テレワークが本格化、企業が社員のワークライフバランスを追求する効果とは


企業のテレワーク導入をきっかけに、従業員は通勤時間がなくなり、家事や睡眠、子どもとの会話にあてる時間が増えるなど多くのメリットが生まれたといわれています。その反面、家事の負担が増大したり、かえって業務時間が長時間化したりするなど、労働状況が悪化するケースも。テレワークの状況下で、社員のワークライフバランスを保つためのポイントや企業側の注意点について、株式会社ワーク・ライフバランス取締役の大塚万紀子さんにお聞きしました。

 
 

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テレワーク導入でワークライフバランスが崩れることもある?


――最初に、「ワークライフバランス」の考え方について教えてください。
 
仕事上の責任を果たす「ワーク」に対して、「ライフ」には家事や育児・介護だけでなく、自己研鑽や睡眠なども含まれていると考えます。ワークライフバランスとは、ライフで得た知見を生かし、ワークで得た経験をライフに還元し、ワークとライフが相乗効果を生み出していくことだと私たちは定義しています。
 
――企業がテレワークを導入することで、社員は通勤に使っていた分の時間を自由に使うことができるようになりました。これによってワークライフバランスの満足度は上がっているのでしょうか。
 
個人の状況や感じ方に左右されますね。テレワークによって時間の余裕が生まれ、家事や育児に対する貢献感や達成感を得やすい状況にある人は増えているように思います。そういった人は、新しい働き方をポジティブに受け止めているのでは。
 
一方で、テレワークの導入に関わらず以前から家事を全て担っている人や、育児や介護があり自宅だと仕事に集中できない人は、ワークライフバランスに変化がないかもしれません。ワークライフバランスの満足度は、周囲との関係性や働き方、仕事への価値観によるため、テレワークが必ず良い効果をもたらすとは言い切れませんね。
 
――テレワークを始めたことで、ワークライフバランスが崩れてしまうケースもありますか?
 
テレワークで仕事が長時間化しているという悩みはよく聞きます。以前であれば、終業時間になったらチャイムが鳴り、以降は残業時間だと意識しながら仕事ができました。しかし、一定の裁量を持ち、家で仕事をしていると「気が付いたら夜だった」なんてことも。自律的な働き方が従業員側に求められています。
 
また、仕事の指示を出す側も、たとえば「この業務は〇時間を作業の目安にしてほしい」「残業しないよう来週までのスケジュールを共有しましょう」といったマネジメントが必要です。以前なら、上司は部下がオフィスに残っているかどうかを目視で確認し、仕事の進みをある程度把握していたかもしれません。しかし、テレワークでは「隠れ残業」も容易くできてしまいます。その末路として、社員のモチベーション低下やメンタルヘルス疾患につながる場合もあるでしょう。
 
――経営者や上司など、社員をマネジメントする側の価値観も見直す必要がありそうです。
 
残念ながら、テレワークによって「社員に際限なく仕事をさせてもよい状況になった」と考える経営者もいるようです。出社勤務の場合、オフィスから帰宅した後は、企業側が関与できない社員のプライベートの時間でした。テレワークでは働く場所で区切りがつかず自由度が高いため、業務を指示する側の自由度も上がってしまいがちです。
 
例えば、上司から電話連絡が頻繁に来る、ウェブ会議を夜間に入れられる、という話も聞きます。テレワークであっても就業規則で定めた働き方を守るよう、会社として十分配慮すべきです。
 
――会議のあり方の話題が出ましたが、テレワーク導入後、かえってミーティングが増える傾向はありませんか? スケジュールを見れば分かるような内容でも定例ミーティングを行う必要があるのか疑問です。
 
ミーティングを開くかどうかは、目的によって決めた方がいいですね。メールやチャットなどテキストでの情報共有で済む内容なら、ミーティングはどんどん減らしていくべきかと思います。一方で、ブレインストーミングなどを用いてアイデアを出す業務や、社員の目線を合わせたり目標をたてたりする業務には、ミーティングが有効です。

 
PCに向かって仕事をする男性

 
 

スケジュールの「見える化」でプライベートを守り、業務効率もアップ


――テレワークで社員のワークライフバランスを保つための、具体的なポイントを教えてください。
 
一番有効だと思うのが、「時間の見える化」ですね。始業時に「何時から何時まで、どんな仕事を、どのくらい時間をかけて行うのか」、1日の予定をパズルのように埋めていきます。それをメールやチャットツールで共有すれば、別々の場所にいても誰が何時まで就業中か分かり、余計な連絡や確認を避けられます。
 
