が続いている建築現場は、3K(きつい・汚い・危険)のイメージから、長年「男性社会」と言われてきました。そうした中で、店舗や住宅の左官工事を行う原田左官工業所は、30年前から積極的に女性の左官職人を採用し続けています。男性中心の業界で、どうやって女性が活躍できる環境を作ってきのたか、また女性を採用する際に気をつけたことなど、同社の代表取締役社長・原田宗亮さんにお話を聞きました。

 
 

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引退する人が増えているのに、新人が入らない建築業界


――建築業界でいま起こっている雇用問題とは、どのようなものなのでしょうか。
 
現在、建築の職人さんは60代以上が中心です。今後引退していく方も多いのに、若くして職人を目指す人が少ないため、人材不足が起こっています。
 
――若い人が増えていないのですね。
 
もともとある3K(きつい・汚い・危険)のイメージに加え、今は稼ぎにくくなっており、人材は減っています。その代わりに増えているのが外国人労働者です。
 
昔は仕事を覚えたら、腕のいい職人なら月100万円ほど稼いだという話も聞きました。ところが、今は仕事を覚えるまでの給与が安く、覚えたあとも賃金が上がりづらい。稼げる仕事とは言えないのが現状です。
 
――仕事を覚えても稼げないのはなぜですか?
 
建築需要そのものが減っているのが大きな要因です。バブル期は多くの現場仕事がありましたが、そもそも建物はほかの商品やサービスと比較すると寿命(耐用年数)が長い。土地免責も限られている中で、新築の需要は簡単に生み出せないのです。

 
 

女性が加わったことで、それまでの常識に変化が


――男性中心と言われる建築業界ですが、原田左官工業所は早い段階から女性の職人を採用していたと聞きました。
 
弊社で女性左官が誕生したのは30年ほど前で、今は社員52名のうち、新人を含めて13人の女性職人がいます。
 
――左官はどうしても男性の仕事というイメージがあるのですが、女性を現場に加えることに対してネガティブな声はなかったのでしょうか。
 
残念ながら、最初はありました。それまで男性だけの職場だったので、女性が入ること自体、想像すらつかない状態からのスタートでした。年配の職人たちは、若い男性に対しての指導は慣れていましたが、若い女性と接することがないため、どうしていいのかわからないと混乱していました。
 
戸惑った年配の職人から「自分の現場に女性を入れるな」といった声があったり、ぶっきらぼうな対応が目立ったりしたのですが、この問題は場数を踏むことで少しずつ慣れていきましたね。
 
――女性を採用し始めて感じたメリットはありますか。
 
そうですね、男性に比べて丁寧に仕上げてくれたり、口紅などを素材に混ぜ込んで色をつけたりするなど、女性ならではの発想や目新しさの面が際立っています。男性側の視点だけでなく、違う角度からものごとを見てもらえるのは、職場全体でもプラスでしたね。
 
あとは、従業員が男性だけのときは会社に更衣室がなかったのですが、女性が入社することになって女性用の更衣室を用意しました。するとそれを知った男性社員から、「なぜ男性は更衣室がない」という話になり、男性にも更衣室を用意することになったんです。
 
同じタイプの人だけが集まっていた頃は「当たり前」だと思っていたことが、世の常識とずれていたことに気づけたことは大きいですね。会社としても良かったと思います。
 
――まさに「新しい目線」が加わった良い事例ですね。
 
ほかにも、子育て中の女性職人は、子どもが熱を出したときは休んだり早退したりしています。これって今は当たり前のことですが、従業員が男性だけのときは、家の用事があっても休みが取りづらい雰囲気がありました。でも女性が加わったことにより、男性も用事があるときは休みやすくなりました。

 
 

男女の性差適材適所を活かすことで問題をクリア


――具体的な仕事の現場について教えてください。現場では男女による性差は問題にならなかったのでしょうか。
 
最初は女性を嫌がる職人がいたことと女性を守るために、女性だけのチームを作ったこともあります。しかし、15年ほど前からそのような対応は必要なくなりました。
 
――それはなぜでしょうか?
 
