新入社員が出社初日に無断欠勤をした場合、会社の対応策は?

「採用した社員が勤務初日に来ない。連絡もなしに」――。こんなシーンに直面した経験のある人事・採用担当者もいるのではないでしょうか。無断で初日から出社しなかった従業員に対して、企業側はどのような対応をすべきなのか? 社会保険労務士の寺島有紀さんに伺いました。

 

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「出社初日に新入社員が来ない」のはなぜ?

 

――なぜ、契約したはずの新入社員が、初日から来なくなってしまうのでしょうか。よくある理由を教えてください。

 

そうですね。企業側も本当の理由を把握できないケースが多く、「初日に来ない」という理由がどこにあるかの詳細はわかりません。

 

考えられることとしては、現在、日本の雇用環境は明らかに人手不足のため、圧倒的な売り手市場です。昨今、求職者と企業を結び付けるマッチングサービスやビジネス交流アプリが数多くあります。求職者が企業と出会う機会はこれまで以上に多いため、内定が決まっても複数社とコミュニケーションをとり続け、最終的に他社に入社するケースが以前より多くなっているという見方ができます。

 

出社初日に新入社員が来ないとき、まずやるべきこと

 

――「今日から出社するはずの中途社員が、連絡もなく来ていない」「新卒入社の社員の一人が、初日から姿を見せない」といった時、人事担当者がまず何をすればよいのでしょうか?

 

とにかく当日は、メールや電話で本人に連絡を取ろうとすることが何より重要です。会社には従業員の健康・安全に配慮する「安全配慮義務」があり、もし欠勤している社員に何のアプローチもせず、「従業員が自宅で倒れていた」「事件に巻き込まれていた」といった場合、この安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

 

さらに、無断欠勤は解雇事由にもあたる事案ですので、のちに何らかの係争で解雇の有効性が争われるような場合、会社が積極的に出勤の督促をしようとしたかどうか、連絡したかどうかの証明を求められる可能性もあります。絶対に放置せず、電話やメールで本人を必ず探しましょう。

 

無断欠勤した本人と連絡が取れたら聞くべきこと

 

――その上で本人と連絡が取れた場合、どんな対応をすれば良いのでしょうか?

 

無事連絡がついた場合は、まず心配していたことを伝え、無断欠勤の理由を聞きます。その後、実際にいつから出社できるのか、そもそも今後の就労の意思はあるのか、確認してください。

 

そして、無断欠勤は就業規則に定めたとおり懲戒事由となる事象であり、遅刻・欠勤する場合は必ず会社に連絡しなければいけないというルールの周知を徹底します。将来への戒めも労務管理上重要ですので、はっきりと伝えましょう。

 

無断欠勤について、留守電やメールに残しておくべきメッセージ

 

――企業がメールや電話をしても、無断欠勤した本人から一切を無視されてしまうこともあり得ます。こういった場合は、どのように対応するのが望ましいのでしょうか?

 

留守番電話やメールに、出勤を督促する記録を残すことが重要です。その際には、下記の項目を盛り込みましょう。

 

  1. 無断欠勤の事実
  2. 返信・連絡が欲しい
  3. 引き続き連絡がつかない場合、内容証明郵便の送付や自宅訪問をさせていただく
  4. このまま無断欠勤が続く場合、就業規則に準じて自然退職または解雇となる

 

なお、メッセージや文面では責め立てるニュアンスではなく、返信がしやすいような伝え方を心がけましょう。就労の意思がない場合、社員から自主的な辞意の申し出があれば、結果的にその後の対応がスムーズになるからです。

 

連絡が取れない場合、いつまで連絡をし続ければいいのか

 

――2日目以降も来ない場合、本人への連絡は初日の1回だけ、というわけにはいかないですよね。企業は何回くらい連絡を続け、それでもレスポンスがない場合は解雇できるといった明確な線引やルールはあるのでしょうか?

 

過去には、14日の無断欠勤が続いた労働者への懲戒解雇を有効とした判例があります。一般的な連絡のステップとしては、

 

  1. メール・電話連絡を複数回(2~3回程度)行う
  2. 内容証明郵便の送付を行う
  3. 自宅への訪問を行う

 

を経て、14日間経過を待ったのち、就業規則に準じて自然退職や解雇手続きを踏むことが、会社としてはリスクの少ない安全な対応です。

 

本人から退職願いの連絡があった場合の対応

 

――勤務初日から欠勤をした社員本人から、辞意を含んだ内容のメールが届いた場合、どんな内容を盛り込んで返信すればよいのでしょうか? そのルールやテンプレート作りについて教えてください。

 

会社として、人事担当者として、無断欠勤という迷惑な行為に文句の一つも言いたい気持ちはわかりますが、メールなどで退職願があった場合は、そもそも自社とはマッチングしない人材だったと諦めるしかありません。

 

もちろん、採用コストをかけてせっかく採用した人材ですので、引き止めたいという気持ちもあるでしょう。ただ、入社初日に無断欠勤をするようでは、会社にとっても本人にとっても今後、良い結果は生まないでしょう。

 

会社からの公式な返信内容には

 

  1. 辞意を受け取った旨
  2. そもそも入社初日からの労務提供がなかったため、労働契約自体がなかったということで処理させていただくが、それで良いか?

