探偵になるには

更新:2023年1月26日

探偵業は、依頼人からの要望を受け、様々な実地調査を行う職業です。
テレビドラマや映画などで探偵の仕事を知り、興味を持ったものの、「実際はどのような仕事をしているのか?」「資格は必要なのか?」「危険なことはないのか?」など気になっている人もいるのではないでしょうか。
探偵になるために必要な資格はありませんが、2007年に「探偵業法」が施行されており、探偵業に就きたいなら、法律や業務の内容などをよく知る必要があります。
今回は、探偵の主な仕事内容や勤務形態、雇用形態、収入などについて詳しくご紹介します。

探偵とは

探偵とはどのような職業なのか?
まずは、知っているようで知らない探偵業について、「探偵業法」施行の背景や興信所と探偵事務所との違いなども含め、説明します。

依頼を受けて「調査」を行う業務

探偵は、個人や企業などから依頼を受けて様々な調査を行う職業です。

日本には十数年前まで「調査業」に関する法律はありませんでした。しかし、違法な調査や、契約内容をめぐる依頼者とのトラブルなどの増加が問題視され、調査業のうち探偵業についての法制化が検討されるようになりました。

こうした背景により、2007年6月に施行されたのが、「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」です。
探偵は、この法律の中で以下のように定義されています。

〈探偵業法 第二条より引用〉
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。

なお、新聞社や通信社など報道機関からの依頼で行う報道目的の調査活動、あるいは学術調査、弁護士・税理士などが行う調査活動は、探偵業法の適用からは除外されています。

興信所と探偵事務所の違い

興信所と探偵事務所は名称が大きく違うことから、全く違う業務を行なっていると思う人もいるかもしれません。

以前は、それぞれの成り立ちから、興信所は取引先企業の信用調査などを得意とし、探偵事務所は個人の身元調査や素行調査などを担当することが多いなどの傾向があったようです。

しかし、現在では、どちらも探偵業法に基づく調査業ということで、業務内容に大きな違いはありません。もちろん、会社ごとに得意とする調査業務は異なるため、就職を考えるときは名称だけで判断せず、業務内容などもよく確認するといいでしょう。

探偵の仕事

探偵業の概要がわかったところで、ここからは探偵業は具体的にどのような仕事をするのか、また、雇用形態や休日など働き方についてご紹介します。

探偵の主な仕事内容

探偵業は調査が主たる業務となりますが、探偵だからといって、調査する際に特別な権限が与えられているわけではありません。法令で禁止や制限をされている行為を行うことはできません。

探偵業法第九条には、「探偵業者は、当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない」と定められています。

事件性のあるものは警察が担当し、探偵は、警察が介入できない民事関連の調査を行うと理解しておくといいでしょう。

探偵が行う調査の種類は多岐に渡り、案件ごとに業務内容も異なりますが、主なものを以下に紹介します。

  • 素行・浮気調査…婚約者の身元調査、配偶者の浮気調査、社員の就業規則違反調査など

  • 所在・行方調査…親族や債権者など人の捜索、ペット・所持品探しなど

  • 信用調査…取引先の経営状態調査、個人の不動産・資産調査など
    探偵は上記の調査に際し、対象者の情報を収集するために、周辺人物への聞き込みや対象者の尾行、張り込みなどを行います。調査後は、報告書の作成を行うほか、調査業務以外の相談業務や一般業務を行う場合もあります。

探偵の働き方や生活

探偵の雇用形態は、正社員、アルバイト・パート、契約社員、業務委託など様々あります。
Indeed(インディード)で検索可能なデータによると、探偵の求人は正社員が61.2%と最も多く、次いで、アルバイト・パートが21.2%、契約社員7.1%、業務委託5.9%と続きます。

探偵の仕事は、対象者の尾行や張り込みなど実地調査が主な業務となるため、案件によっては勤務時間が早朝から、あるいは深夜にまで及ぶこともあり、勤務形態はシフト制の企業もあります。休日や休暇は、週休2日制のところ、日曜祝祭日のみ休みのところ、事前申告制のところなど企業によってまちまちです。

探偵になるには

探偵になるために必要な資格や条件はあるのでしょうか?また、持っていると役立つ資格やスキル、探偵に向いている資質などについても見ていきましょう。

探偵に必要な条件とは?

探偵になるために必要な資格は、現時点では特にありません。
「経験者優遇」という求人がある一方で、「未経験歓迎」「研修あり」などの求人もあるため、全くの未経験者でもチャレンジできる職業だといえるでしょう。

その一方で、2007年に探偵業法が施行され、依頼人の権利利益を保護する観点から、探偵業に従事する人には、様々な法律の知識や調査能力などが求められるようになりました。そうした背景もあり、最近は、探偵事務所や興信所などが探偵学校を設立して、探偵のノウハウを教えるケースも出てきました。

探偵業の基礎を習得していると就職に有利な場合もあるため、未経験でのチャレンジに不安がある人は探偵を養成している専門の学校に入学し、探偵業を知るのも一つの方法です。カリキュラムや受講料、受講期間などは学校によって異なるため、入学する際はよく調べて自分に合ったところを探すことをおすすめします。

