人材不足に悩まされている企業が多い昨今、従業員の離職は切実な問題のひとつです。企業には採用の強化と合わせて、離職率を抑える取り組みが必要でしょう。

では、近年はどのような理由から退職を申し出る人材が多いのでしょうか。最近の傾向、そしてその対策法について、人事業務・プロジェクトの支援を手掛けるアルドーニ株式会社・代表の永見昌彦さんに解説していただきました。

ポジティブな退職理由とネガティブな退職理由

退職は、従業員側にとっても一大決心です。それでもあえて退職を決意するからには相応の理由が存在し、それは大まかにポジティブなものとネガティブなものに分けられるでしょう。

まずポジティブな理由とは、当該社員がやりたいことを目指して次のステージを求めているケースや、進学や留学など自身のスキルアップのために、いったん現職から離れる決意をするケースのことなどです。この場合は当人のその後のキャリアを尊重し、快く送り出すべきでしょう。

一方のネガティブな理由とは、会社に対する何らかの不満が原因になっているケースがほとんどです。給与や労働時間といった待遇面、あるいは人間関係をはじめとする環境面への不満がこれに相当します。

この場合、対策次第では、未然に離職を防ぐことができたはずなのです。人事担当者としては、後学のために退職理由を詳しくヒアリングし、改善につなげるためのデータにしなければなりません。

近年増えている退職の理由は?

役割や労働時間に対する報酬が見合わなければ、より良い条件を求めて他社への転職を望むのは自然なことです。売り手市場となりエージェントの動きにも活発化が見られるなど、転職のハードルが低くなっているこの時代においてはなおさらです。

近年人材側からよく聞かれるのが、「実績やキャリアにふさわしいポストに就かせてもらえない」「希望している部署で働くことができない」といった待遇面の不満です。これらの不満に、会社として必ずしもすべて応じる必要はないものの、社員の声が届かない組織であるというイメージを与えるのは得策ではありません。定期的な面談などを通して、希望を受け止める土壌があることを示す必要があるでしょう。

また、人間関係の問題も根が深く、退職理由の上位に挙げられます。上司や先輩と反りが合わなかったり、同僚とうまくいっていなかったりすることから、労働意欲を失ってしまうケースが多く見られます。より深刻なのは、人知れずパワハラやセクハラが行われている場合で、企業側にはそうした事実を突き止め、職場環境の改善に向けた努力が求められます。

従業員の退職を未然に防ぐために必要なこと

ここで重要なポイントは、いずれの退職理由にも、会社との信頼関係が揺らいでいるという「エンゲージメント」の問題が関わっていることです。

エンゲージメントとは「繋がり」や「絆」を意味し、昨今では従業員と組織の間にある信頼関係や愛社精神を意味する言葉として用いられています。エンゲージメントが下がれば退職への意向が高まるのは必然であり、企業としては採用後も従業員とのエンゲージメント強化に努める必要があります。

エンゲージメントが下がってしまう理由のひとつとして「いざという時に会社が守ってくれない」「組織のなかで自分の存在意義が見いだせない」といった、従業員の側が会社との関係性に不満を持つケースが考えられます。こうした事態を避けるには、日頃から従業員の希望によく耳を傾け、適材適所の人事を推進し、不満の芽が小さいうちに問題解決に取り組まなければなりません。

また、採用の際に人材欲しさのあまり、待遇や環境について現実と乖離した情報を伝えるのも、後の退職理由につながりやすいので注意が必要です。入社前のイメージとのギャップをできるだけ抑えるためには、まず採用担当者は自社が真に求めている人材像を明確にする必要があります。そしてそれに合致した人材を選考し、自社の風土や理念をあらかじめ正確に伝える努力をするべきでしょう。エンゲージメント強化の取り組みは、採用時からすでに始まっているのです。




<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。

TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子+ ノオト

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