今の人手不足はそろそろ終わる?- 中小企業経営者が知っておきたい「いまどき採用事情」第1回(後編)黒田真行さんに聞く

国内最大級の転職サイト「リクナビNEXT」の元編集長であり、過去30年以上にわたり中途採用市場に携わってきた黒田真行氏に、今、中小企業の経営者が実践するべき人材戦略について伺うインタビュー企画。
 
前編では、新型コロナウイルスの感染拡大などによる景気と人材市場の冷え込みを予測しつつも、今こそ生産性の高い“筋肉質な組織”への見直しを図るべきと訴えた黒田氏。そこで後編では、”筋肉質な組織”を構築するうえで必要不可欠な、優秀な人材の獲得方法について伺いました。
 
今、世の中には世界経済を飲み込みかねない巨大な不安要素が渦巻いています。そうしたなかで中小企業には、いかなる人材獲得戦略が求められるのか。激動の時代を生き延びるための指針となるヒントをお届けします。

 

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JD(ジョブ・ディスクリプション)を“真剣”に作ってみる


前編では自社を”筋肉質な組織”=“少数精鋭で勝てる組織”に転換していくために、優秀な人材の組織内比率を上げていく必要性についてお伺いしました。
 
――では具体的に、優秀な人材を獲得するために、中小企業経営者はまず何に取り組むべきでしょうか。
 
まず真っ先に取り組んでほしいのは、“JD”の作成です。JDとはJob Description (ジョブ・ディスクリプション)の略称で、募集する人材に任せたい“詳細な職務内容”について記載された文書を指します。ポイントは、職種や資格・給与、勤務時間に休日などといった、一般的な求人情報に記載するデータ的な募集内容とは異なるということです。
 
具体的にいうと、任せたい職務の目的やミッション、いつまでに、どれくらいの成果を出してほしいかといった達成目標なども併せて記載します。こうした内容を文書としてまとめ、求人情報に盛り込むことで、求職者に入社後の働くイメージを明確にしてもらうことができ、応募の動機付けを強める効果を発揮します。お互いのミスマッチを防ぐ効果、メリットもあると思います。
 
――JDを作成するうえで、注意すべき点はありますか。
 
どんな人材であれば、人一倍の成果を挙げてくれるのか、経営者自らがしっかりと考え、イメージしながら作るべきです。人的リソースの少ない中小企業の場合、人事部などなく、経営者自身が採用担当を兼ねているケースも多いと思います。例えば、喉から手が出るくらいの優秀な人材を目の前にして、任せたいこと、目指してほしいことなどの、要件定義が曖昧なままでは、面接や条件交渉がうまくいくとは思えません。そんな失敗をしないためにも、JDの作成を通して、“ほしい人材のイメージ”を自ら言語化しておく必要があるのです。
 
少人数でも従業員を雇用して事業を回している経営者なら、どのような人材であれば自社で活躍できるのか、本当はわかっているはず。しかし、その具体的な人材像を明確化できていない経営者が多いように感じています。裏を返せば、それができさえすれば優秀な人材を採用できるチャンスが高まるということです。もちろん、曖昧なイメージを明確に言語化する作業は労力が伴います。また仮に言語化できたとしても、その情報をJDとしてまとめるためには、論理的思考と文章力が求められます。多少の苦労は覚悟してでも、経営者自らが取り組むべき仕事だと考え、JDを作成してみてください。
 
――JD作成を初めて行う経営者に役立つヒントはありますか。
 
先ほども述べたとおり、最も大切なのは“経営者自らが作成すること”です。ただし、もし一から作成するのが難しいと感じるのであれば、同業他社のJDをリサーチして、よくできているものを探してみましょう。Indeedはもちろん、新卒サイト、中途採用サイトなど、ヒントを探せるメディアはいくらでもあります。
 
それらを参考に、自社で人一倍の活躍が期待できる優秀な人材像をイメージしながら、JDを作成してみましょう。そして、それを実際の求人活動、採用活動の現場で使ってみる。それから少しずつブラッシュアップして内容を改善していけばいいのです。

 
 

