企業がコンプライアンスを重視するメリットとは? その意味と注意点を解説

社内を見渡す社員のイメージ

企業の不祥事が株価下落など経営に影響を及ぼす事案が続いたことにより、必要不可欠なものと認識が深まったコンプライアンス。リスク管理はもちろん、企業価値を高める上でも重要です。コンプライアンスの意味やそれを重視するメリットについて、寺島戦略社会保険労務士事務所代表で社会保険労務士の寺島有紀さんに伺いました。

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コンプライアンスとは

英語では「従う・守る」を意味するコンプライアンス(compliance)。日本では、「企業が法律や社会規範を遵守し、公正に業務を遂行すること」の文脈で使われることが多いですが、実はそれだけではありません。
 
最近では、企業が守るべき社会規範や倫理規範を広く捉え、「CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)」や「SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」の考えも、企業が事業を継続するために必要な基準や規範を遵守する上で、含まれるようになっています。
 
・CSR(Corporate Social Responsibility)
企業が自社の利益のみを追求するのではなく、社会へ与える影響に責任を持ち、消費者や投資家、社会からの要求に対して適切な意思決定をするという責任を指します。
 
・SDGs
国連の加盟国である193カ国が2016年から2030年までの15年間に達成する17の目標を指すもの。2015年の国連サミットで採択され、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」などの目標が掲げられています。
 
たとえばトヨタ自動車は、「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、クルマの環境負荷をゼロにするための挑戦や工場などから排出されるCO2の量の削減など、さまざまな取り組みを進めています。こうした対応が評価され、2020年3月にブランド総合研究所が実施した「企業版SDGs調査2020」の「SDGs取組評価」で1位を獲得しました。こうした課題への対応を行うことは、企業の経営リスクを回避するとともにイメージ向上にもつながります。
 
とはいえ、これからコンプライアンス体制を整えるのにあたっては、まず狭義の意味である法律違反をしない、という点から考えていきましょう。

 

企業はなぜコンプライアンスを重視する必要があるのか


コンプライアンスの必要性として、企業の不祥事に対する社会の目が厳しくなっていることが挙げられます。
 
一度不祥事が起きてしまうと、株価の下落はもちろん、企業イメージの低下は避けられず、信用の回復には長い年月を要します。

 

◆企業がコンプライアンスを重視するメリット

企業がコンプライアンスを重視することは、社員の働きやすい環境作りにもつながります。
 
たとえば、極端な長時間労働やパワハラ、セクハラ、賃金未払いなど労働基準法で定められた内容に違反する企業は「ブラック企業」と呼ばれることがあります。これらの問題は法律を遵守していれば基本的には防止できるため、それができていないことは「コンプライアンス意識が低い企業」と言い換えられます。
 
社会にもその意識が広く浸透しているのもあり、コンプライアンスに取り組むことは企業で働く社員の生活を守ることや、企業価値を保つことにもつながるのです。

 

◆「形ばかりのコンプライアンス」にしないためには?

巨額不正隠しやリコール問題など、社会に明るみになった不祥事の中には、社内規定が正常に機能していない「形ばかりのコンプライアンス」になってしまった事例もあります。
 
コンプライアンスに則った経営とは、「一つひとつの業務について、きちんと手順や規定に従った対応を行うこと」。遵守するためには時間や工程がかかるため、「面倒だから」と決められたプロセスを省いてしまうケースもあるようです。
 
世間を騒がすような大きな不祥事も最初から大規模であったわけではなく、一担当者の小さなルール違反から始まる事例が多いでしょう。たとえ小さな工程であっても「面倒だから省いてしまおう」と軽視しないよう一人ひとりの意識や行動を変える必要があります。そのためには、「報告・連絡・相談」など仕事をする上での基本を日頃から疎かにしないことや「業務の見える化」をはかることが重要です。

 

人事担当者が心がけること

 

◆基本的な労働法関連の知識を押さえておく

企業内で起こる労務トラブルの中には、人事担当者に基本的な労働法関連の知識がなかったばかりに大きな事案に発展してしまったケースも多くあります。言い換えれば、人事担当者に知識があれば、初動で防げたということです。
 
採用に携わっている人の場合は、「採用選考時に明示しなければならない労働条件」や「面接時に不適切な質問」についての知識をつける必要があります。労務に携わっている場合は、労働基準法や安全衛生法などの基礎知識を身につけておくといいでしょう。人事担当者向けの書籍もあるので、活用してもいいかもしれません。

 

◆法改正についてのキャッチアップと経営への提言

近年は働き方が多様化しており、労働関連法の改正が頻繁に行われています。特に2019年4月から順次施行された働き方改革関連法で、大きく次の変更点があります。
 
1)時間外労働の上限規制
施行:2019年(中小企業2020年)4月1日〜
 
法定労働時間を超えて行われる労働である「時間外労働」の上限について、月45時間、年360時間を原則とする。
 
2)年次有給休暇の時季指定
施行:2019年4月1日〜
 
年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者に対し、毎年5日は年次有給休暇を確実に取得する必要がある。
 
3)同一労働同一賃金
施行:2020年(中小企業2021年)4月1日〜
 
同一企業内で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(契約社員やパートタイマー、派遣社員)の間で、賞与や基本給などにおける不合理な差別を禁止する
 
ほかにも、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、企業でのパワーハラスメントが法制化され、防止措置が義務化されます(施行は大企業が2020年6月〜中小企業は2022年4月〜)。
 
人事労務担当者に求められるのは、労務面でのコンプライアンスへの取り組みです。法改正に関する情報のキャッチアップを行い、経営陣に提言することもその一つ。改正には1年程かかるため、早めに情報を入手しておけばじっくりと自社の対応方針を考えられます。


出典:企業版SDGs調査2020(ブランド総合研究所)

https://news.tiiki.jp/articles/4474

※記事内で取り上げた法令は2020年4月時点のものです。
※SDGsの17の目標について、詳しくは国連のWebサイトを参照

https://www.un.org/sustainabledevelopment/sustainable-development-goals/

<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所 代表 社会保険労務士 寺島有紀さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan +南澤悠佳+ ノオト

 
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