企業が学生に向けて提供するインターンシップには、大きくわけて「短期・無償」と「長期・有償」の2つがあります。ただ実際には「短期に比べると、長期インターンシップは実施へのハードルが高い」と感じている企業が多いのではないでしょうか。

株式会社SAMURAIは、2018年より長期・有償インターンシップを導入し、大きな成果を挙げています。長期・有償インターンシップにはどのようなメリットがあるのでしょうか。注意しなければならないポイントやインターン生への指導、コミュニケーション方法について、株式会社SAMURAI執行役員 コーポレート部長の小林史直さんと、コーポレート部 採用担当の近藤貴大さんにお聞きしました。

導入のきっかけは、インストラクターの採用活動

――はじめに、SAMURAIの事業内容を教えてください。

小林:一般のお客様に対しプログラミングを教えるオンラインスクールがメイン事業です。最近では、月額2,980円(税抜)で学べるサブスク型オンラインスクール「侍テラコヤ」というサービスをリリースしました。

また、受講生を企業に紹介する人材紹介や、企業向けのプログラミング研修なども行っています。

――長期・有償インターンシップは、いつ・どのようなきっかけで始めたのでしょうか?

小林:インターンを募集し始めたのは2018年ごろです。弊社の事業では、まずプログラミングを教えるインストラクターを集めなければなりません。ただ、1カ月で50人以上採用するとなると、面接や事務手続きが大変です。そういった業務をサポートするスタッフとして、インターンの学生さんに携わってもらうことにしました。

株式会社SAMURAI執行役員 コーポレート部長 小林史直さん
株式会社SAMURAI執行役員 コーポレート部長 小林史直さん

――インターン生は、毎年4月など決まったタイミングで募集しているのでしょうか?

小林:いえ、特に決めておらず、増やしたいタイミングで募集しています。2、3名集まったら一旦ストップして、足りなくなったらまた募集するような形ですね。就労期間も制限していません。本人の希望によりますが、在学中はずっとインターンとして事業に関わってもらえるとありがたいな、と考えています。

――インターン生には、具体的にどのような仕事を任せているのでしょうか?

小林:インストラクターの採用に関わる業務全般をお願いしています。面接、スカウトメールの送信、事務手続きなど。

もちろん最初は、社員からインターン生に仕事をレクチャーしていました。ただ最近はインターン生の人数が増えてきたので、インターンがインターンに教えるケースもあります。

――インターンから正社員として入社したのは、何名でしょうか?

小林:今のところ2名です。インターンを導入し始めた頃は、まだ企業として未成熟であり、新卒として採用してもうまく育成・活躍できない状況でした。そのため「実務経験のある人材を雇ったほうがいい」と考えていたのです。

その後は少しずつ企業のフェーズが変わっていき、「インターンから正社員になってもらった方がいい」と移行したのが2020年ごろです。今後はインターンからの採用を増やしていきたいと考えています。

学生は業務を覚えるスピードが速い

――長期・有償インターンシップは、企業としてどのようなメリットがありますか?

小林:若い人は頭の回転が速いし、すぐ吸収するので即戦力になります。今の学生はデジタルネイティブ世代なので、新しいITツールであってもすぐ適応できます。もちろん人によって向き・不向きはありますが、上の年齢層と比べると学生インターンのほうがキャッチアップは速いでしょう。あとは、卒業までの期間の見込みが立つし、もし縁があれば社員として入社してもらえる可能性もあります。

学生側も給料が得られるし、就業体験によって就活にも有利になる。企業にとっても学生にとってもメリットは大きいのではないでしょうか。

株式会社SAMURAI執行役員 コーポレート部長 小林史直さん

――インターンシップを導入する目的として、「採用」の優先順位は低い?

小林:「新卒の正社員として入社してもらうことが目的か?」と問われると、現時点での弊社としてはその優先度は低いですね。あくまで業務のサポートをお願いすることがメインなので。もし良い人がいれば採用に繋げていきたいな、というレベルです。

――では、長期・有償インターンシップのデメリットは?

小林:インターン生には大学のテスト期間があります。「今いて欲しいのに」というタイミングで、業務から離脱してしまう点はデメリットかもしれません。テスト期間は事前に分かるので対策はできますが、学生に無理を強いることはできないので。

あとは教育コストですね。敬語の使い方や「そもそも仕事とは?」といった段階から教える必要があります。社会に出てビジネスマナーを知っている人と比べると、やはり労力はかかります。ただ、業務を覚えるスピードは速い。教育にかかる手間と時間をどう捉えるか、だと思います。

責任感が生まれる? 長期インターンシップに参加した学生側の本音

――近藤さんは、SAMURAIでインターンシップを経験した後に新卒入社されたそうですね。長期・有償インターンシップに参加する学生側のメリットは?

