男性育休の取得率アップをどう実現する? 社員の不安を解消する技研製作所の取り組み


厚生労働省主催の「イクメン企業アワード2020」でグランプリを受賞した株式会社技研製作所。受賞のつい2年前まで、同社には男性の育休取得者がいませんでした。取得者ゼロから取り組みを支えたのは、2019年6月に発足した社内の男性育休取得推進チームです。結果として、取り組みから1年が経った2019年度には男性の育休取得率が30%にまで向上し、取得日数は平均110.2日という高い水準となりました。
 
同社では、どのような取り組みによって、取得率アップを達成できたのでしょうか。その背景や取り組み内容、反響について、総務部人事課・池内彩香さん、経営戦略部情報企画課・林君彦さん、グループ会社の株式会社技研施工工務部工務課/関東・土居陽香さんにお話を伺いました。

 
 

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女性たちのチームが主導し、男性の育休取得を推進


――男性育休への取り組みを始めた背景や経緯を教えてください。
 
池内さん:もともと当社では、女性役員が主導となって2018年から「ポジティブ・アクション(女性の活躍推進)プロジェクト」を発足していました。これは、働きやすい職場づくりや「GIKEN」のブランド力向上を目的とした取り組みです。社内の各部門・各拠点から女性社員が選抜され、複数のチームに分かれて活動を行っていました。
 
男性育休取得推進チームが発足したのは2019年6月の活動2期目のことで、まずは男性が育休取得をしやすい雰囲気づくりの醸成と対象者の後方支援を行っていこうと、取得率アップに向けて取り組みを開始しました。私は立ち上げ時からチームに参加しています。
 
土居さん:私は今年度から参加しています。チームが発足されるまでは、男性が仕事を休んで子育てをするという概念があまり浸透しておらず、収入やキャリアへの不安、男性育休に対する知識不足といった課題がありました。
 
これらを解決し、男性育休を推進することによって、男性も女性もワークライフバランスが整った働き方ができます。社員の心身の健康を維持することで、仕事でベストパフォーマンスを発揮することが期待できるでしょう。会社の変化を肌で感じることができる活動に関われて、とても有意義に感じています。
 
――取り組みの内容について教えてください。
 
池内さん:まずは男性育休について社内アンケートを実施しました。社内のプロジェクトを立ち上げたばかりだったこともあり、「会社が男性育休を推進していることを知っていますか?」という項目では「知らない」と答えた社員が26%もいました。
 
一方で、「今後、育休取得の機会があれば取得したいですか?」という項目では、67%の社員から「はい」と回答があり、「取得したい人がこんなにいるのか」といった意識改革のきっかけを作れたと思います。「わからない」(24%)、「いいえ」(9%)と回答した社員の理由の多くには、「育休中の収入面が不安」「同僚へ負担がかかることへの罪悪感」といった回答がありました。

 

男性育休についての社内アンケート結果(技研製作所の提供資料をもとに編集部が作成) 質問:今後、育休の機会があれば取得したいですか?(母数=221) はい 67% いいえ 9% わからない 24% 「いいえ」「わからない」と回答した理由(母数=68) 1位:同僚へ負担がかかることへの罪悪感 2位:育休中の収入面が不安 3位:現在抱えている仕事が手放せない 4位:その他 5位:出世に響いてしまいそう 6位:職場の理解が足りない 7位:仕事を引き継げる人がいない男性育休についての社内アンケート結果(技研製作所の提供資料をもとに編集部が作成)

 
 

育休給付金シミュレーションツールを構築し、不安を軽減


池内さん:収入への不安に対しては、当社の規定をもとに育休給付金シミュレーションツールを構築し、社員が自由に利用できるようにして予想される収入の変化を可視化しました。育児休業給付金は賃金の67%(※)を受け取ることができ、社会保険料が免除になります。しかし、給付金について知らない社員も多く、当初は「育休を取ったら収入がなくなるんでしょ」といった声もありました。
 
