新型コロナ禍はピンチか?チャンスか? – 中小企業経営者が知っておきたい「いまどき採用事情」黒田真行さんに聞く[第3回]


過去30年以上にわたり中途採用市場に携わってきた黒田真行氏に、今、中小企業の経営者が実践するべき人材戦略について伺うインタビュー企画。
 
連載第3回のテーマは「今、中小企業経営者に求められていること」です。連載第2回では、新型コロナウィルス感染拡大以降の景気の先行きが不透明なこと、業種・職種によって人材の需給のムラが激しいこと、産業界のデジタルトランスフォーメーションが不可避であることなど、現在の人材市場を概観しました。
 
大きな変化にさらされている人材市場ですが、企業のデジタルトランスフォーメーションが新型コロナにより加速していることを考えると、「これまでの20年間はほんの助走期間であり、これからの20年間が本当の転換期」と黒田氏は語ります。そのような状況を踏まえて、中小企業は何をするべきか。このピンチをチャンスに変えるためのポイントとは――改めて黒田氏に伺いました。

 
 

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採用戦略の前に経営戦略の見直しを


――コロナ禍でダメージを追った人材市場は回復するのか、停滞が続くのか。前回は、「好材料と悪材料が交錯する”混沌の時代”」の中、さらに大きな変化がやってくる「100年に一度の転換期」に備えるべき、というお話がありました。こうした状況を、中小企業経営者はどう捉えるべきでしょうか。チャンスとして捉えるのか、ピンチとして捉えるのか。
 
大前提としていえるのは、経営者である以上どんな状況もチャンスに変えていかないといけない、ということです。ピンチだからと嘆いている暇はありません。時代が自社にとって追い風かどうかを気に病むのは、見方を変えれば「風まかせ」な考え方です。これでは経営者とはいえない。会社を守り、成長を持続させていくためなら、「風がないなら自分で風を起こす」のが経営者です。
 
新型コロナの状況がこの先どうなろうと、産業におけるデジタル化が進み、テクノロジーを軸とした社会に変わっていくという大きなトレンドは、今後さらに勢いを増すでしょう。ならば、そうした新しい社会のもと、どのような経営戦略を策定するべきなのか、大げさではなくゼロベースで考えるところから始める必要がある。大きな企業でも中小企業でも、そこはまったく変わらないと思います。
 
そして当然ではありますが、経営戦略にひもづいて、自社に必要な人材像も決まっていくわけですから、採用戦略を考えるのは、この新しい時代を進むうえでの経営戦略をしっかりと考え、決めた後です。「どうしたら人が採用できる?」「人が採用できる会社になるには?」と、採用ありきで経営を考えるようでは、本末転倒です。

 
 

経営戦略次第で中小企業も採用できる


――「大企業からの離職者が増えているため、中小企業が人材を採用できるチャンスも増えている」という見方もあります。
 
新型コロナ以前からのことですが、確かに、電機メーカーやメガバンクなど、重厚長大な企業が45歳以上の早期退職を募る、大規模なリストラに着手するといったニュースをしばしば耳にします。先日は、「大手広告代理店が社員230人を個人事業主にする」というニュースも報じられました。これらが示しているのは、大企業にも大量の正社員人材を抱える余裕がなくなっている、という事実です。トヨタ自動車ですら「終身雇用を守るのは難しい」と社長が発言しているぐらいですから。人材側も、大企業にいること自体が危険、リスクだと考えるようになっているかもしれません。
 
しかし、だからといって私は、「おこぼれのように優秀な人材が中小企業に回ってくるかもしれない」と期待するのは間違っていると思います。大企業だから、中小企業だからではなく、「『今後は新しい場所に移らないと生き残れない』と考えて会社を移る人が増えている」と捉えるべき。そして、時代にマッチした経営戦略をとれる会社には、今も人が十分に集まっている。大企業か中小企業かによらず、経営戦略しだいで採用はできるということです。
 
――ちなみに早期退職に手を挙げて大企業を去った人たちは、その後どう動くのか、傾向はありますか。
 
いろんなパターンがあるでしょう。ただ、1社に長く勤めてきた人は、求人市場の事情を理解してない場合も多い。例えば、積み増しの退職金をもらったから、しばらくは「長く働いた自分にご褒美を」と考え、ゆっくり休んでから就職活動をしようかという、のんきな人もいます。現実には、ブランク期間が長ければ長いほど再就職の難易度は上がっていくのですが……。
 
その一方、いわゆる先を見据えた「リカレント教育」を自ら行うことで新しい領域の知識やノウハウを学び、自己実現ができる可能性の高い分野に挑戦しようという意欲のある人もいます。それに「雇われるだけが仕事人生ではない」と、これまでのキャリアを生かしてフリーランスとなる個人事業主を含めて、新規事業を計画して独立起業する人もいます。生き方も働き方も人それぞれです。

 
 

自社にしかできない経営戦略を必死で考える


――前回、「同じ業界の中でも勝ち・負けが分かれた」「コロナだからといってこの業界がいい・悪いとは言えない」というお話がありました。例えばアパレル業界でも、大半の企業が苦しむなかで、ユニクロやワークマンは業績好調です。それも、個別企業の経営戦略によって明暗が分かれていると見るべきなのでしょうか。
 
それらの業績好調な企業が、マーケットが支持している経営戦略、時代のニーズに合致した経営戦略をとっているのは事実だと思います。ただし、だからといって、それを真似すればいいというわけではありませんし、真似しようと思ってもできるものではありません。例えば、同規模の不動産会社が2社あったとしても、同じ経営戦略はとれない。「ペットと住める住宅に特化する」「高齢者向け住宅に注力する」「外国人向けの賃貸物件を専門とする」など、様々な選択肢がありえるなかで、時代のニーズを読みながら顧客ターゲットを定め、また、組織としてその戦略を実行・継続することが可能かどうか、経営者が必死で考え、判断するしかありません。
 
加えて言うなら、その経営戦略が正しかったかどうかは、後になってみないとわからないものです。それぞれの企業が個別に、それぞれの事業分野において時代の先を読み、自社が有している強みも念頭に置きながら、マーケットに評価される確率の高い経営戦略を練るしかないと思います。
 
――コロナ禍をピンチと捉えるか、チャンスと捉えるかではなく、この環境下で生き残るため、そして成長するための経営戦略を考え続けるしかないということですね。
 
はい。冒頭でもお話ししましたが、「ピンチか、チャンスか」という発想自体がまずい。とはいえ、新型コロナウイルスの発生と流行によって、多くの経営者が、考え方や行動を変えざるを得なくなったことは確かでしょう。ビジネスに限らず、時代や環境の変化は当たり前のように突然訪れます。そういった意味でも、自社の経営戦略を常に見直し、ときに再構築を繰り返しながら、挑戦し続けるしかないのです。
 
それは当然と考え、実践している経営者の元には、必ず優秀な人材が集まってくるはず。そして、そんな企業が、いつの時代も勝ち組といわれているのだと思います。いずれにせよ、採用戦略の前に経営戦略を。まずはこのことを肝に銘じてほしいと思います。


黒田真行氏
Profile
黒田 真行(くろだ まさゆき)
1989年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」ネットマーケティング企画部長、株式会社リクルートドクターズキャリア(現:リクルートメディカルキャリア)取締役などを歴任。現在は「ミドル世代の適正なマッチング」を目指す、ルーセントドアーズ株式会社の代表取締役を務める。人材マーケット分析ならびに人材戦略構築の専門家。

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