近藤:一番大きいのは、社会体験ができる点だと考えています。インターン用のプログラムではなく実務を任せられ、社員から指導してもらえる経験は貴重です。

他社で受けた短期インターンシップでは、課題を与えられても「できないなら仕方ない」で終わり。そこからどうしていけばいいのか、何が正解だったのか聞く機会がありませんでした。しかしSAMURAIでは、きちんと指導およびアドバイスをもらえます。そういう経験ができるのは、長期インターンシップならではだと思います。

株式会社SAMURAI コーポレート部 近藤貴大さん
株式会社SAMURAI コーポレート部 近藤貴大さん

――なるほど。では反対に、学生にとってのデメリットは?

近藤:普通のアルバイトだと、サークル活動やイベントの都合に合わせて柔軟に勤務予定を変更できるケースもあるでしょう。しかし長期インターンシップでは、プライベートの予定より実務に合わせる努力や意識が必要となります。

ただ私は、インターンを続けていくうちに「事業の一つに携わっているんだ」という責任感が生まれました。長く続ければ続けるほど、業務に対する意識が変わっていくのではないでしょうか。

――現在はどういう業務に関わっていらっしゃるのでしょうか?

近藤: インストラクターやエンジニアの採用がメインで、インターン生の採用や育成業務も担当しています。もともと私もインターン生だったので、そのときの悩みやつまずく要素をふまえてコミュニケーションしています。

一旦離れても、巡り巡ってまた出会う可能性がある

――長期・有償のインターンシップを実施するにあたって苦労した点、また注意すべき点はありますか?

小林:会社の設立当初からインターン生に活躍してもらっていたので、苦労と感じたことはそれほどありません。しいていえば育成面でしょうか。誰がどう教育するのか、どんな業務をどこまで任せるのか、どうやったら独り立ちできるのか。そのあたりはきちんと考えたいポイントかなと思います。

近藤:私自身がインターンの時に苦労したのは、実務経験がゼロのため「何が正しいのか、何が問題なのかよくわからない」という状態が続いたことです。

――その問題は、どのように解決していったのですか?

近藤:担当してくれていた社員が1on1で苦労している点を聞き出し、問題点の本質を見つけていくような流れでした。

株式会社SAMURAI コーポレート部 近藤貴大さん
自身のインターン経験を生かし、オンラインの1on1でインターン生をサポートする近藤さん

小林:最初は育成要素が強いので、社員がこまめにサポートしています。ただ、ティーチングが強くなると「教えた通りにやってよ」となってしまうので、「やってみて、どうだった?」と成長を促すコーチングの要素も重要です。

あとは、「どういう会社に行きたいのか?」「どんなキャリアを歩んでいきたいのか?」を傾聴し、希望のキャリアプランに沿った業務や機会を提供する必要があります。「インターン生はただの労働力だ」と考えるのは簡単ですが、それでは定着しないでしょう。学生に合わせてきちんと設計しなければなりません。

――「インターン=自社の採用に繋げる」というイメージが強いですが、必ずしもそうではない、と。

小林:もちろん、自社のことを好きになってほしい気持ちはあります。ただ、インターン経験を生かして大企業に就職した人もいるので。羽ばたいていくことも応援しています。

また、別の会社に行ったとしても、巡り巡って再び出会う可能性があると思っていて。他社で2~3年経験を積んだあと、何かの縁で「また一緒にやろうよ」という話になる、とか。ビジネスパーソンとして成長した後に戻ってきてくれたら、うれしいですよね。

――ベンチャーならではの面白い考え方ですね。では最後に、経営者や人事担当者に向けてアドバイスがあればお願いします。

小林:少子化で若者の数が減ってきているので、フレッシュな労働力を獲得することが年々難しくなっています。これまで以上に学生側が企業を選ぶ時代であり、社会構造も変化しているので、それに合わせて新卒採用のあり方を柔軟に変えることも検討すべき時期にきているのではないでしょうか。

長期・有償インターンシップについては、活用の価値がありそうだと感じたのであれば、ぜひ前向きに検討していただきたいですね。きちんとやれば、採用に直結することはもちろん、副次的な影響として口コミにも繋がってきます。「あそこのインターン、良いらしいよ」とか、「あの会社のインターンで鍛えられました」といった話が少しずつ伝播していけば、中長期的に必ず良い効果を生むのではないかと考えております。


<取材先>
株式会社SAMURAI
執行役員 コーポレート部長 小林史直さん
コーポレート部 近藤貴大さん