シミュレーションツールで実際の給付金や免除額を示すと、「これぐらいはもらえるのか」といった反応があり、誤解が解けたように思います。人事課には、「取得したいがどうしたらいいか」と直接的な質問がくることも増えました。
 
(※)正確には「休業開始時賃金日額」の67%で、育児休業の開始から6カ月経過後は50%が支給される
参考:厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」Q7
 
土居さん:その後、男性育休について全社説明会を4回に分けて行いました。参加者からは「短い期間でも育休を取るには?」「シミュレーションツールをどう使ったらいいの?」といった質問を受け、説明会がひとつの大きなポイントになった印象があります。
 
林さん:全社説明会には、私も参加しました。管理職の立場から正直に言うと、それまでの意識では「男性なのに育休取るの?」という感覚でした。しかし説明会で、男性が育休を取得することの価値や会社としてのメリット、制度の仕組み等を聞くことで意識が変わりました。説明会のあとは部下に対して「育休はいつ取るの?」という接し方になり、取得しやすい雰囲気が会社にできてきたと感じています。
 
池内さん:その他には、社内専用サイトに育児休業専用ページの開設、社内通達による男性育休取得推進の宣言、社内報に実際の取得者へのインタビュー記事を掲載するなど、様々な取り組みを行っています。

 
 

男性育休は、会社にとってマイナスではなくプラスになる


――成果や反響について教えてください。
 
池内さん:社内報に掲載するインタビューを行った際には、「夫婦で喜びや大変さを共有し、子どもと過ごせる貴重な期間が得られて良かった」と言ってくれた社員がいました。また、パートナーの方からのコメントもいただいているのですが、ある奥様からは「心身ともに不安定だったため、育休を取得してくれて本当に助かった。心強かった」といった声も寄せられました。
 
土居さん:取得した社員の奥様からは、「日常的に一緒に子育てすることによって、負担やストレスが軽減された」というコメントも頂けました。育休を取得した社員は、オムツを替える、ミルクをあげるといった「直接育児」だけでなく、パートナーのケアをしたり、他の家事をしたりする「間接育児」の部分への意識が強くなると感じました。

 

育休を取得した男性社員と赤ちゃんの写真育休を取得した男性社員(写真提供=技研製作所)


池内さん:男性社員の育休取得をきっかけに、属人化の見直しや業務の棚卸を行い、生産性が上がってきたという声もあります。
 
また、取得者からは、育休復帰後は業務時間内に終わらせる意識が高まり、「効率的に業務を進められるようになった」「一度業務から離れたことで、客観的に業務を見つめなおすことができ、スリム化や効率化を考えられるようになった」といったコメントもありました。
 
林さん:管理職は「育休をいつ取るのか」を部下に聞いておいて、事前に課内を調整する流れになってきています。それが業務の属人化の見直しにもつながり、「同僚へ負担がかかることへの罪悪感」の解消につながっているかもしれません。属人化の解消のほか、家庭と仕事を両立させていくことが業務にもプラスになって返ってくるなど、男性育休は会社にとって決してマイナスではなく、ポジティブなことが多いと感じています。
 
――採用の面で良かった点はありましたか?
 
池内さん:イクメン企業アワードの受賞後は、採用現場でも男性育休への取り組みや実績を伝えています。新入社員からは「就職活動をしている段階から男性育休の取り組みは知っていて、素晴らしいと思っていた。機会があれば是非取得したい」といった声も届いています。
 
――男性育休の推進について、今後の展望を教えてください。
 
池内さん:当社の男性育休取得推進の取り組みは、まだまだ道半ばです。今後は育休取得率100%の目標に向けて、さらなる意識改革、環境整備を推進していきます。現在は、より育休を取得しやすくするために「育休取得計画届」の導入などを予定しています。新しい仕組みや制度を検討・導入しながら、GIKENグループ全体でサポートを続けていきます。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年5月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社技研製作所 総務部人事課 池内彩香さん
株式会社技研施工 工務部工務課/関東 土居陽香さん
株式会社技研製作所 経営戦略部情報企画課 林君彦さん
 
TEXT:遠藤光太
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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