ドキュメンタリー「シェフのテーブル」に見る 料理人の仕事と女性(後編)
更新:2022年7月9日
Netflixドキュメンタリー「シェフのテーブル」は毎回1人のシェフに焦点を当て、彼らの料理と人生に迫ります。料理人の視点やこだわりを体現した料理はまさに一皿一皿が芸術作品。番組では美しい料理が創られる様子とともに、彼らがシェフとして成功を掴むまでの道のりも明かしていきます。
今回は前編に続き、Netflixドキュメンタリー「シェフのテーブル」のニキ・ナカヤマ氏のエピソードから、女性シェフを取り巻く現状や偏見、課題を考えてみましょう。
店では自分の姿を見せない
自分が女性であるために客からの反応が変わる状況を目の当たりにしたニキ・ナカヤマ氏はある決断をします。決断とは、店で自分の姿を見せないこと。厨房は常に障子で閉ざされ、料理をする彼女の様子は客席からいっさい見えないようになっています。
ニキ・ナカヤマ氏は、料理で思いどおりに自分を表現できるようになった今の生活を心から楽しんでいると話し、その声は明るくも聞こえます。しかし客と自分とを隔てる決断は「どれだけ実績を積み力が認められても、女性への偏見の目からは逃れられない」との、ジェンダーを取り巻く現状への諦めのようにも感じられます。
自分が姿を見せなければ、客は料理だけに集中でき、自分も料理だけに集中できる。彼女が出した答えには見ている側に突きつけてくるものがあります。
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ミシュランの星を持つ女性シェフは全体の1.3%
厚生労働省が2019年に行った調査によると、調理師に占める男女の割合は男性が57%、女性が43%。女性の割合は増加傾向にあり、この数字からは男性中心の印象を強くは受けないかもしれません。
しかし次にミシュランガイド東京2020のデータを見てみると、掲載店464軒のうち女性シェフによる店舗は25軒で約5.3%。星付きの店226軒のうち女性シェフの店舗はたったの3軒で約1.3%。調理師全体の女性の割合は増えていても、いわゆる社会的に高い評価を得る女性シェフは圧倒的に少ない現状を浮き彫りにしています。
なおミシュランの評価で女性シェフの割合が低いのは日本に限らず、ジェンダー格差をなくす取り組みが積極的なフランスでも同じ傾向にあります。またニキ・ナカヤマ氏が先述のような客の反応を受けたのがロサンゼルスだった事実からも、女性の料理人を取り巻く環境に課題を抱える国は日本だけではないとわかります。
女性が料理人として活躍するために
2020年末、SDGsをテーマにした小学生向けの小説「すし屋のすてきな春原さん」が出版されました。ジェンダーを扱った内容で、寿司職人として働く女性、春原さんと彼女の寿司店を訪れる親子を中心に話が展開します。
小説のなかで、春原さんが寿司を握りながらこどもたちとジェンダーの話をする場面があります。女人禁制の慣習に触れながら今日では状況が変わりつつあると彼女は自身の経験を交えながら話します。話しづらいと思われている話題に向き合いこどもたちにしっかりと伝える春原さんの様子は、大人が読んでも刺激を受ける内容です。
小説の春原さんが良い方へと変わりつつあると示すのに対し、ニキ・ナカヤマ氏のエピソードでは胸が痛くなる場面もしばしば。だからこそ彼女が経験してきた困難や突きつけられる問題が鮮やかに浮かび上がります。エピソードが公開された2015年からジェンダーにまつわる価値観は大きく変わりつつあります。今だからこそさらに観る人の心に響き、問題を提起してくれるはずです。
関連記事:ドキュメンタリー「シェフのテーブル」に見る 料理人の仕事と女性(前編)
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