トリプルボトムラインとは|定義と仕組みを解説

著者Indeed キャリアガイド編集部

更新:2022年9月28日 | 投稿:2021年9月8日

更新:2022年9月28日

投稿:2021年9月8日

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金銭的利益を超える目標を設定している企業は、人権や環境にプラスの影響をもたらすための具体的なステップを消費者に示すことができます。トリプルボトムラインは、このような原則を企業の役割に取り入れるための方法です。

本記事では、トリプルボトムラインを定義し、その仕組みや測定方法について説明するとともに、トリプルボトムラインの具体的な効果を示す事例をご紹介します。

トリプルボトムラインとは

トリプルボトムラインとは、企業の社会的側面、環境的側面、経済的側面を結びつけて評価する手法です。この言葉を考案したジョン・エルキントン氏は、トリプルボトムラインの3つの要素として、人、地球、利益を掲げています。

  • 人:この領域のボトムラインでは、サプライチェーンを通じた従業員の公正な労働慣行や、企業が地域社会の人々に与える影響などを重視します。

  • 地球:企業の環境的側面でのボトムラインであり、リサイクル活動や、汚染の軽減、再生可能エネルギーの活用など、サステナビリティ(持続可能性)に向けた企業の取り組み内容を示します。

  • 利益:企業の経済的側面のボトムラインであり、企業の利益や損益を示します。

トリプルボトムラインの仕組み

トリプルボトムラインを重視する企業は、経済面の実績だけでなく、環境の持続性や人権に関する実績にも注目しています。トリプルボトムラインの理論においては、環境面や社会面のコストが結果として政府により税金で賄われる可能性があるため、経済面の実績にのみ焦点を当てている企業はビジネス全体のコスト(フルコスト)を考慮していないとみなされます。

次に、企業がトリプルボトムラインを検討し、改善する方法をご紹介します。

1. 人

企業が最初のボトムラインである人権に重点を置くためには、いくつかの方法があります。

  • 従業員:企業は、柔軟な勤務形態や手厚い医療保険を提供することで、従業員が価値の高い存在であることを示します。

  • 請負業者、ベンダー、サプライヤー:企業は、サプライチェーンのすべての段階で人々が公正に扱われ、報酬が得られるように、生産のあらゆる要素を調査します。

  • 地域社会:企業は、地域の活動に寄付をしたり、従業員に有給ボランティアの機会を提供することで、地域社会にプラスの影響をもたらすことができます。

  • 社会正義:企業は、職場の方針や取り組みの中で社会正義の話題を定期的に取り上げることで、最初のボトムラインを高めることができます。

2. 地球

地球環境の改善に向けた企業の取り組みは、生産工程に携わる人々にもプラスの影響をもたらすことがよくあります。たとえば、生産工程での汚染を抑えることによって、職場環境の安全性が高まります。企業は、次に挙げる領域における取り組みを見直すことで、環境への影響の改善に向けて前に進むことができます。

  • 汚染:汚染の削減に向けて、自社製品のサプライチェーンのすべての段階でカーボンフットプリント(CFP)を削減する方法を模索します。たとえば、輸送方法を見直し、エネルギー効率の高い車両を使用することで大気汚染を抑えることができます。

  • 廃棄物:廃棄物のリサイクル量を増やし、リサイクル製品を購入することで、埋立地に送られる廃棄物の量を減らします。企業によっては、リサイクル素材を自社製品に取り入れることで、セールスポイントになるだけでなく、トリプルボトムラインに向けた取り組みにもなります。

  • エネルギー:再生可能エネルギーを使用したり、再生可能エネルギーを使用しているサプライヤーを選択することで、2番目のボトムラインである社会的評価を高めることができます。たとえば、天然ガスを使用した設備を風力発電の設備に切り替える方法があります。

  • 水:プロセス全体における水の使用量や汚染を削減する方法を模索します。たとえば、企業がTシャツを製造している場合は、水質汚染の原因となる染料の代わりに生分解性の染料を使用します。

3. 利益

トリプルボトムラインの背景には、人や環境に焦点を当てることで企業がその利益を最大限に高められるという理論があります。利益とは、トリプルボトムラインに基づき、企業が上げる収益を測定するだけでなく、企業が地域社会や環境に与える経済的影響を測定するものでもあります。

また、社会や環境に対する意識を高めることで、企業は経済的な利益を得ることにもなります。汚染の低減や再生可能エネルギーの使用に対しては、助成金や政府の補助金を受けることができます。また、倫理的な活動をマーケティングや広告キャンペーンに取り入れることで、売上向上につながる可能性も高まります。

