正の外部性(外部経済)と負の外部性(外部不経済)とは?
負の外部性による影響を低減するには、企業や消費者として商品やサービスを製造したり消費することによる影響を理解することが重要です。
プラスの影響の場合もあると同時に、外部性は第三者にとって有害な場合もあります。商品の生産や消費に伴う副産物を認識することは、社会や企業の両方に利益をもたらします。
この記事では、第三者や消費者、商品を製造する企業への影響をより深く理解できるように、正の外部性(外部経済)と負の外部性(外部不経済)について説明するとともに、各事例をご紹介します。
外部性とは
外部性は、製品やサービスの生産または消費に直接的に関係のない他の主体(社会など)にコストや利益を発生させることを指します。
経済学者は、コストや利益をすべて投じて外部性に価値を見いだし、この価値をコストや利益とみなします。製品が社会に役立つ場合は正の外部性(外部経済)となり、生産や消費による影響が社会にとって利益よりも害につながる場合は負の外部性(外部不経済)となります。
正の外部性と負の外部性とは
正の外部性とは、ある製品を生産または消費することによって得られる第三者の利益を指します。たとえば、教育は、人々がキャリアや生活のためのスキルを学び、開発することから、学校における正の外部性となります。
これに対し、負の外部性は、生産または消費にかかる第三者のコストを指します。たとえば、公害は、特定の製品の生産と消費の両方から生じる負の外部性です。外部性は多くの場合、環境に起因するため、企業や消費者が責任を持って製品を生み出し、そこから利益を得ることが重要です。
外部性のタイプ
生産と消費の副産物を分類すると、外部性には4つのタイプがあります。各タイプの詳細は次のとおりです。
生産における正の外部性
生産における正の外部性とは、製品やサービスの生産から生じる、社会にとっての利益を指します。
商品を製造する企業は、こうした利益に対する責任を担います。生産における正の外部性には、企業が社会に利益をもたらすようなことをしても、そのサービスに対して追加の支払いや補償を受けられないという重要な特徴があります。
生産における負の外部性
生産における負の外部性とは、第三者の犠牲の上に成り立つコストを指します。企業が製品やサービスを生産することで生じる、社会に対する有害な影響がこれにあたります。
たとえば公害は、公害を発生させる製品の製造や消費に無関係な第三者である環境に害を及ぼすため、生産における負の外部性となります。
消費における正の外部性
消費における正の外部性とは、顧客が製品やサービスを消費することによって社会が受ける利益を指します。企業が製品の販売を試みる際に、正の外部性を宣伝すると効果的です。ある製品を使用することで、自分やそれ以外の人にも役立つと分かれば、購入意欲の向上につながります。
消費における負の外部性
消費における負の外部性とは、ある製品を消費することによって生じる、第三者に害を及ぼす可能性のある結果を指します。
このような結果は、製品やサービスを利用することによって得られる私的な利益を上回ります。たとえば騒音公害は、消費者が芝刈り機や音響システムで引き起こす可能性のある、消費における負の外部性です。
正の外部性の例
ある製品やサービスの生産と消費の副産物として、企業と消費者の両方がプラスの利益を受ける場合、経済学者はこの結果を正の外部性とみなします。外部性が社会や産業にプラスの影響を与える事例をご紹介します。
教育
教育は、人々に個人的な利益と公共的な利益をもたらします。ワークショップや大学、個別指導、トレーニングを提供するモバイルアプリケーションなどの製品やサービスを消費することで、個人は新しいスキルを学び、知識を得ることができます。このため、教育は消費における正の外部性となります。
教育製品を購入した結果、個人の生産性が上がり、成功につながることもよくあります。これは、新しいスキルを身に付けることで、自分のキャリアのためのタスクを実行したり、パーソナルトレーナーをつけて健康を増進するなど、生活の質を改善することにつながるためです。
また、他者が教育製品を使用することで、社会が恩恵を受けることもあります。たとえば、ある人が楽器を演奏できるようになると、本人は娯楽を得ることができます。教育が社会に利益をもたらす例としては、他にも医師や医療スタッフがより効果的に人々を治療できるようになる医療が挙げられます。
環境
企業や消費者が商品やサービスを製造し、購入する際に行う意思決定は、環境に影響を与える外部性です。
たとえば、電気自動車の購入やプラスチック、紙、ガラス製品のリサイクルは、消費者が環境保護に貢献できる行動であり、社会的利益につながります。企業や顧客が責任を持って製品を製造し、使用することで、第三者にはきれいな環境がもたらされます。
テクノロジー
製品の創造が技術革新につながる場合、テクノロジーは生産における正の外部性と言えます。
たとえば、ある企業が製品の生産効率を上げるために、新しい機械を設計することがあります。また、企業が開発した技術を他の企業や消費者と共有する場合も、正の外部性となります。事例としては、ある企業が生産性を高めるためにタスク管理ソフトウェアを開発し、他の企業がその技術を職場に導入する場合が挙げられます。
インターネットも、教育やアクセシビリティ(利用しやすさ)、社会的交流など、多くの正の外部性を持つ製品の良い例です。
研究開発
研究開発チームの仕事は、安全性の確保や健康の促進、教育の奨励など、社会にとっての利益を生み出します。
たとえば、ある病気のワクチンを開発すれば、その製品の製造や消費に関与していない人でも、病気になるのを防ぐことができます。企業の研究開発部門は、人々や環境に利益をもたらす商品を生産するための改善策を生み出しています。
負の外部性の例
ある製品やサービスから得られる社会的利益よりも、メーカーの私的利益が上回る場合、この結果は負の外部性とみなされます。
多くは負の外部性に該当するため、企業や消費者が責任を持って製品を生産し、使用することが重要です。政府は、税金や法律を執行して生産を規制することにより、負の外部性を最小化する役割を担っています。次に、負の外部性の事例をご紹介します。
環境
公害は、商品の生産や消費における最も一般的な外部性です。水への廃棄物の流出や製品の製造時の煙などの汚染は、環境や第三者に悪影響を及ぼします。企業は、法律や政策の施行によって、自社製品に関連する負の外部性を規制し、削減することができます。
社会的行為
消費者が製品を使用する際の社会的行為は、他者に悪影響を及ぼし、結果として負の外部性をもたらすことがあります。
たとえば、公共の場での喫煙は、受動喫煙を受けた他者に害を及ぼします。改善策として、喫煙できる場所を制限することで、たばこによる負の外部性を低減できます。また、道路の合流の際に規則を守らないなどの運転行為によって渋滞が発生することも、その例です。
資源の配分
資源の配分とは、特定の材料をある場所に配分することです。そのため、分散しない場合には、一部の材料が不足することになります。消費者と企業のいずれも、資源を不均衡に使用すると、この負の外部性を引き起こし、他者に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、一部の消費者にとって商品の価格が高すぎる場合、その商品は自然と裕福な消費者に配分されます。
産業界は、競争を通じてこの課題に取り組み、資源の配分の公平性を保つことができます。その理由は、複数の企業が同一業界で事業を行うことで、競争力のある価格設定が実現し、これまでよりも製品を入手しやすくなるためです。
監修
内山貴博(うちやま・たかひろ)
大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。
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