物流の2024年問題とは?働き方改革関連法からわかりやすく紹介!

更新:2023年2月28日

トラックが走っている道路の様子の画像

物流は、ものの売買の前提となる生産物を生産者から消費者へ届けるまでに発生する様々な過程を含む仕事を指しますが、商品の多様化やスマートフォンの普及、コロナ対策など生活様式の変化に伴い、物流のユーザーは今後も益々増加していくことが見込まれ、現代の生活に欠かせない仕事の1つです。2024年問題は、物流業界だけでなく、個人の生活にも影響が出る可能性も十分にあります。

「2024年問題」では、物流業界や私たちの生活にどのような影響が考えられるのでしょうか。本記事では、働き方改革関連法策定の背景、2024年問題にまつわる課題や企業の取り組みをわかりやすく紹介します。

働き方改革関連法とは?策定の背景を紹介

働き方改革関連法とは正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」と言います。労働者が、それぞれの状況に合わせて柔軟に働き方を選べる社会の実現を目的にして、2018年に成立しました。

働き方改革関連法により、「年次有給休暇の取得を企業に義務づけ」「時間外労働の上限規制」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」など、働き方を改善するさまざまなルールが施行されています。

この法律が成立した背景には、働く人のニーズの多様化と少子高齢化、長時間労働の是正、公正な待遇の確保などが挙げられます。日本では、生産年齢人口の確保や長時間労働の削減が課題とされ、働き手を増やし労働生産性を高めて効率化を促すには、今まで労働市場から離れていた女性や高齢者などの就労促進に向けて、働きやすい職場環境への改善が欠かせません。

これらを背景に、人々のより良い将来を実現する働き方ができるように各種労働法や制度の見直しが、働きやすい社会の実現に向けて、2019年より順次施行されています。

物流の2024年問題とは?

物流の2024年問題は、2024年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働の上限規制により発生する諸問題です。

以前より物流業界での課題であった、トラックドライバーの長時間労働の改善を目指し、自動車運転業務の年間の時間外労働時間上限が1,176時間から、2024年4月1日以降は960時間になります。また、これまでは時間外労働の給与の割増率が25%だったのに対して、改正後は月60時間を超える分には50%以上に引き上げられます。

しかし、次のような課題が懸念されており、これを「2024年問題」と呼びます。*¹

*¹参考:公益社団法人全日本トラック協会「トラック運送業界の2024年問題について」

物流にかかわる企業の仕組み改善が必要になる

2024年以降、運送業や建設業などに時間外労働の上限規制が適用され、た残業時間が改正前より少なく制限されるため、物流にかかわる企業は交代制を取り入れる、業務効率化のために新たなシステムを導入するなど、これまでの物流の仕事のあり方や仕組みを改善するための取り組みが必要になります。

ドライバーの収入が減少する

ドライバーは走行距離に応じて運行手当が支払われるため、稼働時間が減り、走行距離が短くなると、その分賃金も減少してしまいます。なかでもタクシーやバス、トラックドライバーは賃金が全職業と比較して低い傾向にあり*²、これ以上収入が減少すると離職率の増加につながる恐れもあります。

ドライバーが不足する

時間外労働の上限が下がることによって1人当たりの年間の稼働時間が減り、運べる荷物量も減少します。これを補うには、ドライバーを増やす必要がありますが、人手不足が続いているのが現状です。

ドライバーが確保できないと、売上も減少し経営にも影響します。さらに、月60時間を超えた時間外労働の割増率増加により人件費があがると、収益も減少することになります。

荷主の運賃上昇

2024年問題の影響として、物流コスト増加によるサービスの値上がりが想定されます。事業を存続させるには、消費者への負担増も避けられないかもしれません。つまり、2024年問題は物流業界にとどまらず、物流が支えている食品や生活用品、インフラなどの生活必需品のコスト増大にかかわる課題でもあります。

*²参考:厚生労働省「自動車運転業務の現状」
参考:経済産業省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」

2024年問題に向けた取り組み

これらの2024年問題に対応するために、政府や企業がどのような取り組みを進めているのかを紹介します。

働きやすい職場環境の整備

少ない力で荷物を運べる機械の導入や、育児休業、時短勤務制度など子育てしながら働ける制度を取り入れることで、高齢者や女性など、だれでも働きやすい職場を整えて人材の確保を進めています。*⁴

人材の育成やキャリアアップの仕組み作りなど、働きがいをもって働き続けられる職場づくりに取り組んでいる企業もあります。

*⁴参考:公益社団法人全日本トラック協会 「トラック運送業界の働き方改革 実現に向けたアクションプラン」

労働生産性の向上

ドライバーの労働時間は運転だけでなく、荷物の積み降ろしやその待ち時間も含まれます。荷主と協力して、待ち時間の削減や荷役作業を効率化して、時間あたりの生産性を高める取り組みも行われています。

また、輸送時間の短縮や、ドライバーの運転時間削減のために高速道路を有効活用した運行計画や、中小事業者同士が連携して片道輸送から往復輸送への取り組み、積み荷に余裕がある場合に荷主が協力し合い積み合わせて荷物を運ぶなどの新たな輸送方法も検討されています*⁵

*⁵参考:厚生労働省「「荷主どうし」の連携によりトラック運転者の トラック運転者の労働時間を短縮しましょう」

IT導入による効率化

ITシステムによる業務の効率化にも取り組んでいます。たとえば、トラックの荷降ろしの予約、受付、呼び出しをシステム化して、待機時間の削減、AIによる異業種の荷主をマッチングして最適な配送計画の策定や、クラウドを活用した配車業務の標準化など、さまざまな取り組み事例が報告されています*⁶

IT機器導入による物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化には国も力を入れており、今後もさまざまな業務改革が予想されます。

*⁶公益社団法人全日本トラック協会 「トラック運送業界の働き方改革 実現に向けたアクションプラン」

まとめ

物流の2024年問題とは、2024年4月1日以降働き方改革関連法施行により、トラックドライバーの時間外労働の上限規制から発生する諸問題です。

2024年問題では、ドライバーの収入減少、荷主の運賃上昇などが課題とされています。この課題に向けて、ドライバーの社会的地位の向上や働きやすい仕組みづくり、荷役作業の効率化、ITシステムやAIの導入などにより、労働時間の減少が売上減少につながらないように、業務の効率化を図り生産性を向上させるための取り組みがされています。


監修
羽場 康高(はば やすたか)
社会保険労務士、1級FP技能士、簿記2級。
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

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