 

を申し添えて、先方から文面で同意を得ておきましょう。

 

一度も出勤しなかった新入社員の退職手続き

 

――出勤が一度もなかった社員に対して、どんな手続きや処理が発生するのか教えてください。

 

出勤の履歴が一度もなければ、給与の支払いは発生しません。そもそも入社初日からの労務提供がなかったため、労働契約自体がなかったという処理も可能と考えます。これについては、先方から文面で同意を取得しておけば、社会保険や雇用保険上の入社・退社手続きそのものも不要です。

 

つまり、退職手続きではなく、そもそもの入社がなかったと処理すれば、会社にとっても煩雑な手続きをせずに済みます。

 

新入社員に対する損害賠償請求の可否

 

――社員の採用には多くのコストがかかりますし、新入社員の労働によって見込んでいた利益もあったかと思います。無断欠勤および退職は、いわば契約違反。無駄になった投資コストや得られなかった利益について、本人へ賠償責任などを負わせることはできるのでしょうか?

 

採用コストやPCの用意、教育研修の手配など、新入社員の採用には多くの金銭的・時間的なコストがかかります。それがご破算になったわけですから、会社の立場を考えると、なんらかの損害賠償を請求したい気持ちはわかります。

 

ただ、新入社員が入社しなかったことと実際の損害の因果関係を立証するのは簡単ではありません。仮に裁判で具体的な損害を立証できたとしても、会社が納得できる賠償金額が認められるケースはごく稀です。逆に、新入社員を訴えることが企業の風評被害を招くなど、企業にメリットがほとんどありません。よほど悪質なケースを除き、損害賠償請求などは行わない企業がほとんどです。

 

初日に出社したものの、その後は無断欠勤が続く場合

 

――初日だけ出勤して雲隠れしてしまう場合や、朝は出社していたのにお昼以降消えてしまった場合などは、一度も出社しなかったケースと異なる対応になるのでしょうか? 気をつけるべきポイントもあれば、教えてください。

 

勤務初日に出社、途中で早退、その後来なくなった…というケースなら、初日は就労の意思があったと解釈できますので、勤務初日に働いた分については給与が発生しています。そしてこのケースでは、入社自体がなかったと整理するのは難しいため、原則的には雇用保険と社会保険の資格取得手続き、および資格喪失手続きが必要です。のちのちのトラブル防止を考慮すれば、本人から退職届をきっちり回収しておきましょう。

 

勤務初日の無断欠勤を防ぐ方法

 

――「初日の無断欠勤」をされないために、企業側が事前にできることはありますか?

 

取り組みやすい例を3つほどご紹介します。

 

  1. 内定通知書や内定承諾書を取り交わしておく

書面を交わすことで、内定した社員に心理面で入社を意識づけします。

 

  1. 内定者同士の懇親会や既存社員との交流会を実施する

採用通知を出した後、入社までの間に、内定者が参加できる懇親会を設けたり、配属予定部署の社員と交流会を開いたりしてみましょう。入社前にソフトな人間関係づくりを丁寧に行う企業も増えています。

 

  1. 既存社員の紹介シートを配布する

既存社員の顔写真・出身地・趣味・好きなもの・嫌いなもの・前職など、人柄がわかるようなシートを作成し、内定者に配布しておきます。入社後、一緒に働くイメージが持てれば、初日から無断欠勤を誘発するリスクを下げる効果が期待できそうです。

 

このように、内定者と企業の前向きな関係づくりによって、両者の信頼度を高めるのは効果的です。労務実務や初日の無断欠勤防止の面からも、会社と新入社員の関係構築を促す仕組みづくりを考えてみてはいかがでしょうか。

 

<取材先>

寺島戦略社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士 寺島有紀さん

ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応や企業の海外進出労務体制構築など、国内外で幅広く人事労務コンサルティングを行っている。著書に『これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理』(アニモ出版)がある。

 

TEXT:日西愛

EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

 

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