優秀な人材に出会える確率をできるだけ高める


――JD作成後にすべきことを教えてください
 
その情報をより多くの人に届けるために、積極的にPRしていきましょう。また、採用効率を高めるために、さまざまな採用チャネルの特徴を調べるなど情報収集もするべきです。当然ですが、人材1人を選ぶ場合でも、母数が多いほうが、優秀な人材に出会える確率は高まります。
 
求人メディアの歴史を振り返ると、昔は新聞や折り込みチラシ、その後、求人雑誌が幅を利かせ、今ではインターネットが主流となっています。そして、インターネットにおける採用チャネルも日進月歩の進化を遂げ、多様化が進んでいます。
 
例えば、自社のホームページで採用情報を積極的に発信する「オウンドメディアリクルーティング」といった手法が、ここ数年で一気に浸透し、今や珍しいものではなくなりました。また、昨今では求人機能が備わったSNSや、インターネット上の求人情報をクローリングする検索エンジンも急増し、数多くの転職希望者が活用しています。
 
このように変化の速い採用手法のトレンドのなかで、どの手法が自社に適しているか見極める知見も必要になるのです。いずれにせよ、一人でも多く可能性のある人材にアプローチすることが重要です。よって資金的な余裕があるのであれば、人材紹介エージェントを活用することも考えておきましょう。

 
 

優秀な人材は“スピード感”と“口説き力”で獲得する


――優秀な人材を獲得するために、選考はどのように進めるべきでしょうか。
 
選考を行ううえで重要なのは、“スピード感”と“口説き力”の二つです。まずスピード感とは、応募から採用までをいかに最短距離で進めることができるか、です。優秀な人材はきっと、ほかの企業にとってもほしい人材ですから、競合他社もアプローチしている可能性は高いです。そうした状況で選考に時間をかけてしまうと、他社に人材を奪われるリスクも高まります。応募から採用までのフローを見直し、可能な限り短期間で採用決定できる体制を整えておかなければいけません。
 
そして、多くの企業からオファーを受けている人材を迎え入れるためには、自社の魅力をしっかりアピールし、上手に相手を説き伏せられる口説き力が必要です。中小企業において、一番の口説き力を持つのは経営者をおいてほかにいないでしょう。JDをしっかりと作成し、最初の面談からかかわるなど、応募者にこの採用の重要性、強い意欲をしっかりアピールすることを心がけてください。
 
――短期間で採用決断が、入社後のミスマッチを誘発するリスクはないでしょうか。
 
確かに、スピーディな選考には、そういったデメリットもついてくるでしょう。そのリスクを最小限に抑えるための対策も考えておくべきです。例えば、正式採用までの試用期間を設けたり、目標達成度に合わせた報酬制度を設定したりするなど、入社後にできるだけ早く当該人材の適性が見極められるようなルールを準備しておくことです。

 
 

「スタープレイヤー」を獲得するための覚悟が必要


――優秀な人材を獲得するためには、経営者が採用プロセスのすべてを事細かにコントロールすることが重要なのですね。
 
そうです。優秀な人材とは、プロ野球でいえばスタープレイヤーです。どんな球団でもスタープレイヤーをスカウトする際は、監督自らが本人との交渉に出向き、それなりの報酬、条件を提示しますよね。企業が優秀な人材を獲得する場合もまったく同じです。特に大企業に比べて資金力が劣る中小企業の人材採用であれば、経営者自身が多大な労力を費やすのは当然のことといえるでしょう。
 
新型コロナウイルスとの戦いは長期化が予想されており、今後の経済の冷え込みはさらに厳しいものとなりそうです。しかし、前編でもお話ししたとおり、優秀な人材の組織内比率が高まれば、生産性が向上することは間違いありません。今、国内の有効求人倍率は大幅に低下しています。ある意味、こういうタイミングだからこそ“逆張りの発想”が生きてくる。覚悟を持って組織改革を断行し、来るべき“極寒の時代”を乗り切るための準備を始めるべき好機なのかもしれません。

 

ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役 黒田真行氏
Profile
黒田 真行(くろだ まさゆき)
1989年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」ネットマーケティング企画部長、株式会社リクルートドクターズキャリア(現:リクルートメディカルキャリア)取締役などを歴任。現在は「ミドル世代の適正なマッチング」を目指す、ルーセントドアーズ株式会社の代表取締役を務める。人材マーケット分析ならびに人材戦略構築の専門家。
 

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