麻酔科医になるには

更新:2022年8月24日

ナースイメージ画像

麻酔科医は、手術を受ける患者の麻酔管理や全身状態の管理を行うスペシャリストです。

総合病院や大学病院のほか、緩和ケアを行う病院、ペインクリニックなど多くの医療現場で活躍しています。手術中だけでなく手術前後にも患者に寄り添い、治療をサポートする大切な職種です。

本記事では、麻酔科医の仕事内容や、なるための方法、収入や将来性、求人傾向などを紹介していきます。

麻酔科医は、患者が手術を安全に受けられるよう麻酔管理をする職業

麻酔科医は、手術中及び手術前後の患者の状態を良好に維持するために診療を行います。

手術前には麻酔に関する説明を行い、それぞれの患者を診察し適切な麻酔を選択して投与します。また術後は麻酔がとれるまで時間がかかるため、意識がはっきりと戻るまで患者を観察し、そのあとの経過まで見守るのが仕事です。

麻酔科医の仕事

麻酔科医はどんな職場でどんな業務に当たっているのでしょうか。また、どのような働き方があるのかも、紹介していきます。

麻酔科医の主な仕事内容

麻酔科医は、「手術前」「手術中」「手術後」の苦痛を最小限にする仕事を担います。具体的な業務には、以下があります。

手術前

患者ごとに適した種類、量の麻酔を用意します。合併症を防ぐため、持病や常用薬の有無を確認し、触診や聴診を行うこともあります。適切な麻酔方法が決まったら、患者やその家族に説明します。

手術中

鎮静薬(全身麻酔薬)や鎮痛薬、筋弛緩薬などを組み合わせて全身麻酔を行います。麻酔をかけたあとは患者の心拍数や血圧などの状態を確認して安全を確保します。必要に応じて輸血や輸液の投与を行うこともあります。

なお、手術中は主に以下の管理を行います。

疼痛管理

手術中の痛みの状況は患者によって異なるため、全身状態を観察し必要に応じて鎮痛薬を投与します。

呼吸管理

気管挿管などを用いて、患者の体に十分な酸素を送り込む環境を整えます。

循環管理

血圧や脈拍、尿量などを観察し心臓や血液の流れを整えます。

手術後

患者の呼吸や血圧、心拍数が安定しているかどうかや、意識の回復を確認します。

麻酔をかけるだけの仕事と思われがちな麻酔科医ですが、実際には患者の全身状態を良好に保つために、手術前から手術後まできめ細かい業務をこなしています。

麻酔科医の働き方

主に麻酔科のある医療機関や、手術を行う医療機関で働いています。その他、麻酔科医が持つ苦痛を緩和し全身を管理する能力を生かし、手術室以外で働く人もいます。集中治療や救急医療、緩和医療、在宅医療を行う医療機関、痛みを改善するペインクリニックなどでも麻酔科医が活躍しています。

勤務時間は働く場所によって変動します。たとえば、当直のある病院の場合は深夜帯の宿直があったり、緊急手術が入る大学病院などではオンコール対応もあったりとさまざまです。また、非常勤のアルバイトやフリーランスでの働き方もあります。

麻酔科医になるには

麻酔科医になるためにはどんな資格や試験が必要なのか、どんな人に向いている職業なのかも紹介していきます。

医師免許取得後に2年間の臨床研修を経て、麻酔科専門医を目指す

麻酔科医になるためには、まず、医師国家試験に合格する必要があります。国家試験の受験資格には、大学の医学部や医科大学の卒業の条件が定められています。

医師国家試験の試験は「臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識及び技能」について行われます。

臨床実習などでの到達度を確認する問題ほか、「必修の基本的事項」では医師としての姿勢や基本的能力、「医学総論」「医学各論」では、国内のどの医療機関でも対応できる内容に限定して出題されます。

なお、2022年2月5日、6日に実施された医師国家試験では、受験者数1万61人のうち合格者は9,222人、合格率は91.7%でした。*¹ 一見合格率が高く易しいように見えますが、実際は医学部などを卒業した人が臨むため、受検までに長く厳しい道のりがあります。

医師国家試験に合格して医師免許を取得したあとは、臨床研修医として内科や外科、麻酔科などさまざまな科で医師としての基礎を学ぶ初期臨床研修(2年間)を受けます。その後、麻酔科医を目指します。

医師免許があり、初期臨床研修を修了していれば医師として働けますが、麻酔科を標榜して開業などをするためには「麻酔科標榜医」の資格が必要になります。数多くある診療科の中で「麻酔科の標榜」だけが唯一、厚生労働大臣の許可が必要であると医療法で定められています。

なお法制化されたものではありませんが、2018年から「新専門医制度」が導入されており、希望する科の専門医となるためには原則として「専門研修プログラム」を受ける必要があります。

それまで、専門医などの制度は各科の学会が独自に設けていましたが、一般社団法人日本専門医機構が統一基準を設定し、これに沿って各学会が運用に関わる仕組みとなりました。

