今の人手不足はそろそろ終わる? – 中小企業経営者が知っておきたい「いまどき採用事情」第1回(前編)黒田真行さんに聞く

働き方改革、人手不足、採用手法の多様化、そして新型コロナウイルス問題の発生――。今、企業経営は様々なトピックに巻き込まれ、激しい変化の時期を迎えています。
 
それに伴って、これまで通用した採用手法が、明日には否定されているかもしれない昨今。経営者や人事担当者は、人材採用を取り巻く環境変化にさらに敏感になることが必要です。特に、組織の舵取りを一手に担う中小企業経営者にとっては、柔軟かつ果敢な変化が求められる重要なタイミングといえます。
 
「中小企業の経営者は、いわば”4番でエース”であるべき存在。人材採用について主体的に取り組まなければ、生き残ることすら難しくなります」――そう語るのは、国内最大級の転職サイト「リクナビNEXT」の元編集長であり、過去30年以上にわたり中途採用市場に携わってきた黒田真行氏。
 
今回、黒田氏に、近年の人材マーケットの動向や、今後の見通し、さらに変化の激しい時代を生き抜く人材戦略についてインタビューしました。その中で、“採用のプロ”が見据える現在、そして来たるべき未来の姿を予測していただきました。

 
 

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“採用難の時代”が終わりつつある

 
黒田真行氏

ーー現在の人材マーケットをどのように分析されていますか。
 
そろそろ、現在の“採用難の時代”が終わるのではないかと予測しています。ここ数年、人手不足問題が声高に叫ばれてきましたが、そんな状況が一変するのではないかと。
 
というのも、先日、2019年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値のマイナスが発表されるなど、国内の景気に陰りが見え始めたからです。以前から“オリンピック以後”の景気は不安視されていましたが、さらに新型コロナウイルスの発生も重なってしまった。世界を覆う不安の暗雲は急速に色濃くなっており、経済への影響はとても深刻です。そして日本も不景気に突入する可能性がどんどん高まっています。
 
人材マーケットは基本的に景気連動型ですから、もし不景気に陥ればその影響を受けざるを得ません。そうなれば企業は求人を急速に絞り始め、人材マーケットに求職者があふれ出てきます。従前のような人手不足問題はある意味解消されるということです。
 
ーー採用難の時代が終わって、どのような時代を迎えるとお考えでしょうか。
 
これまでとは逆に、安易な採用ができなくなるでしょう。不景気になれば会社の売り上げが落ちるわけですから、人材にかけられる予算も減る。昨今、多くの大企業は40歳以上のリストラを積極的に実施していますが、中小企業も、社員を減らすためのリストラを視野に入れなくてはならなくなるでしょう。
 
過去30年ほどを振り返るってみると、そうした状況が何度も繰り返されてきたわけです。1991年のバブル崩壊、1997年の山一證券廃業と金融ビッグバン、2001年のITバブル崩壊、2009年のリーマンショックなどなど、景気悪化のたびに企業は経営戦略ならびに人材戦略を見直し、生き残りを図ってきました。その意味では、今は、これから到来するであろう“冬の時代”にしっかり備え、行動を開始すべき時期なのだと思います。
 
 

“冬の時代”を生き延びるために。


ーー“冬の時代”に備えるために、まず何に取り組むべきでしょうか。
 
ひと言でいえば“筋肉質な組織”を作るべきです。たとえば、ビジネスモデルが労働集約型の企業の場合、好景気の時期はパフォーマンスの低い人材でもまずは採用して、教育しながらなんとか売り上げをあげればよかった。しかし不景気に転じれば、パフォーマンスの低い人材は経営の首を絞める要因になる。
 
好景気の時期には知らず知らずのうちに、そのように組織の“贅肉”が付きがちです。こうした“贅肉”をそぎ落として、不景気であっても生き延びることができる“筋肉質な組織”を作ることが急務であるといえます。
 
ーー“筋肉質な組織”とは、具体的にどのような組織ですか。優秀な人材を多く抱える組織のことでしょうか。
 
いいえ。人員は少なくてもいい。何よりも生産性の高い組織のことです。優秀な人材を増やすだけでは足りません。重要なのは、ビジネスにかかるすべての予算を見直して縮小し、生産性を向上させることです。
 
そういった意味では、経営全体を俯瞰した人材戦略を立てなければいけません。また、業務の仕組み化や効率化、IT技術の導入、アウトソーシングの活用など、様々な側面から経営戦略の再構築を図る必要もあります。そのなかにあって、人材戦略は、あくまで生産性向上を見据えた一つの手段であると心得てください。
 
ーーでは“筋肉質な組織”を作る人材戦略とは、具体的にどのようなものでしょうか。
 
たとえば、現状100人の陣容で事業を進めているとします。そして、何とか10人の“筋肉質な組織”に転換できないかと考えたとしましょう。現状の100人の中に優秀な人材が3人しかいないとしたら、97人を減らして、優秀な人材を7人採用しなければならない。つまり、足し算と引き算を同時に行ないながら組織を作っていくことが重要です。もちろん簡単にできることではないですが、そのくらい大胆に組織を変える必要があると経営者自身が本気で思うことが大事。そして両者をバランスよくかつスピーディに計画、実行していかなければいけません。
 
ーー組織の中の優秀な人材の比率を増やしていくのですね。優秀な人材を採用するときに、重要なことは何でしょうか。
 
優秀な人材というのは、自社だけでなく、いろんな会社が欲しがる人材です。新規の採用では他社と競合することになるし、その人自身には交渉力があるため、出ていかれるリスクもある。だから、自社を優秀な人材から“選ばれる会社”に変えなくてはいけません。
 
ーー選ばれる会社になるためには、何を変えるできでしょうか。やはり給与などの報酬でしょうか。
 
何を魅力に感じるかは人それぞれなので一概にはいえませんが、もちろん報酬を上げるのも一つの方法です。報酬を上げるためには、大胆なリストラなどをして優秀な人材に提供できる人件費を作るか、ときには労働分配率を調整して、経営者の利益を減らさなければいけない。いずれにしても“選ばれる会社”になるためには、そうした組織の再構築、身を切るようなトレードオフを受け入れる覚悟をしなければいけないでしょう。

今こそ“筋肉質な組織”を作るチャンス


ーー“冬の時代”は、多くの中小企業経営者にとって厳しい時代になりそうですね。
 
景気の山谷はいつの時代も必ずやってきます。過去に永遠に続いた好景気などない以上、経営者は常にピンチに備える心構えと準備が必要といえます。それにもし、私の予想が外れて、1年後にいうほど景気が悪くなかったとしても、生産性の向上はどの企業にとっても助けとなります。優秀な人材の組織内比率が増えれば、生産性が向上することは間違いありません。中小企業経営者の方は、今こそその好機であると前向きにとらえ、できるだけ早く“筋肉質な組織”への転換に取り組むべきだと思います。(2020年3月3日取材)
 
ーー本インタビューは後編に続きます。後編では、優秀な人材を獲得するためのツールとそれらの具体的な使い方などについて解説していただきます。

 
 
 

黒田 真行
Profile
黒田 真行(くろだ まさゆき)
 
1989年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」ネットマーケティング企画部長、株式会社リクルートドクターズキャリア(現:リクルートメディカルキャリア)取締役などを歴任。現在は「ミドル世代の適正なマッチング」を目指す、ルーセントドアーズ株式会社の代表取締役を務める。人材マーケット分析ならびに人材戦略構築の専門家。

 

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