派遣社員のテレワークは可能なのか?
企業の経営者や人事担当者の中には、そもそも派遣社員にテレワークを導入できるのか、疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。結論からいえば、全く問題ありません。
実際、厚生労働省からも、正社員と同様に、派遣労働者についても、積極的にテレワークなどの柔軟な働き方への対応が求められています。(※1)
(※1)
派遣元事業主の皆様へ:新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた派遣労働者に係るテレワーク等の実施に対する要請(2月21日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000600728.pdf
派遣先の皆様:新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた派遣労働者に係るテレワークの実施に関する要請(3月16日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000609460.pdf
企業が派遣社員のテレワークを実現するためにクリアすべき課題とは?
しかし、派遣社員の場合はオフィス勤務のため、社外勤務のセキュリティ対策を整備していなかったり、そもそも、派遣先責任者の指揮命令のもと動く業務なので、テレワーク(自宅勤務)を想定した業務内容になっていなかったりします。
このように派遣社員のテレワークは、正社員に比べて難易度が高いのは事実です。そこで、クリアすべき課題を下記に挙げてみました。
◆派遣社員との契約を変更する
企業が派遣社員を受け入れる場合には、労働者派遣法に基づき、派遣会社と労働者派遣契約を結ばなければなりません。この労働者派遣契約の中には、業務内容の他に就業日や就業時間、そして就業場所が詳細に明記されています。今回、自宅でテレワークを実施する場合には、この労働者派遣契約を変更する必要があります。具体的には、自宅で就労する場合は就業場所に、新たに「自宅」を追記するなどの対応が挙げられます。
就業場所として「オフィス住所と、自宅」と明記の上、契約を交わしていれば、「1週間のうち1日はオフィスに出社して、他の日は自宅でテレワーク」といった具体的な勤務スケジュールを派遣社員本人と話しながら決めていくことができます。
また、就業場所が自宅以外に「近隣のカフェ」や「コワーキングスペース」などになる可能性がある場合も、テレワークを始める前に、必ず就業場所に明記しておきましょう。
ただし2020年4月に発令された緊急事態宣言のような緊急性のある場合は、事前に書面による契約変更は必要ありません。派遣元企業と派遣会社との間で話し合い、合意を得られればテレワークを実施することができます。新型コロナウイルス感染症の収束目処が立っていない今、今後も緊急事態が発令される可能性があるので、ぜひ注意しておきましょう。
◆始業・終業時間の連絡共有で、労務時間を管理
オフィス内の、管理者の下で仕事を行っている時に比べて、テレワークでは派遣社員の業務の進捗状況や勤務状況が直接見えないため、長時間勤務などのトラブルが発生しがちです。
そのリスクを最小限に抑えるためにも、テレワークに入る前に、必ず「就業場所と就業時間」は確認しておきましょう。
それだけでは心もとないという企業は、始業・終業時間にメールやチャットで必ず一報をもらったり、1日の簡単な業務報告(業務内容や雑感など)を共有してもらったりすることをルール化すれば、派遣社員の業務を把握することができます。長時間労働だけでなく過重労働などの抑止にもつながるでしょう。
◆チェックリストなどを作成して「セキュリティ対策」を行う
テレワークで気になるのは、自宅でのセキュリティ対策です。外部から社内システムにアクセスできるようになると、企業としてもセキュリティの確保が必要になってきます。たとえば、情報漏えい対策として、派遣社員だけでなく正社員も含めて、テレワークに向けた情報セキュリティに関するチェックリストや注意文書を作成してみてはいかがでしょうか。正社員や派遣社員のセキュリティに対する意識向上にもつながります。
派遣社員のテレワークを円滑に進めるためには?
これまでのオフィス勤務であれば、目の届く距離でマネジメントができましたが、テレワークでは物理的な距離が生まれ、見えない部分が増えてきます。そのため、これまで以上に限られた時間の中でのコミュニケーションが重要になってきます。
単に業務を把握するだけでのやりとりではなく、派遣社員の悩みや不安などもしっかり受け止められる場づくりが求められます。派遣社員が一人でストレスを抱えないように、オンラインでのランチミーティングなどで雑談や世間話が気軽にできる環境を整えたり、派遣会社の営業担当からサポートしてもらったりすることも有効でしょう。派遣社員のテレワークを円滑に行うためには、導入前の準備はもちろん、導入後の対応も見据えておきましょう。
監修:うたしろFP社労士事務所 社労保険労務士/1級FP技能士CFP® 歌代将也
TEXT:西谷忠和
EDITING:Indeed Japan + ノオト