私たちは今、採用企業より求職者の方が少なく、求職者が優位に立つ「売り手市場」の中にいます。 

米国では全業種にわたり数百万件の求人があり、企業は優秀な人材を獲得するため、高額な給与や柔軟な勤務形態、雇用奨励金を提示し、採用決定を早めるなど、他社より少しでも優位に立とうと懸命に努力しています。


データ:企業の人員数は増加傾向に

米国では、採用企業の32%が積極的に人員を増やしており、主要な業界がこの動向に寄与しています。 

  • レジャー、サービス業の41%
  • 卸売、小売業の29%
  • 教育、健康サービスの27%
  • 輸送および電気、ガス、水道業の26%
  • 専門、ビジネスサービスの21%

出典:SHRM、Job Seekers are Gaining Control over Hiring、2021年6月。


しかし、給与の増額やそのほかの特典は、新型コロナウイルスの感染拡大後における採用市場で起こった変化の一部にすぎません。

Glassdoorや Indeed の企業ぺージのような求人情報サイトには、従業員のリアルなクチコミや評価が掲載され、実際に働いている人だからこそ分かる企業の情報にアクセスできますが、年収や在宅勤務率を高め、待遇を良くしたとしても、こうしたサイトに応募者に好まれないであろう評価が掲載されると、採用に大きな影響を及ぼします。 

求職者が企業の情報を直接的かつ、タイムリーに取得できるようになった今、企業の採用ブランディングの重要性は高まり、同時に、ブランディングにおいて企業がコントロールすべき要因も増えました。

それでは、自社の採用ブランディングの質を高めていくには、具体的に何ができるのでしょうか。

専門家に相談することもできますが、その前に自社の現状をよく把握することをお勧めします。優秀な人材を惹きつけ、定着させるために、何が妨げとなり、何がうまくいっているのか、それぞれの要素に注目し、時間をかけて検討しましょう。


データ:注目すべき数値

求職者の50%が評判の悪い企業には就職しないと回答したのに対し、92%は評判が「非常に高い」企業への転職を検討するだろうと回答しています。 

出典:Glassdoor for Employers、40+ Stats for Companies to Keep in Mind for 2021。


採用ブランディングの意義とは

採用ブランディングは、競争が激化し、求職者が有利に立つ今日の市場において重要な差別化要因だと言えます。採用ブランディングとは、つまるところ組織そのもの、そして組織の評判を伝えるストーリーです。 

組織の評判は、組織側が積極的に広めたいと考えている特性や価値観だけではなく、SNSやクチコミなどを通じた従業員や退職者らによる評価など、多くの要素から形成されていきます。

大企業はすでに知名度も評判も高いため、採用ブランディングのためにするべきことは特にないと考えがちですが、消極的なアプローチのままだと、採用活動や従業員の定着の問題につながる恐れもあります。

なぜなら、採用市場の変化とともに求職者の要望やニーズも変化しているからです。過去に自社の採用ブランディングの核として候補者に提示していた内容の価値が薄れ、採用活動における競争力を失うこともあります。

また、クチコミやSNS投稿など、オンラインやオフラインでの従業員による企業への評価が、自社の長期的な採用ブランディングと矛盾していることもあるでしょう。そうした場合、一歩引いて既存の採用ブランディングを客観的に見直すことも大切です。 

ポジティブな採用ブランドの構築と維持

多くの求職者が、従業員エクスペリエンス、つまり、従業員がその企業で働く上で得た体験こそ、企業の採用ブラディングの実質を最も正確に表していると考えています。

こうした考えは企業選定のプロセスにも影響し、米国における求職者の86%は、求人への応募前にクチコミや評価を確認して企業研究を行うと回答し、50%は給与の増額を提示されても、企業の評判が悪ければ転職しないと回答しています。

さらに、評判が非常に高い企業があれば、今の仕事を辞めて転職する意欲があると92%が回答したことを考えると、今、採用ブランディングが重要であることは明らかでしょう。 

採用ブランディングにおける問題の特定と克服

しかし、そうした採用ブランドの重要性にもかかわらず、米国企業の5社に2社は採用ブランディングに対する戦略を持たず、その他の企業においても、既存のブランドメッセージを適切に監視し、必要とされている改善を行うためのフレームワークがないことが分かっています。

さらに、採用ブランディングがビジネスに与える直接的な影響や、自社の採用ブランディングが損なわれている前兆を理解していない企業もあるようです。

では、自社が採用ブランディングの改善に取り組むべきか、どうすれば判断できるのでしょうか。

明らかな兆候は数多くありますが、最も一般的なものとしては条件に合う応募者の減少や、つながりを築いたはずの応募者が競合他社に乗り換えてしまうなどが挙げられるでしょう。

