どの業界で何が起きている?4つの「2023年問題」
更新:2023年6月7日

法律の改正、既存サービスの終了や新たなサービスの開始、人口動態の変化など、あらかじめ訪れることがわかっている何らかの「節目」によって、その年に発生し得る課題は、しばしば「◯◯年問題」と呼ばれます。
世界中に影響する課題もあれば、一国内の一部業界の課題を指すこともあり、同じ年に複数の「◯◯年問題」が指摘されるケースも珍しくありません。
2023年は、どんな課題が予測されていたのでしょうか。本記事では、国内での発生が見込まれた4つの「2023年問題」を取り上げます。
中小企業の「2023年問題」
長時間の残業に対し、手当のさらなる割増が必要に
2023年4月から、従業員が月60時間超の残業をおこなった場合、中小企業が従業員に支払う割増賃金率が、25%以上から50%以上に引き上げられました。
このルールは2010年4月の労働基準法の改正により生まれたもので、社会全体で長時間労働を減らす目的があります。ただし、中小企業にとっては経営面への影響が大きいことから、この13年間、大企業にのみ適用されてきました。
2023年3月末で猶予期間が終わり、4月から全企業に適用されました。割増賃金を支払わないと、会社や経営者、または責任者には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
物流業界は「2024年問題」とのダブルパンチ
月60時間超の残業が発生すると、より高い人件費を払わなくてはならないため、適用猶予期間中に多くの中小企業で、残業を減らす対策がとられてきたと考えられます。
残業時間管理の厳格化、残業禁止ルールの徹底、業務の効率化や外注化、社員やパートの増員などが代表的です。いざ4月を迎え、効果が見られない場合に、さらなる対策を講じる企業も出てくるでしょう。
なお物流業界では、ドライバー職の残業時間に上限が設けられる「2024年問題」への対応に頭を悩ませる企業が多数あると言われます。中小の物流業者にとっては、2年連続で影響の大きなルール変更があることになります。
不動産業界の「2023年問題」1
世帯数が減少に転じ、住宅業者に打撃
日本の人口は既に減少傾向にありますが、世帯数はこれまで、わずかながら上昇傾向にありました。核家族世帯や単身世帯が増えていたためです。しかし2023年をピークに、今後は世帯数も減少過程に入っていくと予測されています。
基本的に住宅の需要は、世帯数が増えるほど高まります。世帯数が減れば、これまでほどの住宅数は不要となり、土地代や賃貸料の下落、地域に悪影響を与えると言われる「空き家問題」などの発生が懸念されます。
2023年をピークとする世帯数の減少は、あくまで日本全体の傾向を予測したものなので、一部の都市部など、今後も世帯数の増加が見込まれている地域もあります。
ただし、減少が確実視されている地域における、住宅の売り手、貸し手にとっては、大きな課題だと言えます。
不動産業界の「2023年問題」2
2023年は、大規模ビルの完成ラッシュ
不動産業界にはもう1つ、「2023年問題」と言われる課題があります。都心部で予想されている、オフィスの空室の増加です。
2023年は、数年かけて計画、建築していた大規模なオフィスビルが次々完成を迎える年に当たります。
地上64階建ての「麻布台ヒルズ」、地上49階建ての「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」、地上42階建ての「東京三田再開発プロジェクト(仮称)」の大規模オフィスタワーをはじめ超高層ビルも多く、都心部のオフィス面積が急拡大します。
コロナ禍によるオフィス離れで貸し手は苦戦
オフィス面積が増えても、借り手の需要があれば問題ないのですが、建設が進んでいる間に新型コロナウイルス感染症が拡大しました。
リモートワークが普及し、オフィスの縮小や撤退をおこなう企業が多数現れた結果、2022年時点ですでにオフィスは供給過多になっていたとする見方もあります。2023年以降もオフィスの賃貸需要が高まらなければ、貸し手であるデベロッパーなどの業者にとっては痛手です。
一方、借り手にとっては有利な状況となります。過去には難しかった場所への移転や出店を実現できるかもしれません。
大学医学部の「2023年問題」
日本の医学部卒業者がアメリカで働けなくなる?
「2023年以降、アメリカでの臨床研修を希望する人は、国際基準で認められた医学教育カリキュラムを受けなければならない」というルールに、日本の大学の医学部が対応を迫られた問題です。
このルールは、ECFMG(アメリカ、カナダ以外の医療人が、アメリカで医師になるために受ける臨床研修の受講資格を認証する機関)が2010年に発表しました。
日本の医学部卒業生のうち、アメリカで臨床研修を受ける人は一部に過ぎませんが、日本の医学部のカリキュラムも国際基準に適合するものにすべきだとの論調が高まり、全医学部が対応を目指すことになりました。
2024年には全大学が認証を獲得する見込み
2015年にJACME(日本医学教育評価機構)が発足し、同機構は2017年に国際基準の評価機関であると認められました。これにより、JACMEが認定した医学部は、国際基準の質を満たしていることになり、卒業生がアメリカで臨床研修を受けられるようになります。
各医学部は順次、JACMEの審査を受けており、コロナ禍による中断はあったものの、2024年には国内のすべての医学部が認証を得られる見込みです。
まとめ
ビジネスパーソンや、特定の業界を目指す就活生であれば、自身が関係する業界の2023年問題はおそらく知っていたでしょう。しかし、ほかの業界の2023年問題は、知らない人も多かったのではないでしょうか。
2023年に限らず、「◯◯年問題」を調べてみると、法改正をはじめとする社会全体の動き、各業界の課題などがわかり、視野が広がります。思いもよらぬ話題が見つかり、自身のビジネスや就職活動に生かせることもあるかもしれません。
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