執行役員は取締役や執行役とどう違う? 設置条件やメリット・デメリットを解説

企業にとって円滑な経営を行うための制度整備は必須です。その方法の一つに執行役員制度があります。
 
「執行役員」という役職は知っているけれど、その立ち位置やどのようなことをする人なのか、説明ができない人は多いのではないでしょうか。
 
執行役員は、取締役や役員、執行役とどう違うのか。また、執行役員を設置するメリットやデメリットなどについて、堀下社会保険労務士事務所・代表の堀下和紀さんに伺いました。

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執行役員とは

「執行役員」とは、取締役(経営陣)が決定した方針に基づいて、その業務を統括・実行・遂行する人のことです。
 
事業運営のトップであり、「役員」という名前ではありますが、執行役員はあくまでも会社内における「呼称」。経営に参画する権限はなく、立場はいち従業員です。一般的に事業部門の部長クラスが執行役員に就くケースが多いようです。
 
執行役員制度は、1997年にソニーが導入して話題になりました。取締役に業務が集中してしまう状況を改善するために、取締役が本来の業務である「経営方針の決定と監督」に専念できるよう、「個々の業務を実行」する役職として、新たに執行役員を設けました。のちに大企業を中心に多くの企業に導入されるようになりました。

取締役・役員・執行役との違い

執行役員は、「取締役」とどう違うのか、また名称が似ているために「役員」や「執行役」と混同されがちですが、立場や役割は異なります。
 
取締役……役員の一つで、経営の意思決定を行う機関であり人
役員……会社法では取締役、会計参与、監査役を指す。会社経営を行う幹部
執行役……「指名委員会等設置会社」 (指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を置く株式会社)には必須な機関。業務を執行する人
 
以上の3つと、執行役員との大きな違いは以下の2点です。

  1. 会社法における設置の義務
  2. 会社との関係性

株式会社には、取締役などの役員を置く義務があります(会社法第2条)。執行役についても、「指名委員会等設置会社」には必須と会社法で定められています。一方、執行役員には法的定めがないため、設置は任意です。
 
また、基本的に執行役員が企業と「雇用契約」を締結している従業員であるのに対して、役員や執行役は企業と「委任契約」を結んでいます。つまり、雇われているかそうでないかという立場に、大きな違いがあります。

執行役員を設置するメリット・デメリット

執行役員を設置する最大のメリットは、「経営と運営の分業による効率化」が図れることです。特に取締役の負担が軽減されることで、取締役は方針の企画と立案、監督に集中できます。また執行役員はその業務の執行に専念できるため、仕事の効率につながります。
 
一方で、役職が増えることによる「組織の複雑化」や、それにともなう「経営スピードの遅れ」といったデメリットも考えられます。経営に関する意思決定と執行が分断されてしまうため、コミュニケーション不足が生じる可能性があるからです。

執行役員の設置時に決めること

法的な定めがないため、執行役員を設置する際のルールは、企業ごとに自由に決めることができます。
 
一般的には「部長」や「課長」を選任するときと同様の方法で決定し、任期についても、企業によって1年、2年、無期などさまざまです。
 
契約形態は基本的に雇用契約であるため、報酬は他の従業員同様に毎月の給与、賞与が支払われます。ただし、執行役員は従業員のトップといえる責任ある立場であることから、一般従業員よりも多く支払われるケースがほとんどです。
 
また、雇用契約者には労働基準法や雇用保険法などの労働法が適用されるので、執行役員も社会保険など、法律に準じた待遇を受けることができます。ちなみに、委任契約である取締役をはじめとした役員には、労働法は適用されません。

執行役員を解任する際の注意点

執行役員を解任する場合においても、企業ごとに設定した規定に準じて行います。
 
不正や背信を疑う行為、適性に欠ける行為、就業規則に反する行為、成果が見られないなどが一般的な解任理由としてあげられますが、企業ごとの規定なので、法的な問題に発展することは少ないといえます。
 
気をつけたいのは、解任のみならず「解雇」の必要性がある場合です。雇用契約である執行役員には、労働法が適用されます。労働契約法第16条により、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」となるので注意してください。
 
前述したように、執行役員は1997年にソニーが導入して以降、多くの企業が取り入れはじめた制度です。しかし、中小企業においてはそれほど多くはありません。メリット・デメリットでも述べたように、執行役員を設置することは、ある意味、諸刃の剣ともいえます。会社の規模や状況にマッチする制度なのかどうか、導入の際には十分に検討しましょう。


※記事内で取り上げた法令は2021年2月時点のものです。
 
<取材先>
堀下社会保険労務士事務所 代表 堀下和紀さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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