こうした兆候が見られる場合、自社が伝えているストーリーと、従業員の実際のエクスペリエンスに大きな隔たりがある可能性が高いと言えます。

次に、こうした隔たりを補うために組織がすべきことを紹介します。

1. まずは従業員の声に耳を傾ける 

採用ブランドを丁寧に構築することも必要ですが、さらに重要なのは実際の従業員エクスペリエンスだと言えるでしょう。従業員からのリアルな意見は、CEOからのメッセージよりも3倍信頼できると考えられているからです。

従業員の影響力を育てることは、安定した採用ブランドを構築するだけでなく、市場におけるブランドの適切な普及と信頼のためにも重要なステップです。

あまりにも多くの企業が、「これが真実だったら」と願うことや、「以前は真実だった」こと、または「真実だと思い込んでいる」ことを企業のメッセージとして伝えています。

KRC Reseachが実施した世界各地で働く2,000人の従業員を対象とした調査では、雇用主が掲げている採用ブランドと、実体験が完全に一致すると感じているのはわずか19%という結果が出ました。

組織が意図的であったか否かを問わず、こうした信頼性に欠ける採用ブランドを掲示していると、候補者のエンゲージメントや応募の意思に大きな影響を与えるのは当然かもしれません。

米国で求人1件あたりの応募数が最低値を記録した今、雇用主としてブランドプロミスを守れない企業は、人材を惹きつけ、応募へと駆り立てることにおいて、特に不利になります。ゆくゆくは、求人投稿へのアクセス数やエンゲージメントの低下を経験することになるでしょう。 

こうした採用ブランドと実質の隔たりを特定し克服するには、自社の従業員という最大のリソースを活用しましょう。部門や職位を問わずに聞き取り調査を行い、少なくとも従業員の視点から、組織がブランドプロミスを実現するために真摯に努力していると言えるのかを把握することが大切です。 

従業員に聞き取りを行うさいは、必ず、率直かつ、データドリブンな言葉で問いかけるようにしましょう。

たとえば、「当社の福利厚生について、従業員がネガティブなコメントを投稿している理由は何だと思いますか」と聞く代わりに、「当社の福利厚生は競合他社に後れを取っていると従業員らが感じている聞きました。どのような待遇が追加されると良いと思いますか」のように、質問に客観性を持たせることが大切です。

企業文化に関する質問も同様です。「リーダーシップの課題は何だと思いますか」という質問に回答できる従業員が少ないのに対し、「同僚の中に、成長機会のなさについて不満を訴えた人がいました。どうすれば改善できると思いますか」という質問であれば、思慮深いフィードバックのきっかけになります。

何が共感を呼び、何が呼ばないのか、また現職の従業員にとって何が重要なのかを良く理解できれば、自社の現時点での採用ブランドをより明確に表すことができるでしょう。

従業員による評価とブランディングが一致し、より真実に近いものとなれば、求職者からも選ばれやすくなります。企業が体現したいことが求職者に伝わるようになり、従業員にも、自社と競合他社との差別化要因を知ってもらえます。

2. 社内のインフルエンサーを活用する

従業員へ聞き取り調査を行う中で、採用市場に自社を宣伝してくれる人材を見つけると良いでしょう。採用ブランドの実質と従業員からの評価を一致させることができたと感じたら、こうした社内のインフルエンサーに自身の企業での経験を自発的かつ率直に発信してもらい、自社のクチコミを広めるのです。

さらに、実質を伴った採用ブランドが構築できたら、求職者向けのプラットフォームにも反映することが大切です。企業プロフィールを更新し、レビューに返信し、求人サイトに掲載している内容や Indeed の企業ページをアップデートしましょう。

従業員からの意見や内部事情を伝えるコンテンツを、企業のSNS上でシェアするのも有効です。できれば、従業員に企業プロフィールと個人プロフィールに直接投稿し、シェアしてもらうのが理想です。

候補者や求職者に企業のユニークな文化や従業員エクスペリエンスを深く知ってもらえるほど、エンゲージメントや、内定承諾の可能性も高まります。 

3. 最後に、生まれ変わった採用ブランドを披露する

採用ブランドが強化され、良い評判を広げてくれる従業員を確保できたら、自社の採用ブランドや、厳選した従業員のエクスペリエンスをSNSや従業員による評価を投稿する各求人サイト、  Indeed の企業ページなどを通して、広く伝えましょう。

そうして企業の露出度が増えれば、現職や退職して間もない従業員にも、企業に対する意見に同意したり、自分のエクスペリエンスを共有したりするきっかけを与えることができます。 こうした要素は、人々があなたの企業に入社したい、勤続したいと思う理由を描き出すサポートをしてくれます。

それは、求人投稿へのアクセス数や応募数を増やすだけでなく、候補者のエンゲージメントを高め、競合他社よりもあなたの会社にへ入社するよう促してくれるでしょう。

この記事は米国版 Indeed LEADから翻訳・編集しました。

翻訳・編集:Indeed Japan 編集部

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