退職金はどれくらいもらえる?退職金の有無や相場、計算方法もご紹介

転職をするときに退職金がもらえるかどうか、相場はどれくらいなのかは気になるポイントではないでしょうか。
しかし、会社をやめるときに退職金を受け取れるかどうかは、その会社の就業規則(退職金規程)によります。
また、退職金にはいろいろな種類があり、支給される金額も会社によって違いがあります。
本記事では、転職するときの退職金や相場などを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
退職金とは?
退職金とは、退職するときに会社から退職者に支払われる金銭のことです。
退職金の額は会社によって異なりますが、一般的に勤続年数や基本給、役職などをもとにして計算されます。
退職金の有無は企業により異なる
退職金の額や支給条件だけでなく、退職金の有無も企業によって異なります。
退職金の制度は、「退職金制度」や「退職給付金制度」と呼ばれています。
厚生労働省が平成30年に行った「退職給付(一時金・年金)の支給実態」の調査によると、退職給付制度がある企業は全体の80.5%となっています*¹。
また、企業規模別では以下のようになっており、多くの会社が退職金制度を導入していることがわかります。
企業規模別の退職金制度がある割合
従業員数による企業規模 | 退職金制度がある割合 |
1,000人以上 | 92.3% |
300~999人 | 91.8% |
100~299人 | 84.9% |
30~99人 | 77.6% |
退職金制度の有無を知りたい場合は、就業規則や賃金規則を確認しましょう。
就業規則の「退職規定」では、退職金の支払い日や支払われる金額など、退職金の詳細が記載されています。
*¹出典:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 「退職給付(一時金・年金)の支給実態」
退職金の種類と計算方法
企業の退職金制度は支給時期や運用方法によって、4種類に分けることができます。
それぞれの制度をくわしく説明します。
退職一時金制度
退職する際に退職金を一括で支給する制度です。
退職金の額や支給時期などは、企業の退職規定によって定められており、退職者がその条件を満たす場合は、退職金の支払いが行われます。
ただし、退職一時金制度の場合は、会社側に事前積立ての義務がありません。
計画的な資金準備が行われていない場合は、倒産時などに十分に退職金が支払われないことがあります。
退職金共済制度
退職金共済制度とは、事業主と退職金共済機構が契約を結ぶことによって、事業主が退職金を計画的に準備できる制度のことです。
事業主は金融機関に毎月の掛金を納付しておき、従業員が退職する際には、退職金共済機構が従業員に退職金を直接支払う形式です。
そのため、万が一会社が倒産した場合でも従業員は退職金を受け取れます。
この制度で広く知られたものとして中小企業向けの「中小企業退職金共済制度」があり、国がサポートを行っています。
確定給付企業年金制度
この制度は、日本で多く利用されている企業年金制度です。
「規約型」と「基金型」の2種類があり、従業員が受け取る給付額があらかじめ約束されています。
規約型では、生命保険会社や信託会社などに運用や管理を委託します。
基金型では、企業が別法人として設立した企業年金基金が、資産の管理運用を行います。
確定給付企業年金制度では、退職金を一括給付だけではなく「年金払い」で受け取れることが大きなメリットとなっています。
確定拠出年金制度
企業DCとも呼ばれるこの制度は、企業が毎月掛金を積み立て、従業員が自分で年金資金を運用する仕組みです。
運用成績が悪くても企業が穴埋めをする必要がないことから、企業側のリスクを減らせる制度として導入する企業が増えています。
運用したお金は、原則60歳以降に一時金または年金として受け取れ、従来の年金との併用給付も可能です。
退職金の相場は?
退職金は、まとまった金額をもらえるイメージを持つ人もいらっしゃるかもしれません。実際は、どれくらい支給されるものなのかを紹介します。
厚生労働省が行った「就労条件総合調査」によると、大学、大学院卒の人の企業規模ごとの退職金給付額は、以下のようになっています*²。
企業規模ごとの退職金給付額

画像の説明
企業規模ごとの退職金給付額
勤続年数/1,000人以上/300~999人/100~299人/30~99人の順
20年~24年 約1711万円 約1073万円 約930万円 ―
25年~29年 約1404万円約1522万円 約1188万円 約1404万円
30年~34年 約2034万円 約1620万円 約1546万円 約1392万円
35年以上 約2435万円 約1957万円 約1785万円 約1501万円
また、高卒(管理、事務、技術職)の企業規模ごとの退職金給付額は、以下のようになっています。

