企業在籍型ジョブコーチとは?概要や助成金について

PCを見ながら話をする女性と障害者の男性のイメージ


「ジョブコーチ」は、職場の環境整備や障害特性に応じた適切な支援を通じて、障害者の職場適応を図ることを目的とした支援事業です。そのうちの一つで企業に雇用される「企業型ジョブコーチ」の概要や受給できる助成金について、障害者雇用を実施する企業のサポートや障害者の就労支援などを行う「障害者雇用ドットコム」代表の松井優子さんに解説していただきました。

 
 

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ジョブコーチとは?


ジョブコーチ(職場適応援助者)は、障害者の職場適応に課題がある場合に職場に出向き、職場環境の整備や障害特性を踏まえた適切な支援を行います。

 

  • 障害者が職場に適応でき、能力を発揮できるようにする
  • 職場で障害者のサポートをできるような体制を整える


対象となる障害者の入社時に加え、配置転換や生活に大きな変化が生じた時などのタイミングで支援が必要になることがあります。

 
 

◆ジョブコーチの具体的な支援内容


企業と障害者に対して、以下のような支援をします。

 

・企業への支援

 

  • 障害者との接し方のポイントや障害の特性に合わせた仕事の頼み方のアドバイス
  • 障害に配慮した雇用管理、配置の相談
  • 障害特性の理解を深めるための研修を行う、など

 

・障害者への支援

 

  • 職務遂行に関する支援(スケジュールやマニュアルの作成など)
  • 職場の従業員との関わり方
  • 体調や生活リズムの管理に関するもの、など


企業と障害者、双方の調整をするような役割を担っています。お金回りや家族のことなど、生活面でのサポートが必要な時は、障害者就業・生活支援センターなど外部の支援機関と連携します。

 
 

◆ジョブコーチの種類


ジョブコーチは、次の3種類に分けられます。

 

・配置型ジョブコーチ


障害者の職業リハビリテーションサービスなどを行う地域障害者職業センターに在籍するジョブコーチです。地域障害者職業センターは、就職が困難な障害者の支援をするなど障害者雇用の専門的な役割を担っており、配置型ジョブコーチも障害者についてよく理解しています。そのため、訪問型ジョブコーチや企業在籍型ジョブコーチと連携して、障害者が就職先でスムーズに働けるような橋渡しができます。

 

・訪問型ジョブコーチ


障害者の就労支援を行う社会福祉法人などに雇用されるジョブコーチです。「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が実施する「訪問型職場適応援助者養成研修」または厚生労働省が認定する「訪問型職場適応援助者養成研修」を修了していて、必要な経験及び能力を持っていることが条件です。

 

・企業在籍型ジョブコーチ


障害者を雇用する企業の従業員が研修を受けて認定されるジョブコーチです。専任のジョブコーチもいれば、ほかの業務と兼務する人もいます。厚生労働省が認定したNPO団体が実施する「企業在籍型職場適応援助者養成研修」、または「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が実施する「訪問型職場適応援助者養成研修」を修了し、必要な経験及び能力を持っていることが条件です。

 
 

企業在籍型ジョブコーチの特徴

 
 

◆配置型ジョブコーチと訪問型ジョブコーチとの違い


配置型ジョブコーチと訪問型ジョブコーチは、支援が必要な時に障害者の職場に出向き、一定期間を経過したのちに在籍元に戻ります。一方、企業在籍型ジョブコーチは、障害のある労働者と同じ会社に在籍するため、長期にわたる支援が可能です。
 
以下のケースのように企業在籍型ジョブコーチの数が不足する場合は、配置型ジョブコーチが出向き、連携して支援を行います。

 

  • 企業在籍型ジョブコーチが在籍する職場から離れた地域の拠点で支援が必要な場合
  • 障害者の雇用が急に増えた場合 など


企業のどの立場の従業員がジョブコーチになるのかは、組織の規模やジョブコーチの位置付けによって様々です。たとえば、次のようなケースがあります。

 

・ジョブコーチにマネジメントの役割が必要な場合


管理職の社員が兼務することがあります。

 

・業務で障害のある社員と接する機会が多い社員


日頃から障害のある社員と接している社員が、支援のしやすさにつなげようと研修で専門知識を身につけてジョブコーチになるケースもあります。

 
 

