LGBTQに対するハラスメントをなくすために 企業が行うべき対応と防止策とは

レインボーフラッグの写真


労働施策総合推進法の改正により、2020年6月から職場におけるパワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました(中小企業は2022年4月から義務化)。LGBTQ(性的少数者)に関する差別的・侮辱的な言動も当然パワハラに含まれますが、具体的な対策を講じる企業はまだ少ない状況です。LGBTQと職場に対する調査や講演活動、企業や行政の取り組みを支援する認定NPO法人虹色ダイバーシティの村木真紀さんに、LGBTQも働きやすいハラスメントのない職場づくりについてお聞きしました。

 
 

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LGBTQ差別が社員の意欲を低下させる


――「職場にLGBTQの人がいないから、特別なハラスメント対策は必要ない」と考えている企業も多いのでは。
 
「LGBTQ」、つまりL(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)、そしてQ(クエスチョニング/クィア)などの性的マイノリティの人は、日本には人口の3〜8%いると言われています。5%と考えれば20人に1人はいるという割合ですから、従業員やお客様、取引先の中には必ずLGBTQが「いる」と考えるべきですね。
 
「職場にLGBTQがいない」と思えるのは、LGBTQの人が自分のことを決して言い出せない職場環境だという可能性も考えられます。日常的に性的マイノリティに対する差別的な言動があふれている状況かもしれません。「職場にLGBTQがいる」と分かってから対策していては遅すぎるのです。
 
――LGBTQに対する差別的な言動には、どのようなものがあるのでしょうか。
 
「なぜ結婚しないの? 彼女(彼氏)いないの?」と何度も聞く、会社の宴会での女装、「オネエタレント」の真似をして笑いを取る、「化粧をして女らしくしたら」といった発言などです。言った本人に悪気はないかもしれませんが、LGBTQにとっては大変不快に感じる内容です。他にも「あの人は男?女?」といった性別の詮索や、「うちの職場にはLGBTQなんていない」といった決めつけも、存在を否定しているように感じさせます。
 
LGBTQであることは、自分の意志で変えられるものでもありません。そのことによって差別され、「知られたら職場に居られなくなるかも」と不安を抱えながら仕事をしても、全力で仕事に取り組むのは難しくなります。日常的に差別的言動のある職場では、LGBTQの人はもちろん、そうでない社員も勤務意欲が低くなるでしょう。
 
――ハラスメントや差別的言動のある職場は、LGBTQの人に限らず誰もが働きづらさを感じてしまうのですね。
 
「結婚しないの?」「女らしくした方がいい」は、LGBTQでなくても言われたくない言葉ですよね。企業がLGBTQ施策に取り組むことは「組織として一人ひとりを大切にする」というメッセージを発信することでもあります。性別で人を決めつけず、少数派の意見も尊重することで、すべての従業員にとって安心して働ける職場が実現すると思います。

 
 

職場に理解者である「アライ」を増やす取り組みを


――企業がLGBTQに対するハラスメントを防止し、働きやすい職場にするために、具体的に何に取り組むとよいでしょうか。
 
LGBTQを積極的に支援する人のことを「アライ(ally)」といいます。社内に積極的に「アライ」として行動できる人を増やしていくことが大切です。「アライ」になるには(1)知識(2)共感(3)仲間づくり(4)行動への後押しが必要です。
 
(1)知識を得るには、書籍や自治体が発行しているハンドブックを読んで学んだり、ハローワークなどが実施する研修を受けたりするのもよいでしょう。
 
また、LGBTQ当事者を招いて話を聞いたり、社内でLGBTQをテーマにした映画を鑑賞したりすることも(2)LGBTQに対する共感を得る上で有効です。性的マイノリティのシンボルであるレインボー・カラーのグッズを身につける、社内に掲げるのもいいですね。
 
(3)仲間づくりのためには、LGBTQに関するイベント参加や、会社としてイベントに協賛する方法もあります。関心のある社員が集まり、LGBTQについて考える社内サークルを作っている企業もありますね。
 
特に大切なのが、(4)行動への後押しです。社内でのケーススタディやロールプレイング研修をおすすめします。例えば、「取引先の担当者が部下を『いい年になって結婚しないなんて、こっち(手の甲を頬に当てるしぐさ)なの?』とからかっているのを見たとき、あなたならどうしますか?」といったテーマを皆さんで話し合ってみるのはどうでしょうか。
 
――ジェンダーやセクシュアリティについては人によって様々な考え方があり、社内で一律の取り組みを始めることの難しさもあるのではないでしょうか。
 
実は、LGBTQについて興味や関心が薄いのは中小企業、中高年世代、男性という調査結果があります。会社においては、最初にトップがしっかりメッセージを出し、その後に研修や会社の行動指針の見直し、LGBTQに対するハラスメントの相談窓口の設置といった制度を整えていくといいと思います。
 
人の意識を変えることは時間がかかるものです。LGBTQ施策に取り組むと、自分の思い込みに気づいたり、思ってもみない考え方に出合ったりして、心が大きく揺さぶられる経験もします。良かれと思って挑戦した行動が間違っていた、ということも。いきなり100点満点を目指そうとするのではなく、少しずつでもできることから始めて、間違ってしまったらその都度振り返って改善していくことが大切です。
 
LGBTQ施策に取り組むことは、LGBTQを特別扱いすることではありません。差別やハラスメントをなくし、安心して一人ひとりが力を発揮できる職場をつくるために必要な変化の一つです。女性活躍や障害者の問題など、ぜひほかのダイバーシティ課題と一緒に考える視点を持って取り組んでほしいです。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年5月時点のものです。
 
<取材先>
認定NPO法人虹色ダイバーシティ 代表 村木真紀さん
京都大学総合人間学部卒業。社会保険労務士。日系大手製造業、外資系コンサルティング会社等を経て現職。当事者としての実感とコンサルタントの経験を活かして、LGBTに関する調査研究、社会教育活動を行う。自著『虹色チェンジメーカー LGBTQ視点が職場と社会を変える』、共著『職場のLGBT読本』、『トランスジェンダーと職場環境ハンドブック』。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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