東日本大震災の復興やインバウンドで増える現場 建設業界はなぜ人手不足が続くのか


近年さまざまな業界において、人手不足に悩んでいる企業が増えています。なかでも建設業界は、特に若い人材が足りない状況が続いているようです。いったいなぜ、働き手が集まらないのでしょうか。
 
建設業界が抱える課題と今後の展望、建設業に向いている人材について、株式会社船井総合研究所 HR支援本部のコンサルタント・宮花宙希さんと植松拓海さんが解説します。

 
 

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3K、高齢化、団塊の世代の退職 etc. 建設業における人材不足の実態


――単刀直入にお伺いします。なぜ建設業界では人手不足が続いているのでしょうか?

 
建設現場では工事の受注が増えており、職人さんも施工管理する人も足りていません。新しい人をどんどん採用していかないと、現場が回らない状態になっています。一方で、建設業界に入ってくる新卒者は年々減少しています。建築系の学部・学科を卒業したにもかかわらず建設業界に就職しない学生も少なくありません。
 
採用したい会社は増えているのに、就職希望者は減っている。そのギャップがますます大きくなっているのが最近の状況と言えます。
 
――建設の需要は、具体的にどのような分野で伸びているのでしょうか?
 
東日本大震災の復興に関連する需要や、高度経済成長期に造られた建築物を修復する工事、インバウンドを狙った新規のホテル建設などが挙げられます。ここ数年で見ると、観光客が見込める場所でホテルの建設工事が増えていますね。地方だと、大きな工場の建設や公共事業での建設需要もあります。
 
――需要が高まる中、建設業界を希望する若者が減っている理由は?
 
よく言われている3K(きつい、きたない、危険)のイメージが大きく影響していますね。肉体的な辛さや現場の大変さなど、悪いイメージによって若者が離れている傾向はあると思います。
 
したがって、人材を募集する際は、「うちは休みをしっかりとれますよ」と提示することで安心感を与えたり、働きやすさをPRしたりと、様々な工夫をしなければなりません。
 
――若者が集まらない一方で、建設業で働く人の高齢化も問題になっているようです。
 
それはありますね。40~50歳ぐらいの方であれば、ある程度スキルが蓄積されているので、その年齢から別の仕事に移ることなく、続けて働いているケースが多いでしょう。そこへ、新卒の人材がなかなか入ってこない状況が重なり、平均年齢が上がっているのは間違いありません。また、若手の離職率の高さも問題となっています。
 
今度は団塊の世代がどんどん退職していく危機感も増しています。本当は年齢構成比をバランスよくしたいと思いながらも、20~30代前半の人材を採用できずに悩んでいる経営者が多いようです。

 
 

建設業は「資格」が重要視される職種


――若手人材を増やさなければいけない課題に対し、企業はどのような対策を取っているのでしょうか?
 
施工管理や技術職系の求人倍率の上昇に伴い、新規募集の給料を上げています。特に大手のゼネコンでは工事の案件が多いので、中には月給80万円くらいの条件を提示して募集する会社も出てきています。
 
大学の建築学部を卒業して設計・建設業界で働きたいと考えている新卒だと、やはり第1志望で大手企業を選ぶ人が多いでしょう。そうすると、中小の建設会社には人が集まりません。
 
また、若者に人気の業界も年々変化しています。理系の学生はITやシステム関係を志望する傾向が強くなっており、建設業界を志望する若者自体が減っているのかもしれません。
 
――建設業の中には、建築物の設計や工事監理を行う「建築士の仕事」と、職人さんのようないわゆる「現場の仕事」があるかと思います。どちらも人手が足りていないのでしょうか?
 
どちらも不足しています。前提として、建設業界は資格を求められる職種が非常に多いのです。設計であれば一級建築士、二級建築士の資格が必要ですし、現場監督であれば施工管理技士の資格が必須になります。若手の人材で考えると、すでに資格を持っている人自体が少ないでしょう。そのため、採用後に資格を取ってもらうための支援制度を整備することになります。また、有資格者には手当を支払うなど、待遇面も考慮しなければなりません。
 
ただ設計については、他の設計事務所に外注しているケースもあります。したがって、人手不足のメインは現場監督さんや職人さんと考えてよいでしょう。

建設業のイメージ
 
 

設計、現場管理、職人……建設業界で求められる素養とは


――今後、建設業界はどうなっていくのでしょうか? 採用に関する課題と将来展望についてご意見をお聞かせください。
 
建設会社にとっては、「いかにして採用難を脱出するか」「どうやって定着率を上げるのか」、この2点が大きな課題です。採用した人が何年か続けて勤務してくれれば、ある程度のスキルが蓄積されていくはずですが、会社に定着してくれないと意味がありません。
 
ここ数年でいえば、工事の依頼が来ているにもかかわらず、「人がいないため請け負えない」と受注をストップしている建設会社が少なくありません。
 
――オリンピックや新型コロナウイルスの影響についてはいかがでしょうか?
 
オリンピック後の建設需要は、やや冷え込むだろうと思います。ただ、インバウンドの需要をちゃんと取り込んで継続できれば、建設の仕事は発生するでしょう。外国人観光客が多い京都では、ホテルがたくさん建っていますから。
 
一方で、新型コロナウイルスの影響はまだ見えないところが大きいですね。もし観光客の減少が続けば、宿泊業が厳しい状況になるかもしれません。ホテルの建設ラッシュが止まれば、建設会社に対する受注も減っていくことが考えられます。そうなると、採用活動にも影響が出てくるでしょう。
 
――観光客や宿泊客の減少が、建設業界にも影響を及ぼす可能性があるということですね。では、どんな人材が建設業界に向いているのでしょうか?
 
建設会社の採用は、建築に対する関心や知識を持っている人に限られます。新卒採用であれば、おもに建築関連の学部や学科を履修した学生に絞られるでしょう。その上で、入社後に知識や技術的ノウハウを習得する必要があります。
 
たとえば設計の仕事であれば、設計ソフトを使って図面を書く機会が多いため、ツールを使いこなすスキルを身につけなければなりません。そういう意味での「勤勉さ」は必要だと思います。現場管理の仕事は、職人さんへの指示出しやスケジュール調整、安全管理など、プロデューサー的な資質が求められるでしょう。また施工管理技士の資格取得とともに、建築の網羅的な知識が必要となります。現場の職人さんについては、体力面だけでなく、指示されたことをきちんと真面目にこなす従順さ、柔軟さを持っている人が重宝されるでしょう。
 
ただし、大手のゼネコンと中小の建設会社では、請け負う業務内容が変わってきます。業界の構造として子請け、孫請けまで使ってアウトソーシングするケースが多いので、どういう人が合うのかは企業の立ち位置によって異なり、一概には言えません。したがって、採用する側は業務内容とともに、求人の際にどういう人材を求めているのかを細かく明示する必要があります。

 
 
 

※この記事は2020年3月16日に取材したものです。
 
<取材先>
株式会社船井総合研究所 HR支援本部
HRD支援部 シニア経営コンサルタント
宮花宙希さん、植松拓海さん
 
船井総合研究所/人材開発コンサルティング ホームページ

https://hrd.funaisoken.co.jp/ 

TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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