企業のメリット、デメリット


企業が企業在籍型ジョブコーチを活用するメリットとデメリットは次の通りです。

 
 

◆企業在籍型ジョブコーチのメリット

 

・担当する障害者が職場に定着しやすくなる


企業在籍型ジョブコーチは障害者と接する時間が長く、障害の特性などを把握しやすい傾向にあります。適切な声かけや指示出しができ、障害者が仕事により集中しやすくなります。

 

・問題が生じた時に早めに対処できる


ジョブコーチが社内にいるため、何か問題が生じた時に早めに気づくことができます。また、周囲が相談しやすいなどの面から、大きなトラブルに発展する前に対処できます。

 

・ジョブコーチとして働く社員のモチベーション向上


専門性のある企業在籍型ジョブコーチとして責任ある役割を担うことで、担当する社員のやりがいにつながります。

 

・助成金を受け取れる


企業在籍型ジョブコーチに対象となる支援を行わせた場合に「企業在籍型職場応援援助者助成金」を受給できます。要件や申請方法など詳細は後述します。

 
 

◆企業在籍型ジョブコーチのデメリット

 

・外部からの視点が入りにくい


ジョブコーチが情報をアップデートできていないと、外部からの視点や新しいアプローチを取り入れにくくなる可能性があります。自社にとっていいと思った支援方法を見直すことなく採用し続けるなどの弊害が生じかねません。

 
 

企業在籍型ジョブコーチに関する助成金制度


企業在籍型ジョブコーチに関する助成金制度に「企業在籍型職場適応援助者助成金」があります。この助成金は、事業主が自社で雇用する障害者に対して企業在籍型ジョブコーチを配置して、職場適応のための援助をさせた場合に受給できます。

 
 

◆支給要件


「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の地域障害者職業センター(地域センター)が作成または承認する支援計画のうち、必要と認められた支援を企業在籍型ジョブコーチに行わせた場合に、助成されます。
 
支給回数は、職場適応援助者ごとに申請事業所における支援計画1回に限ります。

 

・対象障害者


次の1〜4のすべてに当てはまる人を対象とします。
 
1.次のいずれかに該当する人
ア.身体障害者
イ.知的障害者
ウ.精神障害者
エ.発達障害者
オ.難治性疾患のある人
カ.高次脳機能障害のある人
キ.ア〜カ以外の障害者で、地域センターが作成する職業リハビリテーション計画のある人
 
2.常用雇用労働者(1年超の雇用が見込まれる雇用保険被保険者など)
精神障害者で1週間の所定労働時間が15時間以上の人を含みます。
 
3.「対象障害者のための支援計画」による支援を受けている人
「障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型事業所の利用者」として、就労を継続するための支援計画は除きます。
 
4.本助成金のうち訪問型ジョブコーチによる支援対象者として現在支援されていない人

 

・企業在籍型ジョブコーチの要件

 

  • 常用雇用労働者であること
  • 企業在籍型ジョブコーチ研修などを修了していること
  • 研修修了後に初めて支援を行う場合、地域センターに配置されているジョブコーチとともに支援を行うこと
  • 支給対象期間に、本助成金以外の支給対象障害者として支援している人が2人以下であること
  • 現在、助成金などの支給対象障害者として支援されていないこと
  • 国などの委託事業費または補助金などから人件費の全部が支払われていないこと

 

・対象となる事業主


以下の全てに該当する事業主が助成の対象となります。

  • 地域センターが作成または承認した支援計画に従い、適切に職場適応援助を行うものであること
  • 支援の日ごとに支援内容を記録した支援記録票を作成し、保管すること
  • 同一の企業在籍型ジョブコーチが行う職場適応援助について、過去にこの助成金を受給していないこと
  • 同一の対象障害者について、支援開始日前の3年間に2回(精神障害者の場合は3回)以上、この助成金を受給していないこと
  • 支給対象期間に対象障害者と企業在籍型ジョブコーチの労働に対する賃金を支払期日までに支払っていること
  • 対象障害者や企業在籍型ジョブコーチの出勤状況や賃金の支払状況などを明らかにする書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿など)を整備・保管していること
  • 支給対象期間の最終日までの間に対象障害者または企業在籍型ジョブコーチを事業主都合で離職させていないこと

 