第一に、男性がリーダーの現場に「男性を寄越して」といったことが言われなくなりました。それまで女性を入れると嫌がっていた人たちも、男女どちらでも何も言わなくなったのです。それで、必要がないと感じました。むしろ、「この仕事だからこの人が欲しい」と選ばれるようになりましたね。
 
――女性でも左官の仕事に関しては、性差なくできているのですね。
 
もちろん、左官の仕事は、塗るだけでなく25~30kgはあるセメントなどの素材を担いで運ぶ作業もあります。そういった仕事に、確かに女性は不向きかもしれません。
 
でも、作業はチームで行います。1つの流れの中で、適材適所を見てやればいいという話。女性には向かないものがあっても、チームで回せているならまったく問題ありません。
 
それに、昔と今では仕事も変わってきました。建築方法が変わったことも一因にあると思います。例えば、昔はモルタルの壁が多かったのですが、今はパネルが主流です。セメント50kgをドカドカと塗るような仕事から、素材を2~3mmほどに薄くきれいに塗るような仕事が増えてきました。「南仏プロヴァンス風」など、おしゃれな手仕事も多いのです。
 
仕事の内容が変わり、センスを活かせるような、女性でも活躍しやすい場が増えています。もちろん女性だけでなく、男性でもセンスがいい人はいます。そういった面はむしろ男女関係なく仕事ができてきていますね。

建築現場で活躍する女性のイメージ
 
 

これから女性も採用したいと考えている時に必要なこと


――これまで男性中心の職場だったのに、人材不足を補うために女性の採用を積極的に進め始める企業もあると思います。その企業はまず、どのような行動が必要だと考えますか?
 
女性の採用を考えるならば、まずは着替えやトイレといった環境面を整えることが必要です。これは本人のやる気の有無とは別に、必要なことになります。
 
その上で、女性だからといって特別扱いをしないことも大事です。その子が業務の中で、何が向いているか見てあげる必要があると思いました。
 
――得意分野を伸ばす、ということですか?
 
はい。本当は全工程できるのがベストですが、小柄な方に大柄な男性と同じ量のセメントを運べと言っても無理な話です。向いていることを伸ばし、仕事をつかんでいってもらえばいいと考えています。
 
――女性の採用によって、改めて気づかされたことはありますか。
 
社内のどこかに、女性のための相談窓口を作るといいと思います。男性だけでは気づかないこともあるので、「こうして欲しい」というリクエストを受け付ける窓口です。
 
特に最初、1人だけ女性を採用した場合、その方が孤独に道なき道を開拓していくのは大変です。ちょっとしたことでも言える窓口や相手がいないと、やがて限界が来てしまうでしょう。会社の中が理想ですが、外でもかまいません。相談相手がいることで、抱えているもやもやを吐き出すことができるでしょう。
 
建築の現場は、いろいろな人が関わりながら進みます。多くの人と顔を合わせながらでも、精神的に頼りになる人がいないと孤独を感じるものです。とくに最初は仕事を覚えなければならないし、つらさも大きくなりがちに。左官だけでなく他の業界でも、女性が加わっている職場や業界はあります。そういったところも相談先になるのではないでしょうか。
 
――採用する際に、イメージと実態のずれというのはどの業界でもあると思います。御社ではそういったことはありましたか。
 
かつては、男性とは違う目線が欲しくて女性を採用していました。しかし、今は男女で違いはないと考えています。女性=繊細な仕事が得意と思っていましたが、実際は人によって違いますよね。会社のHPや取材でも、男性だから、女性だからということはないと伝え続けてきました。
 
また、昔は「重いものを運ぶのが辛い」という理由で辞めていく人がいましたが、今ではそういう仕事があると理解してやってくる人が多く、地味な仕事も嫌がらない人がほとんどです。そういったギャップを減らすためにも、5~6年前からインターンシップで職場体験をしてもらうようにしています。
 
――職場体験を導入して、どのような効果がありましたか?
 
建築現場は、冬は寒く、夏は暑い。重いものを運んだり汚れたりと、大変な仕事です。それを体験し、知ってもらった上で、入社してもらうようにしています。結果、ミスマッチが減り、女性の応募も増えてきました。
 
また、採用面接はオフィスで行い、社長や部長など一部の人間としか顔を合わせることがありません。職場体験を通じて、入社後一緒に働く人たちと顔を合わせることで、現場の雰囲気を知ってもらうことにもつながります。その結果、安心して入社してもらえるようになりました。
 
――採用する側・される側、両方にメリットがあるのですね。今後、採用についての抱負はありますか。
 
左官をやりたい、続けたいという人が応募してもらっているので、よい職人を増やしたいですね。そのためにも、仕事を増やせるよう努力していきたいです。

 
 
 

<取材先>
有限会社原田左官工業所
代表取締役社長 原田宗亮さん
 
TEXT:ミノシマタカコ
EDITING:Indeed Japan +ノオト

 

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