演出家になるには

更新:2022年7月9日

舞台や映画、ゲームなど、現代の娯楽にはさまざまな演出が施されています。良いコンテンツを作るためには、各作品に合わせた良質な演出が不可欠で、コンテンツのクオリティーを向上させ、より多くの人から愛される作品を生み出すのが演出家の仕事です。同じ内容でも演出家の手腕次第で、観客の感動が何倍にも膨らみます。

本記事では、演出家の仕事内容や、なるための方法、年収とキャリア形成、将来性と就職状況を紹介します。

演出家とは

演出家とはどのような職業なのでしょうか。よく似た職業である「監督」との違いも紹介します。

舞台などの作品づくりで、照明、音楽、演技指導などの演出を行う職業

演出家とは、上演する劇などを芸術的にまとめる仕事をする専門家のことです。演出家が手がける作品は舞台や映画、アニメなど多岐にわたります。

主には、演劇やオペラ、舞踊、バレエなどの舞台作品で、照明や美術、音楽、音響効果などの指示をする他、役者への演技指導を担当し、作品の芸術性やエンターテインメント性が高まるように工夫を凝らします。

役者指導では、台本やシナリオに書かれているセリフの意味や込められたテーマ性、心情、時代背景などを読み解いて演者に丁寧に伝え、適切な演技を行えるよう指導をしていきます。

近年人気となっているアニメーションの演出家は、シナリオを読み込み、キャラクターの服装や心情をどのように描いてほしいのか、アニメーターや作画監督に指示を出す役割を担います。

監督との違い

演出家は監督や脚本家の意見をくんで、より効果的な場面を作っていきます。各分野のプロフェッショナルに自らのイメージを伝え、具現化するためにさまざまな工夫を施すのが演出家の役割です。

一方、演出家と似た職業に「監督」があります。監督は演出や脚本、スタッフ、役者などすべての関係者を取りまとめて作品を作っていく立場で、なかには撮影担当と兼業するケースもあります。

監督と呼ばれる職業のなかには「舞台監督」もあります。舞台監督は、舞台の総合的な演出を手がける演出家や映画監督とは異なり、演出家の意向に沿って、舞台の照明や音響、演技、衣装などを管理する責任者です。演出家のイメージを実現させるために、多方面で準備段階からまとめ上げていく立場です。

なお、かつては一般的だった「監督の下に演出家」という構図も、近年ではなくなりつつあり、映像現場では、監督と演出家のどちらかしかいない場合もあります。演出家と監督のはっきりした区別もなく、「現場内でどう呼ばれているかの違いだけ」というケースもよくあるようです。また、同じような業務を担う役職として「プロデューサー」や「ディレクター」と呼ばれる場合もあります。

演出家の仕事

演出家はどのように仕事を進めていくのでしょうか。ここでは、演出家の仕事内容を掘り下げていきます。

演出家の主な仕事内容

演出家はさまざまな場面で作品制作に携わります。ここでは、舞台演出を例に挙げて、具体的な仕事内容を紹介します。

企画立案

プロデューサーなどと一緒に作品の企画を立てます。「いつ」「誰が」「どのように」公演するか検討しつつ、必要なスタッフや、資金額なども計算して集めていきます。

台本の準備

脚本家に脚本の執筆を依頼したり、既存の脚本を取り寄せたりします。演出家が自ら脚本を書く場合もあり、決定後は台本を読み込み、作品のイメージを固めます。

オーディションの運営

役者を集めるためにオーディションを開催します。演出家自身が主催する劇団の場合は、劇団員のみでの公演も可能なため、オーディションを開かない場合もあります。

稽古での指導

キャスティングが決まれば、役者を集めて台本の読み合わせや、「立ち稽古」と呼ばれる練習を行います。映像作品の場合はリハーサルも実施し、演技指導も随時行っていきます。

公演や撮影での演出

舞台の場合、本公演の開始後は演出家が役者に直接指示を出すことはできません。映像作品であれば撮り直しができるため、役者が納得のいく演技ができるまで演出を続行します。

演出家の働き方

演出家の働き方は人それぞれです。一般的なのは、テレビ局や制作会社などに就職し、制作スタッフとしてスタートするパターンです。経験を積んだあとに、演出の仕事に関わるようになったり、フリーランスとして独立して仕事を受けるようになったりする場合もあります。

舞台であれば、劇団などに所属して経験を積んでから、演出家に転向するケースもあるようです。演劇やミュージカル、オペラはもちろん、お笑いやドラマなどにも演出家が存在し、映画の分野では監督自身が演出家として活躍したり、アニメを手掛けたりする演出家もいます。

雇用労働者の場合、賃金や労働時間などの条件は勤務先の規定によりますが、上演スケジュールに間に合わせるために、夜間まで打ち合わせや稽古を行うケースも珍しくありません。

演出家になるには

演出家に向いているのは、どんな人なのでしょうか。演出家になるために特別な資格は必要ないものの、身に付けておいた方がいいスキルはあるのでしょうか。ここからは、演出家になるために役立つ情報を紹介します。

大学や専門学校で必要な知識を学び、制作会社へ入社または劇団へ所属する

演出家を目指す場合、映像制作系の専門学校や芸術大学などに入学して学ぶのが近道でしょう。演出家を目指すコースがある専門学校や大学もあり、演出家に必要なさまざまな知識やスキルを学べます。映像系や演劇などの専門学科がある美術系の大学に進学するのも1つの道で、多くの有名演出家を輩出しています。

