「女性活躍」の時代だからこそ、経営層も知っておきたい 「フェムテック」とは

自宅でスマホを見る女性のイメージ


最近、ニュースなどでよく取り上げられるようになった言葉に「フェムテック」があります。女性の健康課題を解決する新しい商品やサービスを指す言葉ですが、その背景にある大きな社会状況の変化は、中小企業の人事や労務管理にとって見逃せませ ん。女性視点マーケティング®事業を手がける株式会社ハー・ストーリィ代表取締役の日野佳恵子さんにお話をうかがいました。

 
 

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女性の健康課題をテクノロジーで解決


――「フェムテック」とは、どのようなものでしょうか?
 
ひと言で言うならば「女性の健康課題を技術力で解決する商品やサービス」のことです。女性(female)と技術(technology)を合わせた造語で、デンマークの女性起業家であるイダ・ティン氏が自ら開発した月経周期予測アプリへの投資を呼びかける際に使い始めたと言われています。
 
2018年にアメリカの調査会社が「フェムテック市場は2025年には500億ドル規模(約5兆5000億円)となる」と発表したことで、女性ならではの健康課題に注目した商品・サービスへの投資が爆発的に増加しました。50歳以上の女性向けの骨粗しょう症診断テストや、婦人科系のがんの検査や診断をサポートするサービスなども成長が見込めるとして話題になりました。吸水機能のあるショーツや、スマートフォンアプリと連動し、着用して眠るだけで基礎体温を測り自動的に記録できる下着など、フェムテック関連のサービスへの日本の企業の参入も相次いでいます。

 
 

表に出づらい女性の健康問題


――女性の健康問題に注目が集まるようになったのはなぜでしょうか。
 
ひとつには、ビジネスで活躍する女性が増え、特にIT関連の企業で女性の経営者や管理職が増えたことが背景としてあると思います。月経や妊娠・出産、あるいは不妊治療などにまつわる問題を抱えながら、リーダーとしての職責を全うし続けることの困難さを発信する人が増えました。日本でもYouTubeなどで月経や更年期障害について発言する女性のアイドルやタレントが増えています。
 
影響力のある女性が声を上げ始めたことで、今までは体にまつわる状況が辛くても我慢していた女性たちも「自分だけの悩みではなかった」と気づきました。2017年に世界的な運動となった「#Metoo」のように、SNSなどで、従来は表に出てこなかった女性たちの健康や生活にまつわる不満や悩みが明らかになってきました。こうしたニーズと、ITやAIなど技術の進化が組み合わさり、フェムテックが注目されるようになったと考えています。
 
――「女性の健康問題」自体は昔から存在していたのに、明るみに出ることが少なかったのはなぜでしょうか。
 
特に日本では、月経痛やPMS(月経前症候群)、更年期障害に伴う不快な症状などが「多くの女性特有の悩み(不定愁訴)」として認識されにくい状況でした。女性の身体や特有の疾患について、学校でしっかり教わる機会も多くありません。
 
また、月経痛や更年期障害は寝込んでしまうほどつらい人から、苦痛を全く感じない人まで症状の表れ方が千差万別です。それゆえに女性同士でも理解されなかったり、悩みを打ち明けづらかったりする状況が今も残っています。
 
日本では月経痛の際に鎮痛剤を飲んでやり過ごす人が多いですが、海外ではクリニックで低用量ホルモン剤(ピル)を処方してもらうことが当たり前になっています。月経痛の裏には子宮などの病気が潜んでいることも多く、他の疾患と同じく早期発見が大切と言われています。しかし、日本では婦人科の受診を「恥ずかしい」「医者にかかるほどではない」とためらう人も多いでしょう。健康診断でも婦人科系の検査はオプションとなっていることが多く、定期的に検査を受ける人もまだ少ない状況です。

 
 

女性の健康問題は健康経営の重大な課題


――確かに、月経も妊娠・出産も更年期障害も「個人的なこと」とされ、企業や社会がサポートするものというイメージはなかったように思います。
 
一方で、健康経営を積極的に推進する企業で最も関心が高かったのは「女性特有の健康問題対策」であったという経済産業省の調査結果もあります。(経済産業省『健康経営における女性の健康の取り組みについて』平成31年3月より)
 
多くの女性が妊娠・出産をする20代後半から30代にかけては、マネージャーに昇進する時期でもあり、妊娠・出産の時期と重なります。そのため、仕事と出産や子育ての両立を困難に感じてどちらかをあきらめる女性は少なくありません。また、企業にとっても意欲も経験もある社員が出産や妊活のために管理職への昇進を拒んだり、時には退職したりすることは大きな痛手です。
 
――女性特有の身体症状は、日常的な業務にも影響を及ぼしそうです。
 
月経痛や更年期障害のために仕事を休まざるを得なかったり、体調が万全でない状態で出勤しても十分なパフォーマンスが発揮できなかったりすることもあるでしょう。月経に伴う諸症状による労働損失は日本全体で年間4911億円とも言われています。加えて、近年では心身への負担の大きい不妊治療と仕事の両立に悩む人も増えています。(経済産業省 ヘルスケア産業課 平成31年3月「健康経営における女性の健康の取り組みについて」P2より)
 
2015年に「女性活躍推進法」、2018年には「働き方改革関連法」が成立し、企業の中で女性が活躍できる機会が増えてきました。だからこそ、女性の健康や生活に関わる問題が企業の関心を集めるようになったのでしょう。女性が健康問題ゆえにキャリアや子育てをあきらめたり、持っている力を十分に発揮できなかったりする状況を変えていかなければ、真に「女性活躍」や「ジェンダー平等」を達成できないとも言えるのではないでしょうか。

 
 

健診や勉強会の積極的な実施を


――女性特有の健康問題を企業がサポートするには、どんな方法がありますか。
 
多くの企業は、毎年社員に健康診断を受けてもらっていると思いますが、乳がんや子宮頸がんなど女性特有の疾患を調べる検査の費用を会社が負担や補助してはいかがでしょうか。女性社員が自身の健康状態について知り、ケアするきっかけにもなりますし、「会社は女性社員も大切にしてくれている」と実感でき、安心して働けるようにもなるでしょう。
 
――女性に限らず、男性社員に対する働きかけも必要でしょうか。
 
女性はもちろんのこと、男性社員への啓発も重要です。男性の経営者や管理者こそ「自分ごと」として女性社員の健康問題を考えなければ、社員に長く勤めてもらうこともできません。ジェンダー平等への配慮が足りない企業と見なされれば、採用や顧客との関係にも良くない影響をもたらすでしょう。医師などの専門家を招いて、企業として公式に女性の健康に関する講演会や勉強会を行うことが効果的です。
 
「フェムテック」の隆盛は、女性の健康問題が女性だけの問題ではなく、企業や社会が関わって解決すべき/解決していける問題であるという認識に変化してきたということでもあります。「フェムテック」について学び理解を深めることは、企業内の制度を、月経や妊娠・出産、更年期を考慮した設計に変える絶好のチャンスとも考えられるのではないでしょうか。

 
 
 

<取材先>
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役 日野 佳恵子さん
1990年創業。全国47万人の女性に向けて日々、アンケートやインタビューを行い、消費の変化やトレンドを掴み、企業に情報を提供している。「女性トレンドレポートHERSTORY REVIEW」発行人。女性のウェルビーイングと価値創造のための異業種勉強会「Well-Woman Project」を開催している。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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