働き方改革とは? 今さら聞けない基本のまとめ


世の中に広く浸透し、誰もが知る言葉となった「働き方改革」ですが、そもそも「働き方改革」とは何か、どんな狙いがあって、企業として何に取り組んでいけばいいのか、よく理解していないという人事労務担当者もいるのではないでしょうか。そこで、「働き方改革」の今さら聞けない基礎知識について社会保険労務士の歌代将也さんに伺いました。

 
 

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そもそも「働き方改革」とは?


政府が掲げる「働き方改革」とは、安倍晋三元首相が推進した「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組みの1つです。
 
これを実現するために、2018年6月に通常国会で「働き方改革関連法」(正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)が成立、2019年4月から順次施行されています。
 
なお「働き方改革関連法」とは、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働派遣法、労働時間等設定改善法、じん肺法、及び雇用対策法の8つの労働法を改正する法律の総称です。

 
 

「働き方改革」の3つの狙いとは


このように労働法の改正が一気に行われるのは、実に70年ぶりのことです。では、この大改革の狙いとはいったい何でしょうか。大きくは、次の3つが挙げられます。
 
1.長時間労働の是正
 
「働き方改革関連法」が成立する以前から、長時間労働の改善に努める企業もありましたが、ほとんどの企業では取り組みの優先順位が低く、日本企業全体ではあまり進展していませんでした。世界的にも、日本の時間当たり労働生産性は低く、OECD加盟国37カ国中21位(2020年実績)にとどまっており、G7(主要7カ国)の中では過去50年以上、日本は最下位のままです。
 
さらに、2015年に広告代理店の新入社員が長時間労働の末に自殺する痛ましい事件が起きたことにより、世間では過重労働を抑制する機運が高まりました。それを受け、政府は「長時間労働の是正」に本格的に取り組むようになりました。
 
2.多様で柔軟な働き方の実現
 
今後、日本は少子高齢化が進行し、労働力の確保が深刻な課題になることが予想されています。総務省の発表によると、日本の生産年齢人口(15歳〜64歳)は1995年には8716万人でしたが、そこから減少に転じています。2030年には6773万人(2010年の生産性人口から17.1%減)、2060年には4418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれています。
 
そこで、女性や高齢者の労働参加を促進する環境を整えたり、労働時間ではなく成果に応じて評価や収入が得られる働き方を拡充したりして、多様な働き方を選択できる制度改革を行いました。
 
3.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
 
従来の日本企業では、正社員はアルバイトや派遣社員などの「非正規雇用労働者」よりも優遇されていることが当たり前とされてきました。給与水準や手当の支給、研修などの教育機会や福利厚生の有無などで、正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者では格差が生じていました。
 
もちろん、業務内容や責任範囲などが違えば、それに応じた賃金などが支払われるべきです。しかし実際は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には、合理的な理由なく賃金や待遇に差がある場合も少なくありません。そこで、正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(契約社員、パート・アルバイト、派遣社員など)の賃金・待遇格差を解消するために「同一労働・同一賃金」という制度が導入されました。

 
 

押さえておくべき「働き方改革関連法」による改正ポイント


「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」の3つの狙いを実現するために、働き方改革関連法によって様々な法改正が施行されました。そのなかでも、企業の人事労務担当者として、必ず押さえておくべき法律を説明します。
 
まず「長時間労働の是正」に関する法改正は次の3つです。

 
 

◆時間外労働(残業)の上限規制


改正前の労働基準法では、残業時間の上限が定められておらず、行政指導によって上限が1カ月45時間、年360時間と定められていました。しかも、「特別条項」(特別な事情がある場合)を設けた場合、特定月の年6カ月については残業時間に法的上限がなく、事実上制限なく残業をさせることが可能になっていました。
 
そこで、残業時間の上限を原則「月45時間、年360時間」とすることを法律で定め、臨時的な特別な事情がある場合でも、年間6カ月を限度に「単月100時間未満(休日労働を含む)、年720時間、複数月平均80時間(休日労働含む)」の上限を設定しました。この法改正は大企業では2019年4月から、中小企業でも2020年4月から適用されています。

 
 

◆中小企業における月60時間超の時間外労働(残業)に対する割増率アップ


労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて従業員を働かせる場合、企業は残業に対して25%以上の割増賃金を支払うことが義務づけられています。また、月60時間超の残業に対しては50%以上の割増賃金の支払い義務があり、大企業には2010年4月から適用されています。中小企業には適用が猶予されていましたが、2023年4月から適用されることになります。

 
 

◆年5日の年次有給休暇の取得の義務化


労働基準法の改正により、企業は年間10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、基準日(年次有給休暇を付与した日)から1年以内に年間5日以上の年次有給休暇を取得させなければなりません。従業員自らの請求等によって取得した年次有給休暇が年間5日未満の場合には、企業が取得時季を指定して、年次有給休暇を取得させる必要があります。この法改正は、2019年4月からすべての企業に適用されています。
 
「多様で柔軟な働き方の実現」に関する法改正は、次の2つです。

 
 

◆フレックスタイム制の見直し


フレックスタイム制は、労使協定によって定められた清算期間における総労働時間の範囲内で、従業員が始業・終業時刻、1日の労働時間を自ら決められる制度のことです。改正前は清算期間の上限は「1カ月」までとされており、月をまたいだ調整ができませんでした。それが労働基準法の改正により、2019年4月から「3カ月」まで延長され、柔軟な働き方が可能になりました。

 
 

◆高度プロフェッショナル制度の創設


職務の範囲が明確で、かつ年収が1075万円以上を有する従業員が、高度な専門的知識を求められる業務に従事する場合に、労働時間、時間外労働、休日、深夜の割増賃金などの法規定の適用を除外する働き方が可能になります。その際、企業は年間休日104日を確実に取得させるなどの健康確保措置を講じること、本人の同意を得ることなどの要件を満たす必要があります。この制度は2019年4月から導入されています。
 
最後は、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」に関する法改正です。

 
 

◆同一労働同一賃金の創設


企業は従業員の雇用形態にかかわらず、同じ職場で同じ職務内容(業務内容や責任の程度も含む)ならば、支給される賃金や手当だけでなく福利厚生や研修を含む待遇を均等・均衡にしなければならないという制度です。
 
つまり、同一企業において、正当な理由なく正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(契約社員や派遣スタッフ、パートタイム・アルバイトスタッフなど)との間に不合理な待遇差や差別的な取扱いがあれば、企業は基本給や賞与、手当、教育研修などを含め、それを解消することが求められます。そして待遇差があれば、企業はその内容と理由を従業員の求めに応じて説明する義務が発生します。この制度は、2020年4月(中小企業は2021年4月)から適用されています。

 
 

まずは企業のトップが「働き方改革」に取り組む目的を全社に共有


「働き方改革」は、長時間労働の解消や公正な待遇の確保など、従業員にとってはメリットが多く、受け入れられやすいものと思います。しかし、法律に対応して会社の制度を変えただけでは、人件費の増加や業務の停滞を招く恐れもあります。
 
また、「残業を減らせ」「休みを取れ」と言われても、業務量が変わらなければ、不満を抱く従業員も出るかもしれません。まずは企業のトップが制度改訂に合わせて「働き方改革」に取り組む目的を従業員に説明し、いかにして効率的に業務を行うのか、全社を挙げて仕事の進め方を見直すなど、従業員が納得できるやり方で取り組むことが大切です。


参考:
総務省「第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html

 
 
 

監修:うたしろFP社労士事務所 社労保険労務士/1級FP技能士CFP® 歌代将也
TEXT:西谷忠和
EDITING:Indeed Japan + ノオト


 
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