大企業の場合は、ESG(環境、社会、ガバナンス)のスコアを高めることで、サステナブル投資、社会的責任投資、インパクト投資を特徴とする投資信託の対象となることができます。

トリプルボトムラインの測定

お金は数えることができるため、ビジネスの経済面のボトムラインを示すことは比較的簡単ですが、人や環境面の利益を数値化することは、もっと困難な場合があります。企業がトリプルボトムラインを測定するために模索して見出した方法をご紹介します。

サステナビリティ指標

企業によっては、トリプルボトムラインの取り組みによる成果を定量化するために、サステナビリティ指標を作成したり、すでに利用可能な指標を活用しています。たとえば、GRI(Global Reporting Initiative)は、環境と社会の改善に向けた取り組みを示すために、企業が従うべき基準や報告書を提供しています。GRIの指標には、標準的なプロセスであるために企業間の比較を行うことができるというメリットがあります。また、トリプルボトムラインを導入した会計処理のフレームワークを初めて使用する企業にとっても、良い出発点となります。

目標に基づく測定

企業は目標を設定し、それを達成したときに報告することで、環境や社会への取り組みを定量化できます。目標に基づく測定を行う企業にとっては、具体的で測定でき、達成が可能で、関連性があり、期限が決まっている目標(SMART目標)を設定することが重要です。これにより、企業が大きな社会的および環境的責任を果たすために、積極的に取り組んでいることを消費者に理解してもらいやすくなります。

企業がトリプルボトムラインを測定する上で設定できる目標の例をご紹介します。

  • 埋立地に送られる廃棄物の量を年間50%削減する。この目標は具体的であり、決められた期限までにリサイクル量を増加することによって達成できます。

  • 第4四半期末までに、地域の社会正義の取り組みへの資金提供を20%増加させる。この目標は、消費者がその目標の達成を見込んでいる時期や、企業の倫理観の内容を示すものです。

  • 輸送効率の向上により、2030年までにカーボンニュートラルなサプライチェーンに切り替える。目標達成のための戦略や期限を組み込むことで、目標が成し遂げられるようになります。

  • 製品の供給元を四半期ごとに見直し、取引や労働慣行が公正であることを確認する。このような目標を掲げることで、企業が人権に対して継続した取り組みを行っていることを消費者に伝えることができます。

  • 年末までに、100%リサイクル原料の再生可能な配送材に切り替える。このような目標を掲げることで、廃棄物を削減し、消費者にリサイクルを促すのに役立ちます。

  • 第1四半期末までに、職場における男女の平等性を高めるために、出産休暇に加えて育児休暇を提供する。この目標では、企業が地域社会や従業員を大切にしていることを示すことができます。また、社会正義の取り組みを企業方針に取り入れた例でもあります。

関連記事:SMARTゴールとは:目標設定に役立つ活用方法と事例

トリプルボトムラインの例

企業が会計処理にトリプルボトムラインを導入する方法の例をご紹介します。

コーヒー企業の例

あるコーヒー製造企業は、工場で使用する太陽エネルギーに投資したり、四半期ごとに工場が公正な労働慣行に従っているかどうかを調査したりすることで、トリプルボトムラインを会計処理に取り入れています。

この企業のエネルギーコストは高くなるかもしれませんが、環境面のコストは抑えられます。このコーヒー企業は、太陽エネルギーの使用に対する政府の補助金や、社会的および環境的な取り組みを宣伝するマーケティングキャンペーンを利用してこれらの変更を行った後、財務成長の予測を達成しました。

アパレル企業の例

あるアパレル企業がサプライヤーの見直しを行ったところ、原材料の1つを調達していた工場が、労働者に適正な賃金を支払っていないことが分かりました。そこで、直ちにサプライヤーを変更するという目標を設定し、今後はこの問題が再発しないように、工場の定期的な見直しを実施することになりました。

また、各製品の購入時には、環境保護のための慈善団体に5%の寄付を行っています。このアパレル企業の利益は1四半期は停滞しましたが、公正な労働慣行と環境倫理への取り組みを示すことで、その後の四半期では利益を出すことができました。

芝刈りサービスの例

ある芝刈りサービス企業は、最初のボトムラインを達成するために、地元の慈善団体に頻繁に寄付をしたり、従業員のスケジュール設定に柔軟に対応したりしています。また、エネルギー効率の高い芝刈り機を導入し、従来の芝刈り機よりもエネルギーを節約して作業を行っています。

さらにカーボンフットプリント(CRP)を削減するため、このサービス企業は刈り取った芝を堆肥にしています。芝刈り機を新調する際の初期費用は安くありませんが、会社全体の環境コストは低く抑えられます。このサービス企業では、自社が人々や地域環境を大切にしていることを地域社会に示すことで、利益目標を達成しています。

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