◆支給対象となる支援内容


支給対象となる支援は、次の4つです。

  • 支援対象障害者とその家族に対する支援
  • 事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整
  • 関係機関との調整
  • その他の支援(地域センターが必要と認めて支援計画に含めた支援)

 
 

◆支給額


次の1と2の合計額が支給されます。
 
1.「支給額」で示す対象障害者一人あたりの月額に、支援計画に基づく支援が実施された月数(※1)をかけた額

 
精神障害者 短時間労働者以外は中小企業の支給額が12万円、中小企業以外の支給額が9万円。 短時間労働者(※2)は、中小企業の支給額が6万円、中小企業以外の支給額が5万円。 精神障害者以外 短時間労働者以外は中小企業の支給額が8万円、中小企業以外の支給額が6万円。 短時間労働者(※2)は、中小企業の支給額が4万円、中小企業以外の支給額が3万円。


※1 6カ月を上限とする。実施する支援の回数(月平均5回以上)や対象障害者の出勤割合(6割)などの条件がある
※2 1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定時間と比べて短く、かつ30時間未満の労働者のこと
 
2.厚生労働省が認定したNPO団体が実施する企業在籍型ジョブコーチの研修にかかる受講料を事業主がすべて負担し、研修修了後から6カ月以内に初めての支援を実施した場合、その受講料の1/2の額

 
 

◆申請手続き


次の1〜2の手順で受給手続きをする必要があります。
 
1.受給資格認定申請
支援計画の開始日から3カ月以内に「受給資格認定申請書」に必要書類を添えて提出します。提出先は、申請事業所の所在地を管轄する「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の都道府県支部です。
 
2.支給申請
支給対象期間最終日の翌日から起算して2カ月以内に「支給申請書」に必要書類を添えて、受給資格申請をした都道府県支部に提出します。

 
 

企業在籍型ジョブコーチの研修内容、対象者、研修場所


企業在籍型ジョブコーチの研修には次の2種類あり、どちらかの研修を修了する必要があります。

 

・「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が実施するもの


実施回数はあまり多くありませんが、無料で受けられます。

 

・厚生労働省が認定したNPO団体が実施するもの


複数の団体で実施されているため、研修の回数は多いです。団体によって異なりますが、受講費が5万円ほどかかるケースもあります。なお、一定の要件を満たせば「企業在籍型職場適応援助者助成金」の受給とともに受講料の半額を受け取れます。

 
 

◆企業在籍型ジョブコーチ研修の対象者


次の1または2に該当し、研修のすべての日程・カリキュラムを受講できる見込みのある人を対象とします。
 
1.以下の全てに該当する人

  • 障害者を雇用する事業主、または雇用しようとしている事業主に雇用されている
  • 「企業在籍型職場適応援助者助成金」を活用した企業在籍型職場適応援助を予定している


2.以下の全てに該当する人

  • 障害者の雇用管理などに関する業務を担当している、または担当する予定がある
  • 助成金の活用は予定していないが、障害者の雇用管理などをより効果的に行うために研修の受講が必要な人

 
 

◆企業在籍型ジョブコーチの研修内容と研修場所


研修には2パターンあると前述しましたが、NPO団体や委託機関によってカリキュラムに多少の差異があります。ここでは「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の研修内容をもとに解説します。
 
研修は、集合研修と実技研修の2部形式で構成されます。
 
・集合研修(4日間)
集合研修では、以下の内容について学びます。

  • 障害の基本的な知識と対応について
  • 職業リハビリテーションの理論や職場適応援助者の役割についての講義
  • 作業指導の演習(ロールプレイング) など


研修は幕張の障害者職業総合センターと大阪の所定の会場で実施され、全国から受講者が集まります。大阪で行われる研修は、開催時期によって会場が異なります。
 
・実技研修(4日間程度)
各地域の障害者職業センターによる実技研修を受けます。障害者を雇用する企業での実習やケーススタディなど、受講する地域の実情によって内容は異なります。
 
企業在籍型ジョブコーチに求める内容は、企業によって様々です。自社でどのように活躍してもらうのかをあらかじめ明確にしておくと、ジョブコーチとの認識のずれも生じにくく、障害者の支援を行いやすくなります。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年12月時点のものです。
 
<取材先>
障害者雇用ドットコム 代表 松井優子さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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