遵守と順守、読み方は同じだが意味や使用場面に違いはあるのか?

著者Indeed キャリアガイド編集部

投稿:2022年10月2日

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近年、さまざまな場面で見聞きする機会が増えてきている「コンプライアンス(compliance)」は、「法令をじゅんしゅする」意味で使われています。

「じゅんしゅ」には「遵守」と「順守」という表記がありますが、意味や使い方などに違いはあるのでしょうか。

本記事では、言葉の意味や使用シーンの違い、類義語、対義語を解説します。

遵守と順守の意味と違い

いずれの言葉も、法律や規則、道徳などに従い、それを守ることの意味で使われ、各種辞典などにも同義語として併記されています。

どちらも意味は基本的には同じ

両者は意味が同じ熟語であり、遵も順も常用漢字であることから、法令遵守と法令順守のどちらを使用しても間違いではありません。基本的には、あくまで両者は表記の違いによるものです。     

漢字から受けるニュアンスに差も

熟語として意味は同じですが、漢字から受けるニュアンスには多少の違いがあります。

遵は行くという意味合いを持つ「しんにょう」に尊と書き、遵守で尊重、尊敬して進む、従うと解釈できます。

一方、順は素直や都合がよいなどの意味を持つため、両者を比較した場合、遵守の方がより厳格な印象を受けやすい傾向にあります。

  • 遵守の用例:コンプライアンスの遵守、決議案の遵守など     

  • 順守の用例:ルールの順守、マナーの順守など

なお、尊守と表記しているケースを見かけることもありますが、これは誤用です。遵のしんにょうがないだけで見た目が似ており、ニュアンス的にも意味が成立しそうなため勘違いしそうですが、使わないよう注意しましょう。

遵守と順守の使い分けは?

同じ意味を持つ言葉に2種類の表記があるのはなぜなのでしょうか。

かつて、日本語の漢字は当用漢字を使用していましたが、常用漢字の制定に伴い、当用漢字は廃止されました。下記の変遷にあたって、2種類の表記が生まれることになったのです。

遵守だけを使っていたが、代用して順守が誕生

日本語には主に下記のような区分があります。

  • 当用漢字

1946年に文部大臣の諮問機関である国語審議会の答申に基づき、政府が告示した「当用漢字表」(1850字)に含まれている漢字。使用頻度の高いものを中心に、公用文やメディアなどで用いる漢字の範囲として構成されましたが、現在は廃止されています*¹。    

  • 常用漢字

1981年に内閣告示第1号「常用漢字表」で発表された漢字使用の目安。2010年、平成22年内閣告示第2号として改定された常用漢字表が告示され、第1号は廃止されました。社会生活で用いる際に効率的で共通性の高い漢字が追加され、合計2136字になりました*²。

もともと、じゅんしゅという言葉には遵守の表記だけが使われていました。ところが、1954年に行われた国語審議会に提出された「当用漢字表審議報告」のなかで、遵の字が当用漢字から削除される候補に挙がったことをきっかけに、新聞などのメディアが代用として順守の表記を使うようになりました。

最終的には削除案は採用されなかったため、遵守と順守の同義語の表記違いが両立するようになったと言われています。

*¹参考:国立国語研究所「新「ことば」シリーズ14「言葉に関する問答集―よくある「ことば」の質問―」 問26」
*²参考:文化庁「常用漢字表(平成22年11月30日内閣告示)」

公用文や契約書などは遵守が慣例

では、2種類の表記の使い分けはどうすればいいのでしょうか。

そもそも遵守が使用されてきた歴史が古いこともあるためか、国や公共団体などの公用文や公文書では遵守の表記が使われています。

また、ビジネスで用いる契約書や規約文などに関しても遵守の表記が定着しており、たとえばコンプライアンスは法令遵守、業務の管理指標として重視されている納期管理も納期遵守率と記されるのが慣例となっています。

新聞などのメディアは順守が中心

新聞や雑誌など多くのメディアでは基本的に順守の表記で統一されています。

日常生活ではどちらの表記でも問題なし

ビジネス以外の場面で使う場合は、どちらの表記でも特に問題はありません。

公的な正式文書では遵守が使われていますが、順守も基本的には意味は同じ言葉なので誤用には当たりません。検索エンジンのヒット件数を見ると遵守の方が圧倒的に多いという結果もあります。

遵守と順守の類義語や対義語は?

遵守と順守には、似たような言葉(類義語)や反対の意味の言葉(対義語)があります。混同しやすい一面もあるので、意味や違いを理解しておきましょう。     

類義語は「厳守」や「遵法」など

類義語には主に次のような言葉があります。

  • 厳守(げんしゅ):命令や約束などを厳しく守ること

  • 遵法(じゅんぽう):法の指示するところを尊重し、決まりを守って行動すること

一文字違いの厳守は、見た目だけではなく意味合いも遵守に近い印象を受けますが、使用方法に違いがあります。

遵守が法律や規則に関するケースで使われるのに対し、厳守は時間厳守など、法律以外にも使える言葉です。遵守と比較すると、厳守にはより強い守る意思を示すニュアンスも込められています。

遵法は文字どおり法律を守る意味を持ち、順法とも表記できます。

対義語は「違反」

法律や規則に従うという意味を持つ言葉の反対語は、違反です。法令や契約などにそむくことを意味する言葉なので、遵守、順守の対義語として思い浮かべやすいのではないでしょうか。

まとめ

社会人になると、熟語の意味や用法について学ぶ機会は意識しないと減ってしまう傾向にあります。基本的には同じ意味を持つ遵守と順守ですが、場面や用途に応じてどちらの表記がより適しているのかが異なるケースがあります。

本記事で紹介したのはほんの一例であり、会社や状況により使い分けのルールが異なってくる可能性もあります。臨機応変に対応することがベターですが、慣習や微妙なニュアンスの違いを頭に入れておくことで、慌てる可能性を下げられるでしょう。

TPOや文書に合わせて使い分けてみてください。

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