時代の流れとともに、勤続年数に比例して待遇が上がる「年功序列制度」の廃止や見直しを検討する企業が増えています。年功序列制度とはどのような制度なのか、メリットやデメリット、見直しを行う際のポイントや注意点について、社会保険労務士法人名南経営の社会保険労務士である服部英治さんに伺いました。

年功序列制度とは

年功序列制度とは、年齢や勤続年数の高まりにより、賃金や役職が高くなっていく人事制度を指します。背景には日本の高度成長期に普及した終身雇用制度があり、企業としては、一社で長く働くことで従業員の技術レベルの向上と安定が見込め、また愛社精神も高まりやすくなります。また従業員にとっては、継続的な雇用や安定した給与支給が得られるという双方の利点が合致した制度といえます。

年功序列のメリット・デメリット

◆メリット

  • 長く働くことで、その企業に必要な技術の熟練が見込める
  • 企業の理念や方針をより深く理解してもらえる
  • 社内の一体感が高まり、企業に対して愛着を持つことが期待できる

◆デメリット

  • 自社の業務への取り組み方や考え方に縛られ、改善や進歩につながりにくい
  • 若手従業員が評価されずに不満を持ちやすく、離職につながることもある
  • 従業員の高齢化に伴い、自社への貢献度に関わらず人件費が高くなる

年功序列制度の廃止や見直しが必要となっている背景

年功序列制度の廃止や見直しを検討する企業が増えている背景として、下記のような理由が挙げられます。

  • 機械技術の向上やAIの進化によるデジタル化が進み、従業員に求められる業務の種類や質が速いスピードで変化している
  • 若年層の「一社で勤め上げる」という意識が希薄化し、従来よりも転職をする人が増えている
  • 勤続年数の長い従業員が、自社が求める成果を出していない場合でも高い賃金を支払うため、不要な人件費が発生しやすい

廃止・見直しの進め方

年功序列にもメリットはあり、完全に廃止するよりは、情勢や企業の現況を踏まえた上で、少しずつ見直しを図っていくという流れが現実的です。

1.企業の賃金・人事制度などを見直し、問題点や改善点を洗い出す。

2.企業ごとのケースに合った賃金・人事制度を計画し、3年~5年をかけて制度の変更を行う(改定内容によっては段階的に実施する)。
<計画例>

  • 35歳までは賃金が自動的に上昇し、以降は役割・責任に応じて賃金が変わる
  • 45歳以降は賃金に変更はないが、定年を延ばし70歳として、生涯年収は上がるようにする
  • 自社が必要とする業務が可能な人材へは従来よりも賃金を高く設定して採用する

3.労使協議を実施し決定する。

4.労使合意を締結する。不利益変更が問題となる可能性のある従業員に対しては、個別労働条件の合意を得る。

5.周知を徹底する

6.新しい賃金・人事制度の導入

年功序列制度を廃止・見直す際の注意点

◆不利益変更に対して個別に説明する

企業の都合で一方的に労働者の賃金を減額すると不利益変更に該当し、労働契約法9条に違反するため、トラブルにつながる可能性があります。賃金が減額する従業員に対しては個別に説明し、理解を得られるように尽力しましょう。

◆適正な評価制度を構築する

年齢や勤続年数という従来の指標がなくなると、評価基準が抽象的になりがちです。企業は自社がどのような人材を求めているかを見直し、何をもって従業員を評価するのかを具体的に言語化して、評価制度を明確にする必要があります。

自社の現状とビジョンをしっかり把握し、従業員がやりがいを持って働けるような制度づくりを目指しましょう。




※記事内で取り上げた法令は2022年12月時点のものです。

<取材先>
社会保険労務士法人 名南経営 社会保険労務士 服部英治さん
大手社会保険労務士事務所を経て、1999年に名南経営に入社。全国各地でクライアント企業の労務コンプライアンス支援や、人事制度の改定支援をはじめ、各種人事労務相談に応じている。

TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

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