専門学校では、卒業後に学校からの紹介で、制作会社などに就職できる道もあり、サポート体制の充実もメリットの1つです。

大学や専門学校では、主に以下のような知識やスキルを学べます。

演技や舞台創作の知識

発声や体の動かし方、台本の読み方、役作りの方法など、演技の基本を学ぶことができます。また、舞台の演出について、スタッフとのチームワークの取り方などを基礎から学びます。

舞台演習

学内公演などで舞台を支える仕事を体験できます。なかには、プロが行う仕事の助手として、舞台を間近で見られる学校もあるようです。卒業時には、学校で学んだ知識を生かして「卒業制作」としてチームで舞台を作り上げる場合もあります。

他にも、在学中に劇団を自ら立ち上げたり、留学をして海外の演出を学んだりする人もいます。また、芸術系以外の大学に在籍しながら、サークル活動や研究会を通じて演劇の知識を学び、経験を積む方法もあります。

大学や専門学校以外にも、劇団に入団し、役者としてキャリアを積んでから舞台演出家となる人も珍しくありません。

ただし、演出家にとって重要なのは、芸術的なセンスや感性です。進学する学校の選択にあまり悩み過ぎず、将来演出家として働く上で何が重要かよく考えて、学生のうちから感性やセンスを磨くさまざまな経験をしておきましょう。

演出家に求められる資質やスキル

演出家として活躍する上で、学歴や資格は特に必要ありません。一方で、演出家になるためには主に以下のような資質やスキルが求められます。

芸術への感性やセンス

上述のように、芸術に関わる職業である演出家は、独創的な感性やセンスが必要です。多くの映画や舞台などを観て、優れた演出や表現などを研究して吸収しましょう。

芸術に関する知識

芸術文化に対する幅広い知識も欠かせません。演出家は演出に関してあらゆることを決定する立場のため、芸術への高い関心はもちろん、状況に応じて的確な判断を下せる深い知識も必要です。

スタッフを動かすリーダーシップ

大勢のスタッフを適切に動かすためのリーダーシップも重要です。役者から美術、制作などスタッフが一丸となって動かなくては、理想的な作品を創造できません。演出家にはスタッフに信頼され、チームをまとめる力が必要です。

コミュニケーション能力

演出家には、役者やスタッフ、関係先との人脈を広げるためのコミュニケーション能力も不可欠です。自分がイメージする作品の完成形をスタッフと共有するためにも、スムーズなコミュニケーションが求められます。

この他にも、開演までの準備においても、時間的なプレッシャーに耐えうるタフな体力と精神力がなければ、演出家は務まりません。

演出家の給与の目安

演出家の給与額は働き方によって大きく異なる点が特徴です。Indeed(インディード)で検索可能なデータによれば、演出家の年収は、200万円台が最も多く約56.5%、300万円台が約27.2%、400万円台が約10.9%となっています。*

演出家になるスタートラインとして、テレビ局や制作会社に就職した場合、会社の規模によって違いはあるものの、年収200万円台が最も多いようです。

また、演出家のなかには特定の会社に所属せずフリーランスで働いている人も多くいます。フリーランスは会社勤めと比較して収入が安定しにくい面もありますが、演出家として評価されれば、より多くの収入を得られるチャンスもあります。

演出家の就職状況

ここでは、気になる就職先や求人傾向などを見ていきましょう。

演出家の将来性

これから演出家を目指す人は、演劇業界に留まらず幅広い分野を視野に入れておきましょう。

演劇業界は、劇場やコンサートホールなどハード面の整備が積極的に進められてきた一方で、舞台芸術を地域社会に根付かせ、創造活動を活性化していくためのソフト面の整備が十分とは言えない状況にあります。

一方で、インターネットの普及に伴うメディアの変化によって、演出家の活躍の場は拡大や発展が見込まれます。ネットドラマや映画配信、動画投稿サイトなど、インターネット関連の分野で幅広い活躍が期待できるでしょう。

また、近年は芸能人が自分で番組を作ったり動画を配信したりするケースが増えているため、発信者である芸能人に助言や演出などを行う仕事も新たに生まれています。

今後も、演劇やオンラインなどコンテンツごとの特徴や良さを生かして、柔軟に対応できる演出家が一層求められるでしょう。

演出家の求人傾向

Indeedで検索可能なデータによると、演出家に関する求人は全国で141件ありました。しかし、多くの求人は「イベントプランナー」「ディレクター」など、「演出家」とは異なる名前で募集されています。雇用形態の内訳は正社員が58.2%と最も多く、次いで新卒が12.1%、アルバイト、パートが10.6%、契約社員が7.1%です。*

演出家の求人は主にテレビ局や制作会社などから出されています。タイミングによっては劇団が演出家を募集するケースもあるため、求人情報をまめにチェックし、積極的に応募しましょう。

演出家の求人情報は、インターネットでも探せます。

まずは、Indeedで「演出家」「演出家 未経験」などのキーワードで検索してみてください。勤務地や年収、雇用形態などで条件を絞り込めるため、自分の探したい求人情報を効率よく探せます。

*出典:平均年収、月給、時給及び求人検索件数は、求人検索エンジンIndeedにて検索可能なデータより抜粋(2021年12月現在)

まとめ

舞台や映画などさまざまな作品の演出を扱う演出家は、技量によって作品のクオリティーを大きく左右する重要な職業です。優れた演出によって良質なコンテンツを作れれば、ファンの増加や知名度の向上によって、多くの収入を得ることも可能です。

インターネットを利用したコンテンツの発展により、今後はより広範囲での活躍が期待できる職業でしょう。いきなり演出家になるのは容易ではありませんので、まずはアルバイトとして制作会社や劇団などで働いてみるのも一案です。

Indeedで、ぜひ演出家の求人情報を検索してください。

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