中堅社員研修の目的と考え方


中堅社員研修は、スキルや経験がある程度身についた中堅社員に向けて行います。目的の設定や実施のポイントについて、企業で社員研修を行うラーンウェル代表の関根雅泰さんに解説していただきました。

 
 

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中堅社員が企業で果たすべき役割とは?


中堅社員はスキルや年齢も様々ですが、大きく以下の2つにわけられます。

 

  • 新卒で入社し、管理職になっていない従業員
  • 中途入社し、新人ではなく即戦力を求められる従業員

 
 

◆企業が中堅社員に求める役割


中堅社員に求められる主な役割は以下の通りです。
 
・担当者として成果を上げてもらう
優れた能力を持ち、エキスパートとして業務を行ってもらいます。
 
・管理職の補佐(チームリーダー)
マネージャーの意図を現場に伝えるなど、将来的には管理職として活躍してほしい狙いがあります。
 
上記を踏まえ、中堅社員には次のようなスキルが求められます。
 
・先読み力
管理職は、所属する部署だけでなく他部署や会社の全体最適を目指すため、高い視座を持っています。管理職の補佐に必要とされるのは、上司が考えていることを察知して、先を読んで仕事をする能力です。
 
・巻き込み力
上司や他部署に加え、社外の人を巻き込んで仕事をする能力です。
 
・指導力
いずれは後輩が他部署や社外の人を巻き込んで仕事ができるように指導する必要があります。
 
一方、中堅社員はキャリア上どのような状況にあるのでしょうか。入社後10年間の社員の組織コミットメントの変化のパターンを表した「J字型カーブ」(※1)をもとに説明します。

 

中堅社員のキャリア状況を表したJ字型カーブの図(引用)鈴木竜太著『自律する組織人~組織コミットメントとキャリア論からの展望』2007年,生産性出版,p.64


入社直後は会社への愛着や組織との感情的なつながりをあらわす「情緒コミットメント」が高い状態ですが、1年目から徐々に下がり、しばらく停滞します。しかし、7年目からは急激に上がります。背景には、昇格に伴い仕事に対する責任ややりがいが生まれやすいなどの要因があります。このJ字型カーブが上がっていく時期に該当するのが、中堅社員です。
 
※1 神戸大学院経営学研究科・経営学部の鈴木竜太教授が提唱したもの。変化曲線がアルファベットのJに似た形をしていることから「J字型カーブ」と呼ばれている。

 
 

中堅社員研修での目的設定方法

 
 

◆中堅社員研修のニーズを把握する


中堅社員に前述した役割を身につけてもらうには、現状の把握と不足部分に対する底上げが必要です。しかし、会社が一方的に目的を設定していては、お仕着せの研修になりかねません。意義のある研修にするためにも、目的設定をする前に中堅社員が現状で何に困っていて何を求めているのかを把握しましょう。中堅社員には研修を考えていることを伝え、たとえば次の方法で意見を聞きます。
 
・オンラインで「意見交換会」を開催する
人事担当者が中堅社員に「中堅社員研修を企画しています。内容を決めるにあたり、1時間ほど集まって意見交換をしてもらえませんか」と伝えてオンラインで集まってもらいます。参加者からすると、他部署の人と知り合うきっかけになる、自分の意見を会社に採用してもらえるなどのメリットもあります。
 
・アンケートを実施する
意見交換会の実施が難しい場合は、アンケートで中堅社員が抱える困りごとなどを抽出します。たとえば、無記名式で、以下のようなアンケートを取ります。

 

中堅社員へのアンケート例
1)今、特に困っていることは何ですか?あてはまるもの一つにチェックを入れてください。
□業務の効率化 □上司との関係性 □後輩への指導 □他部署との連携 
□今後のキャリアの方向性 □ワークライフバランス □その他(        )
 
2)上記にチェックを入れた理由を教えていただけませんか?(フリーコメント)
例)業務の効率化 抱える業務が増えていて、少しでも効率化を図りたいため
 
3)中堅社員研修に「期待すること」には何がありますか?(フリーコメント)
例)業務に役立つスキルを学びたい

 
 

◆中堅社員から抽出した課題に優先順位をつける


中堅社員から集めた課題をすべて研修に詰め込もうとすると、実施時間が長くなる、広く浅い内容になるなどの弊害が生じる可能性があります。研修で学んだ内容の定着度を高めるためにも、まずはどの課題から取り組むべきか考えましょう。

 
 

目的に応じた中堅社員研修の主な対象者


研修はすべての中堅社員に必要とは限りません。次の目的があり、対象者がいる場合は実施するといいでしょう。
 
・同期のネットワークや他部署とのかかわりがない人
主に中途採用の従業員が該当します。、業務で他部署との連携も必要になることもあるため、研修を通じて組織内の人脈を作ります。
 
・キャリアアップを考えている人
キャリアに関心のある従業員ほど、会社への愛着を持ちやすい傾向にあります。日常の業務から離れた状態で、これまでの仕事を振り返り、会社と自分の関係性を見直した上で今後自分がどうしていきたいかを考えてもらいましょう。
 
