遠隔産業衛生をスムーズに導入するコツ

テレワークをしている女性のイメージ


「遠隔産業衛生」は、ネットワークやデバイスなどを用いる産業衛生活動をいいます。テレワークの定着で企業の「産業保健」の方法にも変化が求められる中、産業医の遠隔産業衛生を企業が導入する際のポイントや注意点を、産業保健サービスを提供するエムステージ取締役の歌代敦さんに解説していただきました。

 
 

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ガイドライン改定で知っておきたい「労働安全衛生分野」


2021年3月25日「テレワークのための適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が改定されました。このガイドラインは、企業における適切な労務管理のもと、従業員が安心して働くことができる良質なテレワークの推進を目的としています。
 
改定の背景には、テレワークが導入できていない企業への導入促進があります。導入にあたり、厚生労働省が提示している望ましい取り組みは以下です。

 

  • オフィスに出社する従業員の負担軽減や業務配分の見直し
  • テレワーク対象者の選定において、雇用形態を理由にしないこと
  • 新人や異動直後の従業員とのコミュニケーション円滑化
  • 不必要な押印や署名の廃止、書類のペーパーレス化や決済の電子化 など

 
 

◆ガイドラインで触れられている労働安全衛生

 
・長時間労働
業務に関する連絡が勤務時間に関係なく行われる、オンオフのメリハリがつけづらいなどの理由から、長時間労働につながる可能性があります。企業は、従業員のワークライフバランスの確保や長時間労働による健康への影響を防ぐための取り組みが必要です。時間外労働の報告ルールの徹底や部署単位で打刻習慣をつけるなどの対処法があります。

 
・メンタルヘルス対策
テレワークでは、従業員同士のコミュニケーションが取りにくく、上司が部下の不調に気づきにくいなどの状況が起こりやすくなっています。企業は、部署内のコミュニケーションの活性化や相談窓口の設置、産業医との健康相談などを導入する必要があります。

 
・作業環境の整備
テレワークには、自宅で働く「在宅勤務」、コワーキングスペースなどを利用する「サテライトオフィス勤務」、従業員が働く場所を自由に選択できる「モバイル勤務」があります。いずれの場合も適切な労働環境の確保が必要です。厚生労働省の「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト」を従業員にチェックしてもらうことで、自身の健康に配慮するなどの自覚を促す効果を期待できます。また、ワークスペースの備品購入一時補助金やネット環境への手当などの措置を実施している企業もあります。

 
 

◆マネジメントの工夫

 

  • 長時間勤務の従業員への注意喚起
  • システム制限をかけて深夜や休日にパソコンを使用できなくする
  • 定時勤務時間外のメールや電話の禁止 など

 
 

産業医の新たな体制「職務遠隔化」とは


厚生労働省が公布した「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」では、産業医が行う産業保健活動の職務遠隔化について触れています。

 
 

◆職務遠隔化の内容


産業医が行う職務遠隔には、以下の業務が該当します。

・衛生委員会への参加
従業員が常時50人以上の事業所は、衛生委員会を設置しなければなりません。衛生委員会とは、月に1度従業員の安全や健康を守るための対策について話し合う場です。産業医は、専門家としての意見を述べる役割として出席します。オンラインの会議ツールのほかに、一定の要件を満たせばメールやチャットでも開催できます。

 
・衛生教育の実施
「労働安全衛生法」第59条第3項で、従業員を新たに雇用した際や作業に変更があった際、衛生教育の実施が義務付けられています。なお、遠隔での衛生教育の実施にあたり「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全法に基づく安全衛生教育等の実施について」を遵守する必要があります。

 
・長時間労働者、高ストレス者の面接指導
長時間労働の対象となる従業員や「ストレスチェック制度(※1)」でストレスが高いと判断された従業員に対し、ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールを活用して面接指導を行います。
 
※1…ストレスに関する設問に従業員が回答し、自身のストレスの状態を調べる検査。従業員が50人以上いる事業所では、年に1度の実施が義務付けられている

 
・職場巡視
産業医は、月に1度(条件を満たせば2カ月に1度)職場巡視を行います。360度カメラで従業員が作業環境を撮影し、それをもとに産業医がアドバイスするケースもあります。

 
 

◆産業医の職務遠隔化のメリット

 
・従業員の表情が見えやすくなる
在宅勤務の場合、マスクをせずに面談できるため、産業医が従業員の表情を把握しやすくなります。

 
・面接指導のハードルの低下
オフィスでの勤務時に従業員が面接指導を希望する場合、上司に許可を取って仕事を抜ける必要があり、従業員が受けることをためらうケースがあります。テレワークの場合、人事担当者や上司に伝える必要はあるものの、周囲の目を気にせず面接指導を受けられます。

 
・対面ではできない面接指導が可能
在宅勤務の場合、本人の食生活をチェックするために実際の食事を見せてもらう、従業員の同意のもと家族を交えて栄養面のアドバイスをするなど様々なことができるようになります。
産業医側も自宅やクリニックにいながら企業や従業員とコンタクトを取れるようになるため、移動の工数をなくせるなどのメリットがあります。

 
 

◆産業医の職務遠隔化のデメリット

 
・休職者の職場復帰の判断材料の減少
休職中の従業員が復職する際、産業医は「カウンセリングルームでの入室から退室までの所作」「業務遂行レベルまで回復しているか」「始業時間までに出勤できるか」などを目安に職場復帰が可能かどうかを判断します。オンライン上のやりとりの場合、所作の確認や出勤について見極めるのは難しく、判断が限定的になってしまいます。

 
 

企業が遠隔産業衛生を導入するために、産業医とどのような連携をとっていくといいのか


遠隔産業衛生の導入には、従業員と産業医の信頼関係が構築できていることが前提です。そのためには、目指す方向性を共有し、相互理解を図ることが重要です。
企業が産業医契約を結んで間もないなど信頼関係を構築できていない場合は、企業が今後解決したい健康課題を産業医に伝え、双方で具体的な解決策に向けたディスカッションを進めることで、相互理解を図ることができます。
 
産業医をこれから探そうとしている企業や信頼関係の構築に課題を抱える企業は、外部サービスを活用するのも一つの方法です。産業医のマッチングや企業と産業医の意見を汲み取りながら遠隔産業衛生をサポートするなど様々な取り組みをしており、遠隔産業衛生を展開しやすくなるので、検討してもいいでしょう。

 
 

遠隔産業衛生導入時の注意点


遠隔産業衛生を導入する際、企業は下記のことに注意しましょう。
 
・通信環境の整備
産業医と従業員が円滑にやりとりできるように、通信環境を整えます。万が一、インターネットの接続が切れた場合に備え、電話面談にすぐに切り替えられるようなルール作りや従業員への事前案内をしておくと安心です。
 
・セキュリティ面の確認
テレワーク導入時と同様に、個人情報の漏洩や外部からの不正アクセスの防止などの観点からセキュリティ面に問題がないかを確認しておきます。
 
・プライバシーの担保
従業員、産業医ともに自宅でテレワークをしている場合、面談を実施する際に双方の同意を得る必要があります。

 
 

◆オンライン面談の録画の是非


録画をすると従業員が緊張してしまい、本音で話すことができなくなるなどの弊害が生じる可能性があります。産業医面談の効果も限定的なものになってしまうため、録画はできる限りせず、産業医は手元でメモを取るなどして対応します。

 
 

◆録画を必要とする場合


ハラスメントなどの通報・通告が必要な場合、「言った」「言わない」など後のトラブルを防ぐために録画をするケースがあります。その場合、面談をする前に必ず従業員に同意を取ることが重要です。
 
「遠隔産業衛生」は、企業はもちろん、産業医や従業員にもメリットのある方法です。うまく取り入れて、従業員が安心して働けるような環境整備に働きかけましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年2月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社エムステージ 取締役 歌代敦さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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