また、探偵業は個人で営むこともできます。未成年者などいくつかの欠格事由はありますが、事務所の所在地の警察署を通じて公安委員会への届出を行うことで、経験がなくても探偵事務所を開設することができます。実際は、未経験者が開設することは難しく、探偵事務所などで経験を積んだ上で独立・開業する例が多いといえます。

しかし、公的資格がなく、探偵事務所や興信所あるいは従業員などが持つスキルや経験を客観的に測る指標がないことから、以下のような各種認定資格を設けている業界団体もあります。その一例を以下に紹介します。

探偵調査士検定(一般社団法人日本探偵業協会)

探偵業の届出を行った人が対象。毎年1回実施。筆記試験(約50問)、技能試験(尾行・張り込みの技能、パソコンのスキル、カメラ・ビデオ・写真の取り扱い)と講習。

探偵業務資格認定(一般社団法人日本調査業協会)

「探偵業務取扱者」「探偵業務取扱主任者」「探偵業務指導教育責任者」「探偵業務管理責任者」と4つの区分に分け、認定試験を実施。区分ごとに受験資格が異なり、試験は講習と筆記試験(40問)。毎年1回実施。

持っていると使える資格やスキル

探偵になるために必要な資格はありませんが、働く上で、持っていると便利な資格やスキルはあります。

運転免許証

尾行や張り込みの際に使うため、自動車かバイクのいずれか、あるいは両方持っていると役立ちます。実際、求人募集では普通自動車免許を必須条件としているところがほとんどです。

写真や動画の撮影スキル

探偵が行う調査では、対象者の尾行や張り込みを行い、現場での状況を証拠として撮影することが数多くあります。悪条件下でも撮影可能な暗視カメラなどの扱い方や、最新機材に関する知識があると役立ちます。

電子機器に関する知識とスキル

盗聴器や盗撮機器の発見を依頼される場合もあるため、最新の電子機器に関する知識や、調査報告のためのパソコンスキルなどもあると便利です。

刑法や民法の知識

適正な調査活動を行うため、また、自分の調査活動が違法か違法でないかを判断するためにも、法律に関する知識は欠かせません。

探偵に向いている人はこんな人

実際に探偵業に就くとしたら、どんな人が向いているのでしょうか。ここでは、探偵業に特に必要な4つの資質について解説します。

集中力と忍耐力

対象人の尾行や張り込みは、いつまで続くかわからない長期戦となる場合が多々あります。いつ重要な撮影チャンスが訪れるかわからないため、集中力と同時に粘り強さも必要になります。

臨機応変さ

調査中の突発的な出来事や、想定外の事態にも冷静に対応する能力が必要です。

コミュニケーション能力

対象者の周辺の人から怪しまれないように話を聞き出すためには、コミュニケーションスキルも必要になります。また、探偵業は、チームを組んで活動する機会も多いため、同僚と情報交換をしながらうまくやっていくことも大切です。

体力

調査内容によって勤務形態が変わるため、早朝出勤や深夜までの張り込みなど生活のリズムが崩れる可能性があります。特に、張り込みでは長時間屋外にいることになるため、体力や自己管理能力が必要になります。

探偵の年収や給料の目安

Indeed で検索可能なデータによれば、探偵の給与の全国平均年収は331万円、全国平均月収は27.6万円、地域別に見ると東京都では26.7万円、神奈川県では23.8万円、大阪府では32.0万円などとなっており、地域によって多少差があります。

また、探偵業では、業務委託や請負などの形での求人もあり、その場合は給与が30万円〜50万円など高めに設定されています。正社員で入社した場合も、経験を積んでスキルアップすることで昇給する可能性があります。

探偵の求人傾向

Indeed で検索可能なデータによると、「探偵」の求人件数は正社員やアルバイト・パートを含め70件以上あります。「探偵 調査員」で検索するとさらに増え、200件以上あります。

探偵の業務は調査業務が中心となりますが、依頼人からの相談業務を主に行ったり、営業や管理を中心に行ったりする場合もあります。そのため、求人では、「調査員」「営業員」「相談員」などと業務内容を絞って受け付けているところもあります。
調査業務を中心に行いたい場合は、「調査員」の求人を中心に探すといいでしょう。

ここまで探偵業について詳しく紹介してきましたが、だいたいのイメージはつかめたでしょうか?探偵という仕事に興味を持って、働きたいと思った人は、まずは Indeed で「探偵」「探偵 調査員」「探偵事務所」と検索して、自分に合いそうな求人情報を探してみてください。

※平均年収、月給、時給及び求人検索件数は、求人検索エンジン Indeed において検索可能なデータより抜粋(2020年11月現在)

まとめ

テレビドラマや映画などで見る探偵は、派手なイメージがありますが、実際の探偵業は、依頼人からの要望を受け、尾行や張り込みなど様々な実地調査を行う職業です。集中力や忍耐力、体力などを必要とし、周辺人物から情報を引き出すために、コミュニケーション力を発揮する場面もあります。探偵になるために特別な資格は必要ないので、興味を持った人はチャレンジしてみてはいかがですか。

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