「マインドフルネス」の導入で生産性を高め、組織力を向上させるには

談笑する社員たちのイメージ


世界中の企業で導入され、生産性の向上や職場のチームワークの改善に目覚ましい効果があると評判の「マインドフルネス」。書店のビジネス書の棚には関連本が並び、日本でも研修に取り入れる企業が増えているといいます。一方で「瞑想をするだけでいいの?」「本当にビジネスに効果があるの?」と疑問を抱く人も少なくありません。多くの企業にマインドフルネスを取り入れた研修を実施してきた、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュートの荻野淳也さんに、ビジネス現場への導入方法について伺いました。

 
 

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マインドフルネスには科学的な裏付けがある


――「マインドフルネス」というと、ヨガや座禅の瞑想のようなイメージを思い浮かべます。
 
確かに「マインドフルネス=瞑想」という印象を持たれている人は多いのですが、瞑想はマインドフルネスになるための手段のひとつにすぎません。「マインドフルネス」とは、「今、この瞬間」に注意を向けている状態のことです。
 
マインドフルネスの状態を目指すプログラムの一つに「マインドフルネス瞑想」がありますが、別名は「アテンション(注意力)のトレーニング」といいます。
呼吸に注意を向け続けることで「今、この瞬間」に集中するトレーニングです。簡単そうに見えて、やってみるとなかなかできないことにすぐに気づきます。普段の仕事でも、メールやメッセンジャーの通知が気になって、なかなか一つのことに集中して取り組めないことが多いのではないでしょうか。労働時間のうち47%は「今、この瞬間」に集中できない「マインド・ワンダリング(心の迷走状態)」にあるというハーバード大学の研究結果もあります。
「マインドフルネス瞑想」は、自分の注意が呼吸からそれたことに気づき、もう一度注意を向け直すことで、トレーニング以外の時でも注意力をキープできるようになることがねらいです。
 
また、マインドフルネス瞑想では「自己認識力」も養われます。
「雑念ばかり浮かんできてしまう自分は瞑想に向いていない」とおっしゃる方がいます。しかし雑念が浮かんでくることは悪いことではないですし、むしろ当然です。そもそもマインドフルネス瞑想は、雑念を消すために行うものではありません。「今、私は集中できていない」「他のことが気になっている」「集中できない自分をダメだと感じている」と、自らの状態に気づき、ありのままに受け止めることが大事です。これによって、自分のネガティブな思考の癖や、アンコンシャス・バイアス(無意識に持っている物の見方や偏見)に気づくことができるようになります。
 
――マインドフルネスでは、自己認識をすることが大切なのですね。具体的に作用する効果も教えてください。
 
マインドフルネスの効果は科学的にも証明されています。マインドフルネスを実践し続けている人の脳は、感情のコントロールや集中力に関わる部位が変化し、注意散漫になりにくくなることが分かっています。他にも、意志決定の質が上がったり、ストレス耐性が上がったりすることが脳機能の面から見ても明らかになっています。「なんとなく効果を感じる」ではなく、科学的な裏付けがあるからこそ、世界中の企業がマインドフルネスを取り入れているのだと思います。

 
 

マインドフルネスで「自己認識力」を高める


――企業で行うマインドフルネス研修ではどんなプログラムが行われるのでしょうか。
 
自分の「今、ここ」に集中するための「マインドフルネス瞑想」、自分の気持ちや考えを書き出していく「ジャーナリング」、そして自分の呼吸に集中するように相手の話を聞く「マインドフル・リスニング」をすることが多いです。
 
「ジャーナリング」は「今、この瞬間」に集中しつつ、自分の内面を深く掘り下げることで「自己認識力」も高めるトレーニングです。自己認識力とは、自分の思考や感情、強みや弱み、価値観、体調といったことをしっかりと認識する力です。経営者や職場のリーダーには特に定期的に実践することをお勧めします。
自分が今、何を考え、どうしていきたいのかを分かっていない、つまり自己認識力の低い状態では、チームを導くことはできません。言うことがその時々でコロコロ変わるリーダーでは、部下は混乱するばかりでチームのモチベーションも上がりません。
 
