どうやって信頼できるスタッフを育てる? 個人経営店舗の人材育成のコツ


※この記事は2020年2月15日に取材したものです。
 
オーナーや常連客のキャラクターがお店の雰囲気に大きく影響する個人経営店では、店の個性をより引き立てるアルバイトスタッフが重宝されます。個人経営のお店は、安心して業務を任せられるスタッフをどのように育てているのでしょうか。京都市で居酒屋を2店舗経営する樫尾英理究さんに、人材育成のコツをお聞きしました。

 
 

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社員とアルバイトスタッフで業務を分担


――樫尾さんは、どういったお店を経営されているのでしょうか。
 
いまお話ししているこちらカウンター式の居酒屋「樫尾食堂」と、立ち飲み屋「樫尾酒店」の2店舗を経営しています。2012年に立ち飲み屋をオープンし、2019年にこちらの姉妹店をつくりました。
 
個人事業主ではなく、法人化しています。2020年2月現在のスタッフは、僕を含めた社員が3人とアルバイトが3人。主に調理は社員が行い、アルバイトはドリンクづくりと注文を聞くこと、お客さんへの接客を担当してもらっています。
 
――社員とアルバイトスタッフでは、明確に業務が分かれているんですね。
 
そうですね。リーズナブルながらしっかりとしたクオリティのメニューを心がけているので、調理経験者を社員登用しています。アルバイトスタッフはそれよりもハードルが低く、飲食経験はなくてもいいので接客がきちんとできる人を歓迎していますね。
 
このほかにも、スタッフに必要なスキルはたくさんあります。2店舗ともそれほど広いわけではない分、お客さんとざっくばらんにコミュニケーションする機会が多いんです。店内を俯瞰する目線を持ちながら、心地良い接客をする能力は重要ですね。

 
 

アルバイトスタッフは技術よりもコミュニケーション能力が大切

 
樫尾食堂・樫尾酒店 樫尾さんとスタッフ

――アルバイトスタッフの条件として、飲食業の経験を問わず「接客がきちんとできること」に重きを置くのはなぜですか。飲食店なら、アルバイトであってもホールの経験豊富な人を重宝したくなると思うのですが。
 
うちの場合は、お客さんと接するのがアルバイトスタッフの主な仕事です。空いているグラスがあったら追加の注文をスムーズに聞いたり、お客さんとの会話を弾ませて心地よい時間を過ごしてもらえるよう振る舞ったり。これらが業務の最重要スキルです。あくまで僕のお店の場合ですが、飲食店出身より接客業出身のほうがうれしいですね。
 
――なるほど。たしかに、スタッフとの会話が楽しいお店はお客さんもよい印象を持ってくれそうです。
 
もちろん社員も、お客さんと近い距離でお話しさせてもらうことはたくさんあります。しかし注文がたてこむと、調理に没頭する時間がどうしても発生してしまう。そんなときも、お客さんに楽しく過ごしてもらえるかどうかは、アルバイトスタッフの話術にかかっています。常連客は気さくな人ばかりなので、あまり気負いすぎてもいけないのですが。
 
――調理は社員、コミュニケーションはアルバイトスタッフと業務範囲を分けているからこそ、それぞれに「必要とされるスキル」があるのですね。
 
業務範囲が明確な方が、仕事内容を把握しやすいと思います。各ポジションで信用できる人を育てることが、小さなお店では特に大切ではないでしょうか。

 
 

試用期間でお互いの意思を確認


――コミュニケーション能力が高いかどうか、採用時にどうやって判断するのでしょうか。
 
「目を見て話すことができるか」「会話が成立するか」など、最低限のポイントは面接でチェックします。ただ、僕は基本的に「まずは働いてみよう」というスタンスですね。
 
面接時、多くの人は緊張して「よそいきの自分」を演出してしまいます。素の状態でどこまで仕事ができるのか、採用段階で全てを把握するのは難しいと思うんです。そのため、まずは現場に入って働いてもらい、必要なスキルを満たしているか、うちの店に合っているかどうかを判断します。
 
