Withコロナ時代で人材市場はどう変わった? – [第2回]中小企業経営者が知っておきたい「いまどき採用事情」黒田真行さんに聞く

過去30年以上にわたり中途採用市場に携わってきた黒田真行氏に、今、中小企業の経営者が実践するべき人材戦略について伺うインタビュー企画です。
 
連載第1回(2020年3月3日取材)では、「長く続いた採用難の時代が終わる」という予想を語った黒田氏。新型コロナウイルスの感染拡大を機に景気は低迷、企業が求人を絞り込むことで人手不足が解消される、というお話でした。
 
その後、4月の緊急事態宣言や外出自粛要請を経て第一波の抑え込みに成功したものの、日本はその後、第二波、第三波に襲われています。景気の落ち込みは顕著にもかかわらず、依然として採用ニーズの高い職種もあります。
 
では、4月以降、中途人材市場はどのような状況に置かれているのか。業種ごと・職種ごとの違いはあるのか。そして中小企業は、こうした変化をどう受け止めるべきなのか。黒田氏に、人材市場の“今”を教えていただきました。

 
 

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好材料と悪材料が交錯する”混沌の時代”


――前回の取材を行ったのは新型コロナウイルスの感染拡大が起きた直後、2020年3月3日でした。その後4月以降の人材マーケットの状況を教えてください。
 
人材採用は景気の影響を一番に受ける市場です。景気がよければ求人数は増え、景気が冷えると求人数は減ります。現に、緊急事態宣言が出て経済がストップした4月以降、求人数は急減し、5月~7月と前年同月比で5割以上ダウンしました(全国求人情報協会調べ)。緊急事態宣言が解除されていったん持ち直したように見えましたが、まだ先行きは不透明です。
 
そして11月現在、日本は新型コロナの第三波に襲われています。「重症者はあまり増えていないじゃないか」と楽観する見方もありますが、今度どのような影響を人材市場にもたらすか予断を許さない状況です。
 
――「7〜9月期はGDPが回復した」という報道もありました。
 
確かに、内閣府が11月16日に発表した今年7〜9月期のGDP速報値を見ると、前期同時期比5%増、年率換算で21.4%増と大幅に回復しました。しかし手放しで喜ぶことはできません。2019年10月〜12月期のGDPは5四半期ぶりのマイナス成長を記録。リーマンショックから10年続いた景気拡大が終わり、そろそろリセッション(景気後退期)に入るだろうと予想されていました。
 
そのタイミングで追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスです。4〜6月期のGDPは前期比マイナス7.8%、年率換算27.8%にまで落ち込みました。7〜9月期のGDPは景気回復を示唆しているものの、第三波がどこまで拡大するのか……。
 
このように現在は、いい材料と悪い材料が混在している状況です。いわば“温水”と“冷水”が入り混じっている。今後、人材市場がどうなるのか、正直誰にも読めないでしょう。

 
 

同じ業界内でも勝ち・負けの明暗が分かれた


――業種や職種によっても、新型コロナウイルスの影響を受けるもの・受けないものがありそうです。
 
エンジニアは依然として採用ニーズが高いですね。また高度成長期に建設された学校や道路の補修を進めている建築土木系のニーズも高止まりのまま。技術者や施工管理の人手が足りず、現場では70〜80代の高齢作業員や外国人が目立っているという状況です。また、薬剤師も足りていないと聞きます。
 
どちらかというと業界より「職種」単位で需給がひっ迫している印象です。例えば、毎年新たに社会に出てくる薬剤師の有資格者数が決まっているのに、薬剤師の求人が多すぎるから、採用難になる。AIやドローン、機械学習といった新しいテクノロジー領域の人材もそうです。習熟した経験者もいなければ専門的に学んだ学生も少ない。需要に対して供給が足りていません。
 
一方で人が余っているのは、様々な業界の営業職、飲食店や旅館のサービス担当、空港関連職員、アパレルや百貨店の店舗スタッフなどでしょう。銀行員も同様です。どんどん支店を廃止したり、業務を自動化したりしています。エンジニアの需要はあっても、営業職や店舗スタッフは人が余る。同じ業界内でも、職種によって需要に差が激しいのが最近の特徴といえます。
 
――どの業界がいい・悪いとは、言いにくい状況なのですね。
 
さらに追い打ちをかけて、同じ業種のなかにも勝ち・負けのムラがあります。飲食業にしても、大多数は新型コロナウイルスによってマイナスの影響を受けているなかで、絶好調な店舗もある。アパレルでも、ワークマンやユニクロが元気な一方で、大リストラを進める企業も出てきています。こうした状況では「どの業界がいいか・悪いか」という命題自体が成立しません。

 
 

100年に一度の転換点を迎えようとしている


――確かに、求職者側からすると、需要の高い職種に移ればいい、勝ち組企業に転職すればいい、という単純な話ではなさそうです。
 
営業マンがいきなり、エンジニアに転じるのは難しいでしょう。共通項がある業種や職種という意味で、物を売る販売業などに適応できる可能性は大いにあると思いますが。いくら優秀な人材でも、経験がないのに「これコーディングしておいて」といわれても、できないのは当然ですよね。
 
しかし、そうした「ミスマッチ」が生じてしまうのが時代の大転換期なのです。駅馬車が普通の時代に、新たに鉄道が登場した時、駅馬車に関連する仕事をしていた人たちの多くが働く場所を失いました。それまで駅馬車の鞍や貨車を作っていた人も、鉄道の技術を学び直さなければならなかった。時代の端境期には、こうしたことが当たり前に起こります。
 
――採用側は、そのような時代の変化をどう捉えるべきでしょう。
 
「欲しい人材がいない」と嘆いてばかりいるのではなく「いないならどうするのか」を考えるべきでしょう。例えば「一から自社で育てる」という選択肢もあります。経験者はなかなか採用できない、しかしその職種を採用しないと事業が回らないというなら、未経験者でも採用してから育てるのが早いかもしれない。
 
そして、この変化は一時的なものではないことを理解することも大切です。今起きているのは「100年に一度」のレベルの大きな転換点。おそらくは、自動車、電話やインターネットが登場した時の衝撃に匹敵するでしょう。
 
しかも現段階は変化が始まる前の「助走期間」に過ぎないと考えるべきです。
 
インターネットが登場して25年あまりです。自動車が登場して25年後には、まだトヨタの「ト」の字もありませんでした。時代を変えるほどの変化は急速には進まず、20〜30年の助走期間があるということ。つまり、インターネットにしろAIにしろ、これからの20年間が本当の転換期といえます。
 
様々な領域でデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されている昨今ですが、雇用の領域にもDXが起ころうとしています。なによりも採用する側は、この大転換期に立たされていることを理解すべき。時代に即した採用戦略を必死で考えなければ、「ゆであがるカエル」になってしまうということを肝に銘じてほしいと思います。

 
 
 
黒田 真行(くろだ まさゆき)
Profile
黒田 真行(くろだ まさゆき)
 
1989年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」ネットマーケティング企画部長、株式会社リクルートドクターズキャリア(現:リクルートメディカルキャリア)取締役などを歴任。現在は「ミドル世代の適正なマッチング」を目指す、ルーセントドアーズ株式会社の代表取締役を務める。人材マーケット分析ならびに人材戦略構築の専門家。

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