麻酔科専門医になるためには、臨床研修後に同機構が認定する大学病院や施設などの「麻酔科専門研修プログラム(3年以上)」に申請して、まず、麻酔科専攻医となります。

専門研修プログラムを受ける間に、専門医の受験資格に必要な症例数を経験し、認定試験を経て研修修了後に専門医として認定されます。専門研修の間に、「麻酔科標榜医」の資格取得も可能です。

*¹出典:厚生労働省「第116回医師国家試験の合格発表について」

麻酔科医に求められる資質やスキル

麻酔科医は、次のような資質を持つ人が向いています。

ひたむきで共感性に優れた人

麻酔科医は手術前後に患者の体調などを確認します。この時、安心して手術を受けてもらうためには、患者に寄り添い、共感する力も重要です。

地道な仕事のなかにやりがいを感じられる人

患者の様子を観察したり必要に応じて検査を行ったりと、手術前からコツコツと準備をする仕事です。手術が成功した後も、患者の血圧や脈拍、呼吸が安定しているかチェックするなど、地道な仕事の積み重ねにやりがいを感じられる人に向いています。

急変時にも慌てず対応できる冷静な判断力

手術中の患者の生命維持を担う責任重大な仕事です。もし患者の様子に急変があっても、落ち着いて適切な処置をできることが求められます。

麻酔科医の収入とキャリア形成

気になる麻酔科医の収入や、働いていくうえで考えられるキャリアアップの方法を紹介していきます。

麻酔科医の給与の目安

Indeed(インディード) で検索可能なデータによれば、麻酔科医の年収は、2022年6月14日時点で1,000万円台が67件、1,200万円台が57件、1,400万円台が42件、1,500万円台が36件、1,700万円台が15件の人材募集が掲載されています。*²

勤務先の規模や勤務体系によって収入に差があります。残業や夜勤、休日出勤、宿直、オンコール体制などがある医療機関では手当が付く場合もあります。

*²出典:平均年収、月給、時給及び求人検索件数は、求人検索エンジン Indeed で検索可能なデータより抜粋(2022年6月現在)

麻酔科医のキャリアアップ方法

麻酔科専門医や麻酔科指導医などを目指すのが一般的なキャリアアップ方法です。

具体的には、大学病院や総合病院などの麻酔科に所属して経験を積みながら、「麻酔科標榜医(厚生労働省)」→「麻酔科認定医(日本麻酔科学会)」→「麻酔科専門医(日本専門医機構)」→「麻酔科指導医(日本麻酔科学会)」へとステップアップしていきます。

専門医制度は、「医師の質を高め、良質な医療の提供」を目的に、2018年に新制度が導入されたばかりです。その他の資格は認定機関が異なっており、キャリアを積み重ねるうえではシステムの複雑さや課題も指摘されています。

麻酔科医としての実績を積み、スキルアップするためには、研修医時代から自身のキャリア形成を主体的に思い描くのも大切です。また、情報収集を積極的に行い、行動に結びつける力も必要となります。

なお、麻酔科で緩和医療と全身管理を学んだあとに、内科、外科など他科で活躍する医師や、基礎医学研究者となる医師もいます。

麻酔科医の就職状況

麻酔科医を目指す人にとって気になる将来性と、求人傾向を見ていきましょう。

慢性的な麻酔科医不足で今後も高い需要が期待できる

需要予測の参考として、2019年に一般社団法人日本病院会が公開した「勤務医不足と医師の働き方に関するアンケート調査」があります。

「医師が不足している」「やや不足している」と答えた病院に対して、どの診察科が不足しているのか調査した結果、42.3%の病院が、麻酔科の勤務医不足の問題を抱えているのが分かりました。*³

このように、麻酔科医はニーズが高いにもかかわらず、人手が足りていません。また、医師のキャリアチェンジの選択肢としても近年注目されています。

さらに、ペインクリニックやがんの緩和ケアクリニックでも高いニーズがあり、麻酔科医の活躍の場はますます広がるものと予想されます。

*³出典:一般社団法人日本病院会「2019 年度 勤務医不足と医師の働き方に関するアンケート調査」

麻酔科医の求人傾向

Indeed で検索可能なデータによれば、麻酔科医の求人は、全国で3,900件近くあります。

雇用形態の内訳は、正社員が74.2%と半数以上を占め、次いで、アルバイト・パートの求人が24%、契約社員が1.3%です。*²

医師国家資格の資格取得後、どこかに所属して働きたい場合は、求人情報をインターネットでも探せます。Indeed なら、キーワードに「麻酔科医」などと入力し、さらに、勤務地や年収、雇用形態などで条件を絞り込めるため、効率よく求人情報を見つけられます。

まとめ

麻酔科医は国家資格が必要な職業であり、手術や痛みの伴う治療に欠かせない麻酔のスペシャリストです。今後も医療の発展とともに需要が増加する職種だと考えられています。手術で不安な患者を身体、精神ともにサポートする麻酔科医を目指してみてはいかがでしょうか。

Indeed で、ぜひ麻酔科医の求人情報を検索してください。

シェアする

関連記事

理学療法士になるには

こちらの記事もおすすめです