――実際のスキルは現場で初めてわかる、ということですね。
 
ええ。そのために研修期間を設け、研修中の給与を別途設定しています。そこでうちの雰囲気にマッチして働いてくれそうだなと思った人は本採用にしますし、うちよりも向いている職場がありそうな人は研修期間で終了にさせてもらっています。
 
ただこれは、僕が一方的に決めるものでもありません。当店はお客さんとの距離が近い、とお話ししましたが、その気さくさが負担になる人もいると思うんです。試用期間で「やっぱり合わないな」と感じたら、遠慮なく言ってくれてかまわない。どちらかが無理をして働くのは得策ではありませんから。

 
 

かつての自分を省みるように、若い人材を育てる

 
樫尾食堂・樫尾酒店 オーナー 樫尾英理究さん

――アルバイトスタッフは、学生を中心に若い方が多いと思います。新しく入ってきた若手はどのような方針で育てていますか?
 
いきなり一から全部教えないことを心がけています。皿洗いひとつとっても、人によって洗い方はさまざま。最終的に綺麗になればいいので、どういう洗い方をするかは個人のやりやすさに任せた方が仕事がスムーズですよね。一から十まで教えると、どうしても「僕の正解」を押し付けてしまうことになります。あえて全てを明かさず、仕事をやり抜くために自分で考えるための余白を与えるようと心がけていますね。
 
あとは月並みですが、怒らないことですね。叱ることと怒ることは似て非なるもの。よほどのことがない限り感情的にならないようにしています。
 
――それは大切な心がけですね。
 
現場の細かい指示はなるべく僕ではなく、経験豊富なアルバイトスタッフに任せるようにしています。同じアルバイト同士なら僕よりフラットな目線で教えることができるでしょうし、そもそもオーナーからの指摘って「怖い」と捉らえられがちなんですよね。
 
――立場の違いは、アルバイトスタッフにとってプレッシャーにもなるのですね。
 
年齢や生まれ育った環境の違いが大きく影響していると思いますが、若い世代とのギャップは感じますね。あくまで主観ですが、今の若者世代は堪え性がなくなったかな、と。
 
少しでも不快感を覚えたりプレッシャーを感じたりすると、落ち込んでしまうだけでなく、最悪の場合は断りなく辞めてしまう人もいる。その気持ちを理解して育てていくには、雇用する側が学習して接し方に気を配らなければいけません。僕は昭和生まれの人間ですし、正直、難しいところもありますが。
 
――自分とはギャップを感じる人材を育てる時、樫尾さんがもっとも大事にしていることは何ですか?
 
若い頃の自分を省みることでしょうか。今の若者は堪え性がないと言いましたけれど、それを悪し様に評価できるほど自分は昔から立派だったのかな、と。僕が20歳の時だって、当時の40歳に「最近の若者は……」と小言を言われていたはずなんですよね。
 
それなのに、自分自身が歳をとるにつれて、仕事ができなかった若い頃を思い返さなくなってくるのではないでしょうか。「できて当たり前」のハードルが、自分の中で知ら知らずのうちに上がり続けてしまっているのかもしれません。
 
できないことを否定せず、冷静に受け入れてスタッフ教育にあたることで、オーナー、社員、アルバイト間でよい関係性を構築していけば、お互いに信頼し合える強いスタッフを育てられるのではないかなと考えています。

 
 
 

<取材先>
樫尾食堂・樫尾酒店 オーナー 樫尾英理究さん
京都市在住。イタリアンや居酒屋での勤務を経て、2012年に独立し「樫尾酒店」をオープン。2019年には2号店となる「樫尾食堂」を開店。京都市の西側・西院駅エリアの人気店となっている。
 
TEXT:ヒラヤマヤスコ(おかん)
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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