たとえば、「14時から15時は私用で休みを取りますが、その分は朝8時から9時に前倒して働きます」などと自分の業務ペースを伝える方法も。「今日は必ず18時までに仕事を終えます」と終業時間を共有すると、その時間以降は仕事の連絡をしないよう周りが配慮できます。オンライン上の共有カレンダーを利用する場合は、社外予定だけでなく、社内予定や自分のみで行う作業時間も予定に組み込むことがポイントです。
 
こうした1日のスケジュールは、各自で終業時に振り返りを行い、チームに共有します。どんな働き方が各社員にあっているのか、チームとして「〇〇業務に何時間かかったのか」などが数値で分かるので、マネジメント層は経営戦略を立てやすくなるでしょう。
 
――業務内容とそこに生じた時間を記録して、振り返ることが必要なのですね。
 
個人では毎日振り返り、チーム単位でも定期的に振り返るといいですね。たとえば、「営業部なのに、今月は営業にかけた時間が全体の2割だった。4割まで上げるには、どの仕事の割合を減らしていくか?」などと話し合うポイントが見えてきます。やみくもに働き方改革に取り組むのではなく、ポイントを絞って考えられるので効率的です。
 
――ワークライフバランスを保つための施策は、業務改善にも有効だと。
 
そうですね。社員のワークライフバランスを追求すると、今までいかに時間的戦略なく仕事を進めてきたのかに気が付きます。その結果として業務効率が上がるなら、企業にとっても、社員にとってもWin-Winですよね。

 
リモート会議をしているPC画面の写真

 
 

ワークライフバランスを向上させるポイントは「時間」と「コミュニケーション」


――ほかにも、社員のワークライフバランスを保つために企業側がアシストできることはありますか? 育児や介護など、「ライフ」の比率が高い人が働きやすくなるためのアイデアを教えてください。
 
大きく分けて2つポイントがあると思っています。一つは「従業員のライフの時間を奪わない」こと。心地よい時間の使い方は人によって異なるので、フレックス制度を取り入れるなど、時間という軸から従業員の働きやすさを見直しましょう。
 
もう一つは「コミュニケーション」と「助け合い」ですね。社員同士で助け合う風土を根付かせるために、コミュニケーションが取りやすい仕組みを整え、会社がサポートしてはどうでしょうか。
 
たとえば、子どもが風邪を引いた社員は、一時的に仕事を休まなければいけないでしょう。そんなとき、同僚にスムーズに業務を肩代わりしてもらえたらありがたいでしょうし、子どもが元気になったら別の業務でお返ししたい、と思うはずです。お互い持ちつ持たれつの心意気で、「助けを求めやすく、すぐ手が差し伸べられる環境」をつくることが大事になってくるかと思います。
 
――テレワークで社員同士のコミュニケーションが希薄になっているため、助け合いをしづらい雰囲気も感じられます。
 
弊社では、業務時間中にあえて雑談タイムを設けています。日頃から仲良くなっておくことで、互いの家庭状況などの大変さが分かり、声が掛けやすくなる効果がありました。プライベートに無理に踏み込まないよう配慮しつつも、ラフなコミュニケーションを仕事の場で適切に組み込んでおくのはおすすめです。オフィスでは雑談が自然発生しますが、テレワークだと誰かが企画しないとコミュニケーションが取りづらかったりしますよね。
 
――ちょっとしたコミュニケーションの中から、助け合いの気持ちが生まれるのですね。
 
雑談の場を会社がサポートするなら、所定の休憩時間を15分延長して、その時間は雑談OKという制度を導入してみるのもいいですし、業務内で時間を作るのも有効かと思います。雑談用のチャットルームを設けている会社もありますね。まず3カ月間試してみて、その後に効果を振り返るタイミングもあらかじめ設定しておくと安心です。中小企業の規模なら、新しい取り組みに対する各社員の意見を取り入れやすいはず。社員の合意を取りながらできるだけ柔軟に対応してみましょう。

 
 
 

<取材先>
大塚万紀子さん
Profile
大塚万紀子さん
株式会社ワーク・ライフバランス 取締役
 
同社の創業メンバーとして、現場の働き方にそった細やかかつダイナミックなコンサルティングを提供し続けている。二児の母として、管理職ながら自らも短時間勤務を実践。パートナーコンサルタント、財団法人生涯学習開発財団認定コーチ、金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント専攻客員教授。著書に『30歳からますます輝く女性になる方法』がある。
 
TEXT:笹田理恵
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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