女性も健康で長く働ける職場づくりに 「フェムテック」をマネジメントに生かす

頭を抱える女性のイメージ


女性活躍の時代と言われる中、「女性社員が管理職になってくれない」「これからチームを引っ張っていってほしい30代で女性が退職してしまう」という事例は後を絶ちません。女性視点マーケティング®事業を手がける株式会社ハー・ストーリィ代表取締役の日野佳恵子さんは「男性と同じ条件や待遇にしさえすれば、女性も活躍できるわけではありません。むしろ女性と男性では抱える健康問題が違うことを知り、それぞれに配慮することが重要」と訴えます。
女性の健康課題をテクノロジーによって解決する「フェムテック」の隆盛と、その奥にある一人ひとりの身体や健康にまつわる「違い」を認めていくマネジメントの必要性についてお聞きしました。

 
 

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注目を集める女性の健康課題


――さまざまなメディアで「フェムテック」という言葉が取り上げられています。背景には、女性のキャリアやライフスタイルに対する考え方の大きな変化があると聞きました。
 
「フェムテック」とは、女性の健康課題を技術力(テクノロジー)によって解決する商品やサービスのことです。月経周期を記録・管理するアプリや、ナプキンがいらない月経用の下着、あるいは女性ならではの「がん」(乳がん、子宮頸がんなど)や、女性が特にかかりやすい骨粗しょう症の検査や診断をサポートするサービスなどです。
 
フェムテックが注目されるようになった理由の一つに、女性の社会進出があります。経営者や管理職に就く女性たちが、妊娠や出産を経験しつつ、組織のリーダーでもあり続けることの難しさを率直に発信するようになりました。
 
日本でも女性アイドルやタレントがYouTubeやSNSなどで月経や更年期障害の大変さを発信する機会が増え、多くの女性が「苦しいのは自分だけではなかった」と気づき、我慢していた身体の悩みに対処していこうという機運が生まれました。

 
 

女性も、自身の健康に対する知識が不足している


――女性の健康問題が注目されてこなかった背景には、女性が悩みを打ち明ける機会や、それが取り上げられる機会もあまりなかったという状況があるのですね。
 
女性の健康問題について、正しく理解されてこなかったことも原因の一つです。ほとんどの女性が経験するものなのに、男性も女性自身も、家庭や学校で月経や更年期障害についてきちんと教わった経験がある人が少ないのです。
 
また、月経痛の症状は、全く気にならない人から痛みのあまり寝込んでしまうほど辛い人までさまざまです。それゆえに女性同士でも理解されにくいことが多く、誰にも相談できず市販の鎮痛薬を飲んで我慢しているという人が珍しくありません。鎮痛薬を毎回飲まなければならないほどの月経痛は、子宮などの病気が原因で起っていることも多いと言われています。しかし、そうした悩みを産婦人科で相談したことがあるという女性は少ないのです。
 
――女性自身も、自分の症状や健康課題から目をそらしてしまっていたのですね。
 
昔に比べて現在では女性特有の病気が増えているという面もあります。第一次ベビーブームと言われた1947年の日本の合計特殊出生率は4.5です。一人の女性が4人、5人と子どもを産むことが珍しくなかった時代と言えるでしょう。
 
しかしここ10年の合計特殊出生率は1.3~1.4程度です。生涯に一度も出産しない、あるいは子どもは1人か2人という人が多くなっているのはよく知られている通りです。(厚生労働省「出生数、合計特殊出生率の推移」より)
 
妊娠から出産後の授乳中までは月経がありません。つまり、現代女性は月経の回数が昔の女性よりも増えているのです。それに伴い、月経に関わる疾患も年々増加しています。

 
 

企業の経営課題でもある女性の健康


――「女性の社会進出」と「女性ならではの健康問題」の両方が注目されるようになってきたのですね。
 
女性の就業率が上がり、女性の管理職も増えています。それは同時に、月経や妊娠・出産、あるいは不妊治療や更年期障害に伴う心身の不調と仕事を両立しなければならない人が増えているということでもあります。女性はライフコースの中でさまざまな健康問題に直面するものですが「仕事が忙しくて病院に行けない」と後回しにした結果、いざ受診してみると病気がかなり進行していた、という事態を招きかねません。
 
――「フェムテック」の登場は、求められている女性の健康課題の解決につながりそうですね。
 
取り入れやすい商品やサービスも多いですから、女性自身が自らの心身に向き合いケアしていくきっかけにはなると思います。
しかし、本当に女性に企業で活躍してほしいのならば、女性の健康問題を個人のものにとどめておくのではなく、企業としても積極的にサポートしていくことが大切です。早くから女性の管理職の比率を高めようと努力してきた企業ほど、企業として女性の健康問題に対応しなければならない、と気づき始めています。
 
妊娠・出産に適した時期は限られており、20代後半から30代にかけては、企業ではマネジメント職に昇進するタイミングでもあります。「女性は管理職を希望する人が少ない」と言われますが、その裏には「妊娠・出産との両立が難しそう」とか、最近では「心身に負担のかかる不妊治療をしながら仕事を続けられない」といった声があります。こうした問題を解決しなければ、女性が能力を生かして長く企業で働き続けることはできません。

 
 

婦人科検診の推進や社内制度の見直しを


――企業が女性の健康問題をサポートするにはどうすればいいでしょうか。
 
健康診断の際に、企業が婦人科検診に対して負担や補助をする方法があります。女性ならではの疾患も他の病気と同じく、早期の発見が大切です。私が経営する企業では、入社時の健康診断でも会社負担で婦人科系のドックを付けているほか、毎年の健診でも女性社員は婦人科検診を全員受けています。実はこの10年で3人の社員に子宮や卵巣の初期がんが見つかり、すぐに手術ができて事なきを得たケースもありました。
 
新しい取り組みとしては、先ほど紹介した月経周期を管理するアプリや、基礎体温を寝ている間に計測して記録し妊活に生かしてもらう、といったフェムテック商品の利用料を福利厚生の一環として企業が補助するというケースも出てきています。
 
――女性の体や健康に対する理解も深めたいところです。
 
女性特有の健康問題について、企業が公式に勉強会を行うことも有効です。健康診断の補助なども大切ですが、今後は「社員が働きながら妊娠・出産するのは当たり前」「月経や更年期の体調不良を組織としてサポートする」という考えで、就業規則をはじめとする社内の制度を見直していくことがますます求められます。
 
「フェムテック」市場の拡大は、企業の経営者や男性も、女性の抱える健康課題についてフラットに関わるチャンスを広げたとも言えるのではないでしょうか。誰もが「他人ごと」ではなく、「個人的なもの」でもなく、ビジネスの発展やジェンダー平等、多様性のある職場づくりにとって避けては通れない問題として、女性の健康問題を考えてほしいと思います。

 
 
 

<取材先>
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役 日野 佳恵子さん
1990年創業。全国47万人の女性に向けて日々、アンケートやインタビューを行い、消費の変化やトレンドを掴み、企業に情報を提供している。「女性トレンドレポートHERSTORY REVIEW」発行人。女性のウェルビーイングと価値創造のための異業種勉強会「Well-Woman Project」を開催している。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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