・現状に伸び悩んでいる人
会社は中堅社員に対して、信頼して仕事を任せると同時に放りっぱなしにしない姿勢が大切です。会社が自分のことを考えてくれていると従業員が感じれば、情緒コミットメントも高まり、仕事への意欲につながりやすくなります。その一つの手段として、研修を活用します。
 
・先々に役立つスキルを学びたい人
会社が中堅社員に求めるスキルの一つ「指導力」を身につける目的で、コーチングなどを学びます。
 
一方、新卒で入社した会社で働き続けている中堅社員はスキルや経験も備わっているため、業務について学ぶ研修は必要ではないケースもあります。研修に代わるものとして、次のようなアプローチで「経験」を積ませるのもいいでしょう。
 
・中堅社員がノウハウを共有する場を設ける
ランチタイムや朝などの短い時間を利用します。情報共有の場であると同時に、他者にノウハウを教える行為を通じて自身が学ぶ機会を得られます。
 
・部署をまたいだプロジェクトに参画させる
 
・ジョブローテーションを活用する
マネージャーを育てるために様々な部署の業務を経験させる方法です。

 
 

中堅社員研修を自社で企画するか、外部に委託するか


中堅社員研修は、自社で行う場合と外部に委託する場合があります。それぞれの違いについて、メリット、デメリットの観点から解説します。

 
 

◆自社で行う場合のメリット

 

  • 費用を抑えられる
  • 業務内容との関連度合が高い研修を設計できる

 
 

◆自社で行う場合のデメリット

 

  • 専門性に欠ける可能性がある
    人事や総務担当、業務に関する内容であれば該当部署の担当者などの従業員が講師を担当するため、研修の企画・設計・運営のスキルを持たない可能性があります。
  • 説得力に欠けてしまう
    講師と研修を受ける従業員の関係性によっては、話を聞いてくれないなどの弊害が起こることもあります。

 
 

◆外部に委託する場合のメリット

 

  • 専門性がある
  • 説得力がある

 
 

◆外部に委託する場合のデメリット

 

  • コストがかかる
  • 労力がかかる
    企業の担当者が外部とのやりとりをする必要があります。
  • 業務内容との関連度合いが低い場合がある

 
 

外部に委託する場合のポイント


外部に研修を委託する際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
 
1.目的を設定し、社内の理解を得る
経営陣や現場管理者の合意を得るほか、「今後の戦略として中堅社員にこういうことを学んでもらう必要がある」など、研修の目的を設定し、委託先の担当者に共有しましょう。
 
2.目標を決める
1をもとに「研修でどこまでを目指し、参加者にどういう状態になってほしいのか」を決めます。このときに「研修を活用して売り上げをここまで上げたい」のような現実的でない目標は避けましょう。
 
3.現場の状況を伝える
中堅社員が今何に困っているか、何を課題としているのかを委託先の担当者に伝えましょう。現場の状況をしっかり共有できれば、外部に委託する場合でも関連度を上げられます。

 
 

研修で得たことを業務に生かすための業務環境の整え方か


中堅社員が研修で得たことを生かすためには、次のようなフォローを行いましょう。

 
 

◆研修で学んだ内容を活用できる機会を設ける


後輩指導力研修を受けた中堅社員は後輩とペアを組んで営業に同行したり、一緒のプロジェクトを担当したりして関わる機会を増やすなど、参加者が研修で学んだ内容を活用する機会を作ります。

 
 

◆定期的にリマインドをする


研修を企画した人事・教育担当者や総務担当者から、参加者にメールを送り研修内容や実践できているかのリマインドをします。研修の翌日、1カ月後、半年後など数回にわけて送り、参加者が研修で学んだことを思い出したり、実務に生かせているかどうかを考えたりする機会を作りましょう。
 
また、業務と直接関係あるかを表す「関連度」や研修内容が業務に役立つかを示す「有用度」についてアンケートを実施し、参加者に回答してもらうのも有効です。このアンケートに対する回答の水準が高いほど、業務への実践度が高くなります。

 
 

中堅社員研修の注意点


研修は、次の点に気をつけながら行います。

 
 

◆中堅社員の経験を尊重する


スキルや経験などが備わっている中堅社員の場合、講師が一方的に情報を伝えるだけでは有意義なものにはなりません。参加者が意見交換できるなど自主的に参加するような内容にすることが大切です。

 
 

◆「学びほぐし」の支援をする


中堅社員がこれまでに培ってきたスキルや経験を尊重しながらも、自社で学んできたことや価値観を見直してもらい、上司や後輩など他者の目線に気づく余地を作ります。

 
 

◆1回の研修ですべての内容を盛り込まない


様々なテーマを一度に取り扱うと、1日や半日と長時間を要するため、業務時間との兼ね合いから参加へのハードルが高くなります。テーマごとに1時間や2時間などの短時間で複数回行うほうが、研修に参加しやすくなります。なお、「勉強会」「◯◯活」など別の名前をつけて従業員が自発的に行えるような仕組みにするのも有効です。
 
形式にとらわれず、中堅社員が主体的に取り組めるような研修を行うようにしましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年10月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社ラーンウェル 代表 関根雅泰さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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