画像の説明
企業規模ごとの退職金給付額
勤続年数/1,000人以上/300~999人/100~299人/30~99人の順
20年~24年 約676万円 約520万円 約645万円 約422万円
25年~29年 約937万円 約654万円 約709万円 約527万円
30年~34年 約1152万円 約960万円 約876万円 約614万円
35年以上 約2328万円 約1673万円 約1572万円 約1252万円
このように、企業規模が大きいほどまた勤続年数が長くなるほど、退職金の金額は多くなる傾向があります。
*²出典:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 「学歴・職種、勤続年数階級、企業規模別定年退職者1人平均退職給付額」
退職金はいつ受け取れる?
退職金には、3とおりの受け取り方法があります。
一時金(1~6か月後)
年金(満60歳以降)
一時金と年金の組み合わせ
一時金は一括、年金は分割です。
一時金の場合、多くは1~2か月後の支給ですが、退職時の状態や退職金制度によっては6か月など長く時間がかかる場合もあります。
退職前にどの程度かかるのかを確認しておくと良いでしょう。
年金は満60歳になったときに受け取れる権利を得られるため、翌月から受給開始可能です。
一時金と年金の組み合わせの場合は、一時金の分は一時金の受け取り時期に、年金の分は年金の受け取り時期に受け取れます。
組み合わせの場合、一時金と年金で控除の方法が異なるため、忘れないよう対応しましょう。
退職金は増額したり減額したりする?
退職金は状況によっては、増額したり減額したりします。それぞれのケースを紹介します。
増額されるケース
会社都合のリストラの場合、退職金の増額がある場合もあります。
業績悪化等で人員整理を行いたい際などは、退職金を上乗せして退職人数を増やす方法を取る企業もあります。
数回に渡って退職勧奨が行われる場合、初回よりも次回は割増退職金の額が下がる傾向があるため、退職を考えているなら早めの決断がおすすめです。
減額されるケース
反対に減額されるケースとしては、従業員が労働契約や就業規則、退職金規程に反する行動を取った場合、もしくは企業が従業員を懲戒解雇する場合が考えられます。
いずれにしても問題行動がない場合、退職金の減額や不支給が認められることはないため、当てはまらない方は気にする必要がありません。
退職金に税金はいくらかかる?
退職金は「退職所得」と呼ばれ、税金がかかります。
しかし、退職所得控除を受けられる場合は、一般の所得に比べて税負担を少なくできます。
また、分離課税のため、退職金を受け取っても課税総所得があがることはありません。
それでは、退職金制度ごとの税金を解説します。
退職金を一時金として一括で受け取る場合
退職金を一時金として一括で受け取る場合、退職控除を受けることができるため、課税対象となる退職所得金額を減らすことができます。
退職所得の計算式は「退職金金額(源泉徴収される前の金額 - 退職所得控除額) × 1/2」となっています。
退職所得控除は以下のように、勤続年数を使って計算します*³。
勤務年数 | 計算式 |
20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
20年超 | 70万円×(勤続年数-20年)+800万円 |
退職金所得控除の計算式
20年以下 40万円×勤続年数(最低80万円)
20年超 70万円×(勤続年数-20年)+800万円
たとえば、勤続20年の人が1000万円を受け取った場合は「40万円×10年=400」となり、退職所得控除は400万円となります。
その結果、課税対象となる退職所得の額は「(1000万円-400万円)×1/2=300万円」となり、300万円に所得税率を掛け、所得控除を引いた額が退職金にかかる税額となります。
*³出典:国税庁「NO.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
退職金を年金払いで受け取る場合
退職金を年金払いで受け取る場合は、退職所得控除ではなく、公的年金控除を受けることができます。控除額は年齢と年金収入額により決められています。
年金以外の収入が1000万円以下の場合、65歳未満の人は公的年金等の収入が年間60万以下、65歳以上の人は110万以下であれば非課税となります。
「公的年金等の収入」は、退職金の年金払いだけではなく、厚生年金や国民年金、iDeCoによる年金も対象となります。
公的年金控除額を算出するときには、これら3つの年金収入を足すようにしましょう。
まとめ
退職金がもらえるかどうかは、会社の就業規則や退職規定によります。
退職金制度を導入しているところでは、定年退職のときだけでなく自己都合で退職したときも退職金を受け取れることが多くなっています。
退職金にかかる税金は分離課税のため、退職金を受け取っても、その年の総所得金額や所得税率、次年度の住民税の所得割がかわることはありません。
転職を考えている場合は、退職金をもらえるかどうかをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
監修
羽場 康高(はば やすたか)
社会保険労務士、1級FP技能士、簿記2級。
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
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