健康経営優良法人認定制度とは
健康経営優良法人認定制度とは、健康課題に対して優れた取り組みを実践している企業を顕彰する制度のことです。地域の健康課題に即した取り組みや、日本健康会議が進める健康増進の取り組みを見える化することが求められます。
健康を社員個人の問題ではなく、社員に対する企業の責任ととらえ、積極的に経営課題として取り組む考え方で、2017年度から始まりました。
制度の設立背景と目的
健康経営優良法人認定制度が設立された背景には、長時間労働や過労死などの社会問題があります。
それらに対して取り組む企業を社会的に評価する環境を整備することで、健康経営を普及・促進し、社会問題を解決することを目的にしています。
この制度では、大企業や医療法人等を対象とした「大規模法人部門」と、中小規模の企業や医療法人等を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門があります。それぞれ「健康経営優良法人」を認定しています。
さらに、大規模法人部門のうち上位500社は「ホワイト500」、また「健康経営優良法人2021」からは中小規模法人部門のうち上位500社を「ブライト500」と認定しています。
取り組み項目・認定要件
健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)の認定要件は下記となっています。
引用元:「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定要件」経済産業省
認定基準は大きく「経営理念(経営者の自覚)」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」に分類され、必須項目と選択項目によって構成されています。認定条件には、必須のものと、数ある項目のうち、一定以上の項目のクリアが必要なものがあります。
◆認定を受けた企業の取り組み例
実際に「健康経営有料法人」の認定を受けた企業が実践した取り組みには、下記のような事例があります。
- 労働災害の発生をきっかけに、毎月安全大会を実施するようになった。同社以外の協力会社も巻き込み、健康意識を向上させた(管理職又は従業員への教育機会の設定)
- 業務改革ツールを利用し、業務を「見える化」することで、業務負荷の高くなっている従業員を他の従業員が率先して手伝える環境となった(適切な働き方実現に向けた取組み)
- 各事業所の事業内容に合わせ、100通り以上のシフトを制定し、従業員が働きやすい労働環境の改善を図った(適切な働き方実現に向けた取組み)
- 受け入れ制限のある病院から検診車に来てもらい、社内で一斉に健康診断を実施するようにした(定期検診受診率実質100%に向けた取り込み)
- 月に1度、代表と従業員が面談し、業務の話だけではなく親の介護についてなど業務外のことについてもざっくばらんに話をする機会を設けている(コミュニケーションの促進に向けた取組み)
- ラジオ体操を毎日実施するようになり、従業員が顔を合わせて話す機会が増えた。(運動機会の増進に向けた取組み)
中小企業が認定を受けるメリット
中小企業が認定を受けるメリットには、主に下記の点が挙げられます。
- 認定を受けると「健康経営優良法人」ロゴマークが使用可能となり、ウェブサイトや社内、名刺に掲示することできる。各所に「従業員の健康に気遣っている企業である」とアピールすることにつながる
- 従業員の意欲や生産性が向上し、会社全体の業績向上につながる
- 採用において、優良企業のイメージが伝わり、優秀な人材の確保につながる
- 過重労働によるメンタル疾患などが減少し、離職防止につながる
- 金融機関等から企業価値の向上が認められ、融資優遇、保証料の減額や免除などのインセンティブが受けられるケースがある
- 自治体から融資優遇、保証料の減額、奨励金や補助金などのインセンティブが付与されるケースがある
- 取引先の増加やイメージ向上につながる
健康経営優良法人認定制度は比較的新しい制度ですが、2020年には大規模法人部門では1,481法人、中小規模法人部門では4,723法人が認定されました。
前年の2019年からは大規模法人で約1.8倍、中小規模法人部門では約1.9倍の認定数となり、年々認定を受ける法人が増えています。認知度も高まりつつあり、今後さらに注目される制度といえるでしょう。
※記事内で取り上げた法令は2021年2月時点のものです。
参考:
健康経営優良法人認定制度(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
<取材先>
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也さん
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト