職場で活かせる対立解消(コンフリクトマネジメント)のスタイル5選
更新:2022年7月22日
対立解消スキルは、他者と接する機会の多い人にとって重要なスキルです。職場によって、従業員の性格特性や背景、勤務スタイルはさまざまです。オフィスにおいて個人的または仕事上の問題で複数の人の意見が分かれると、職場における対立が生まれます。
この記事では、5つの対立解消(コンフリクトマネジメント)のスタイルと、職場での対立にうまく対処するために身に付けるべきスキルをご紹介します。
対立解消(コンフリクトマネジメント)のスタイルとは
対立解消(コンフリクトマネジメント)のスタイルとは、個人が意見の対立に取り組み、対処して解決する方法のことです。意見の対立への対処方法は人によって異なりますが、対立解消のスタイルには、回避や自己主張、交渉などの独自の特性があります。また、対立にどう対処するかは、個人の性格特性のうちでも重要で、影響力のある部分です。
それぞれの対立解消のスタイルによって、職場における意見の対立に対処する際の成功の度合いが異なります。たとえば、プロのサッカーコーチとして実践する可能性がある対立解消スタイルは、小児科の看護師として働く人に向いているとは限りません。
自分の性格特性に合った対立解消のスタイルや、それを職場で実践する方法を理解することで、職場でのやり取りやチームの生産性に大きな影響を与えることができます。
主な5つの対立解消のスタイル
コミュニケーションの専門家によると、対立解消には主に5つのスタイルがあります。1つか2つのスタイルを実践するのが一般的ですが、実践することで得られるメリットはスタイルごとに異なります。次に、5つのスタイルの概要と、各スタイルが適している状況、そして各スタイルの例をご紹介します。
回避スタイル
強制スタイル
受容スタイル
妥協スタイル
協調スタイル
1. 回避スタイル
意見の衝突や対立を避けるために、上司によっては予定を後回しにしたり、決断を避ける場合があります。また、物理的に当事者同士を引き離したり、上司がその場から完全に離れることもあります。
ただ、意図的に予定を後回しにすることで、未解決の対立が従業員の恨みや不満につながることも少なくありません。また、場合によっては、双方の当事者が自らの態度や見方を再調整する時間を設けることで、対立が自ずと解決することもあります。
回避スタイルを実践すべき状況
仕事の進め方について決めかねている場合
すぐに割り当てられるリソースがない場合
当事者間で緊張が高まっている場合
チームの生産性に支障をきたしている場合
例:
新しい広告キャンペーンを実施するのにふさわしいプランに関して、城島さんと青木さんは意見が対立しています。2人は妥協点を探りましたが、意見の食い違いから徐々に怒りが募り、周囲の人の気が散ってしまいます。
上司は、このキャンペーンを後回しにして、残りの時間は他のプロジェクトに取り組むよう2人に指示します。プロジェクトを中断することで、城島さんと青木さんは自分たちだけで対立を解消する時間を設けることができました。翌朝、2人はこれまでよりも前向きに協力的な態度で、キャンペーンに取り組むことができました。
2. 強制スタイル
強制スタイルの目標はできるだけ早く対立を解消することであるため、このスタイルでは対立に直接対処します。強制スタイルでは、早く結果を出せる可能性があるものの、チームの士気や生産性に悪影響を及ぼす可能性もあります。
妥協せずに他人と争ってばかりいると、同僚からの有益な意見が妨げられ、職場の人間関係を損なうことにもつながります。
強制スタイルを実践すべき状況
別の対立解消スタイルがうまくいかない場合
一定期間経過しても前向きな変化が起きない場合
対立する当事者たちからの反発を感じた場合
例:
小山さんはWavewood社に16年間勤務しています。彼は仕事ぶりも素晴らしく、上司に意見を求めることはほとんどありません。木村さんは最近入社したばかりの新入社員で、幅広いトレーニングが必要です。
小山さんが木村さんにあるプロセスについて説明している最中、木村さんは別の方法を提案します。小山さんは木村さんのアイデアを検討することも、現在の方法の論理的根拠について説明することもせず、突然会話を打ち切り、自分の指示どおりに進めるように強制します。厳密に言えば小山さんは間違っていませんが、木村さんは自分の意見が軽視され、無視されたと感じています。
3. 受容スタイル
受容スタイルは強制スタイルとは正反対で、相手に譲歩することで対立を解消するスタイルです。個性が強い人や、他人の神経を逆撫でする性格の人と接するときは、受容スタイルや受容的な態度による対立解消が必要になることがあります。
特に相手が年上だったり、自分より経験が豊富な場合は、相手の意見や考え方を認め、受け入れることがチームワークにおける重要な要素です。ただ、相手に合わせることで、自分やチームにとって最も得策で、最優先されるべき利益が損なわれる可能性があると理解することも、非常に大切です。
受容スタイルを実践すべき状況
解決に至らない場合
同僚が自分よりも対立を心配している場合
自分が誤解している場合や、同僚の方が経験が豊富な場合
対立によって生産性に支障をきたしている場合
例:
後藤さんは、地元のフィットネスセンターでの仕事を気に入っています。彼女は楽しく働いており、1人を除いて同僚とも仲良く過ごしています。増本さんは個性が強く、否定されるのを嫌います。
増本さんは、後藤さんの親しみやすい性格を利用して、強引にシフトを交換しようとします。後藤さんは増本さんの行為を快く思っていませんが、職場にストレス要因を増やしたくないとも考えています。後藤さんは、日々を平穏に過ごすために、増本さんとシフトを交換することを受け入れます。
4. 妥協スタイル
妥協スタイルは、双方に不利な方法と呼ばれることもあります。妥協スタイルで対立に対処する場合は、互いに大きな犠牲が伴うことになります。つまり、どちらも自分の望む結果につなげることはできません。
この場合、双方が1つ以上の小さな問題について妥協してから、大きな問題で合意していくのが理想的です。ただ、この方法では、短期的に生産性を高めることはできても、根本的な問題を完全に解消できるわけではありません。
妥協スタイルを実践すべき状況
解決が一時的だとしても、早急に解決したい場合
どちらも妥協しない場合
対立に時間を取られて生産性が低下する場合
どちらも納得する解決策がない場合
チームの連携を強化したい場合
例:
江崎さんと佐川さんのペットショップ事業の利益は、この半年で大きく伸びました。増えた貯蓄額の使い道について、2人の意見は対立しています。江崎さんはペットショップの在庫を20%、佐川さんは地域広告の予算を15%増やしたいと考えています。
数日間にわたる議論の末、佐川さんは互いの予算を10%ずつ増やすことを提案します。この提案には両者とも特に満足していませんが、対立の早期解消に向けて、妥協する道を選択します。
5. 協調スタイル
妥協スタイルが双方に不利な方法であるのに対し、協調スタイルは双方に有利な結果につながります。当事者全員が心から納得できる解決策を見出そうとするのが、この協調スタイルです。
協調スタイルを実践する場合は、対立に関与している双方の当事者の話を聞いて、コミュニケーションを図ることが求められます。
そうして時間をかけて双方の問題を理解した上で、当事者が共に解決策を交渉するよう促す必要があります。協調スタイルを実践するには時間や労力がかかりますが、長期的には最も満足のいく結果が得られる可能性が高くなります。
協調スタイルは、仕事上の関係をうまく築き、維持する場合に大きなメリットがあります。
協調スタイルを実践すべき状況
解決策によって複数人に影響を及ぼす場合
重要な人間関係に関わる場合
当事者全員の利益を考慮する必要がある場合
例:
矢島さんはバレエスタジオのオーナーであり、親友の本田さんが経営を担当しています。矢島さんと本田さんは通常、ビジネスに関するほぼすべての意思決定について意見が一致していますが、本田さんは新任の講師として雇用予定の候補者について、矢島さんと意見が対立しています。
矢島さんには、オーナーとして本田さんの意見を却下する権限がありますが、本田さんと直接、互いに納得できる解決策を話し合うことを選択しました。数週間かけて交渉を重ね、率直なコミュニケーションを行った結果、試用期間として2人の候補者を雇用することにしました。
対立解消スキル
実際には、主な5つの対立解消スタイルから1つを選ぶだけでは十分ではありません。また、対立解消スキルは高い方が役に立ちます。職場での対立をうまく解消できるようになるためのスキルを、いくつかご紹介します。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは、自分が相手に伝えるメッセージとその伝え方を理解し、調整することです。コミュニケーション能力を活用して、状況を悪化させるのではなく、打開することができます。言葉遣いや話し方、聞き手としての気配りによって、対立を効果的に解消することができます。
コミュニケーション能力には、非言語(ノンバーバル)コミュニケーションも含まれます。姿勢や身振り手振り、顔の表情も、相手に与える印象に影響します。身振り手振りによって、誠実さや思いやり、有能さを示すことで、相手は対立解決に向けた取り組みに協力してくれるようになります。
交渉力
対立解消の最も重要な要素に、交渉の仕方を把握することがあります。交渉では、相手に言いたいことを伝え、相手の話に耳を傾けるほか、対立する当事者間の妥協点を見出すことが必要になります。
話し合いによって互いに納得できる解決策を見つけるためには、双方があらゆる視点を考慮しなければなりません。生産性の高い交渉を進めるために、コミュニケーションを活発にし、追加情報を調べ、客観的な第三者の立ち合いを求めることが必要とされる場合もあります。
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