「マインドフル・リスニング」は相手の話に注意を向けて聴き続けるものです。相手が話している間、決して自分の意見は差し挟みません。こちらも普段は「意見を求められる立場」である経営者やリーダー層には難しいものです。つい「こうすればいいよ」と話を途中で遮ってアドバイスしたくなってしまうのです。
 
しかし、話をしている側からすれば、これは「聞いてもらえなかった」という残念さが残るばかりの状態です。部下であれば「どうせ聞き入れてもらえない」と、新しい意見を出すことに消極的になるでしょう。逆に、集中してマインドフルに最後まで聞いてもらえる体験をすれば、部下は安心してアイデアを提案し、悩みを相談しに来るようになります。「マインドフル・リスニング」には、心理的安全性の高い職場づくりの基盤となる、リーダーの「共感力」を高める効果があります。

 
 

思考のセルフ・マネジメントはスキルアップの基盤


――経営者や企業のマネジメント層にこそ、マインドフルネスが必要なのですね。
 
マインドフルネスが注目を集めるにつれ、「良さそうなプログラムだから社員にやってもらおう」と考える経営者も増えてきました。しかし、まずは経営者ご自身で「マインドフルネス」を実践して、その効果を感じた上で導入されることをおすすめしています。自己認識力のない状態では、社員の「今、ここ」を正しく見ることはできないからです。
 
また、「マインドフルネス」は書籍や講演だけでは効果を実感しにくいものですし、「瞑想」にネガティブなイメージを持っている人もまだ少なくありません。マインドフルネスに対して前向きになれない人に、無理に勧めても決して上手くはいきません。
企業でも導入してみたいと考えるのであれば、最初は興味のある人たちだけのサークル活動として始めてみてはいかがでしょうか? メンバー内で効果を実感してから、外部の専門家に依頼して「マインドフルネス」を取り入れた研修プログラムを作る、という順番で進めると良いでしょう。
 
――企業においては、段階的にマインドフルネスを導入するといいのですね。ビジネス研修として導入する際、メリットをわかりやすく社員に伝えるにはどうすれば良いでしょうか。
 
世の中にはビジネススキルを高めるさまざまな研修があります。人材管理、チームビルディング、タスク管理、ロジカル・シンキングやマーケティングなどのスキルは、パソコンにたとえると「アプリケーション」です。
 
対して「マインドフルネス」はパソコンの「OS(オペレーティングシステム、基本ソフト)」をアップデートするようなものです。いくら最新のアプリを搭載していても、基本となるOSが最適化されていなければ、使いこなすことはできません。OSとはつまり、皆さん自身の感情や思考のことです。感情的な状態や注意力が散漫なままではパフォーマンスが上がりません。社員の皆さんには、ビジネススキルの向上の一環になることをきちんと説明してあげてください。
 
自らの内面の状態を認識し、自らの思考や感情のセルフ・マネジメントを行えるようになるのが、マインドフルネスによってもたらされる効果です。結果として重大な意志決定にも集中して臨めるようになり、他者にも思いやりをもって接することで組織力も高まっていくでしょう。

 
 
 

(参考資料)
Altered anterior insula activation during anticipation and experience of painful stimuli in expert meditators (Antoine Lutz, Daniel R McFarlin, David M Perlman, Tim V Salomons, Richard J Davidson, 2012)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23000783/
 
The neuroscience of mindfulness meditation (Yi-Yuan Tang, Britta K. Hölzel & Michael I. Posner, 2015)
https://www.nature.com/articles/nrn3916
 
<取材先>
荻野淳也さん 一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事
外資系コンサル会社勤務や複数のベンチャー企業での経営企画室長、取締役など、20年以上の企業経営、組織マネジメントの経験を踏まえ、リーダーシップ開発、組織開発の分野で、コンサルティング、トレーニング、エグゼクティブコーチングに従事。『マインドフルネスが最高の人材とチームを作る』(かんき出版)など著書多数。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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