新入社員研修の目的は「早期戦力化」
新入社員研修を行う一番大きな目的は、人材の「早期戦力化」です。それを達成するために、本来は活躍できるはずの人材を離脱させないことが重要となります。
新入社員研修を通じて、採用面接だけでは把握しきれない各自のポテンシャルを見極め、強みを伸ばし、弱みを補うことをめざしましょう。
新入社員研修の企画にあたって
効果的な新入社員研修を企画するためのポイントを見ていきましょう。
◆期間は「内定期間+3年」と捉える
当社のクライアント企業に行ったES調査では、入社1年目は手厚い研修やフォローがあるため満足度が高いものの、2~3年目には下降していく傾向が見られました。
入社直後だけでなく、内定後や入社2~3年目といった不安や迷いが生じやすいタイミングまで見据えて研修を企画することで、離脱防止やモチベーションの維持向上につながります。
◆企画の前に「人物定義」を
研修の内容を考える前に、自社の人材にはどのように成長してほしいのかという「人物定義」を社内で統一させることが重要です。
1・2・3年目それぞれの時点で達成してほしいベンチマークを設定し、そのために必要な能力の要件から逆算して、教えるべき項目をカリキュラムに落とし込んでいきましょう。
◆「業務習熟度マップ」があるとベスト
例えば当社の場合、3カ月、6カ月、1年で習得すべき項目を一覧化した「業務習熟度マップ」を設けています。タイミングごとに項目を定めて、新入社員本人や現場で指導を担う先輩社員にも共有すると、認識の統一を図ることができます。
各フェーズで行うべき新入社員研修の内容とは
内定期間および1・2・3年目でそれぞれどのような内容の研修を行うとよいのでしょうか。
◆内定期間
社会人生活に向けての不安を取り除き、内定辞退を防止するためのフォローが重要となる期間です。
定期的にメールなどで会社からのメッセージを発信する、基礎的なビジネス書を読むといった簡単な宿題を出すなどして、会社とのつながりや安心感を醸成するのがポイントです。同期や先輩とのオンライン交流会を開くのもよいでしょう。
◆入社から一週間
社会人としての基本事項を身につける期間です。
まず会社の一員として理念や行動指針、組織構成、評価制度についてレクチャーしましょう。そしてビジネスマナーや心構えを教えていきます。
特に新卒社員には「明るく挨拶をする」「机に肘をつかない」といった研修の受講姿勢も細かく教えることがポイントです。
◆1年目
担当業務をひと通り回せるようになることをめざし、最初の3カ月程度で実務に必要な知識や技術を重点的に学びます。
その後は2~3カ月に1回程度の頻度でメンタルケアなどのフォローアップ研修を行うと効果的です。
◆2年目
2年目になると後輩を持つことがあるため、先輩社員としてのあり方、指導の方法などの研修を盛り込みましょう。
先輩になるという機会をうまく生かして、モチベーションアップや成長につなげることがポイントです。
◆3年目
3年目はビジネススキル向上をめざして、ロジカルシンキング、数字の読み方、リーダーシップなどのテーマで定期的な研修を行うとよいでしょう。
新入社員研修を行う際の注意点
新入社員研修を行う際の注意点を、以下に4つ挙げました。
1. 適切な講師をアサインすること
研修の題材に合わせて、自社内だけでなく外部の専門家の活用も検討し、新入社員がより理解を深められる研修をめざしましょう。
会社に早く馴染んでもらうため、現場の上長や若手社員に登壇の機会をもってもらうのもおすすめです。
2. めざす人物像がぶれないこと
研修の目的が当初設定した人物定義からずれていかないよう適宜振り返り、必要に応じて軌道修正しましょう。
3. 現場の上長の理解を得ること
研修について、現場の上長から理解を得ることも大切です。研修で学んだことを「そうはいっても実務では……」と現場で否定されては、新入社員が混乱します。事前に現場の上長に研修内容を共有し、その重要性を理解してもらいましょう。
4. 研修後にフォローすること
新入社員に対して、集合研修で習った内容を後日現場で復習するなど人事が丁寧にフォローすることで、学習内容の定着化を図れます。
オンライン新入社員研修で心がけるべきこと
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、新入社員研修をオンラインで行うケースも増えてきました。オンラインでは物理的な距離や制約があるぶん、コミュニケーションの工夫が必要となります。
一方的な講義では受講者が飽きてしまいます。テキストチャット機能や参加者を複数のルームに分割できる機能を活用してディスカッションを活性化させる内容にしましょう。その際「何のテーマについてどのような事柄をアウトプットするのか」という明確な指示を行うのがポイントです。
また、オンラインでは指導しづらい「お辞儀の仕方」「名刺の渡し方」などの立ち居振る舞いは動画を用意して説明するなど、様々な機能や手法を使ってリアルとのギャップを埋めていくとよいでしょう。
<取材先>
株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン 取締役 奥野律子さん
大学卒業後リゾート施設等の企画運営を手がける企業に入社。採用・労務・教育責任者を経て女性初役員に就任。30歳で「関西で活躍する輝く女性50人」に選抜される。2012年4月、株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンの設立メンバーとして参画。創業以来、全サービスの開発責任者を勤める。企業の課題に合わせた教育・評価などの仕組構築を得意とし、46社以上の人事コンサル実績を持つ。
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト