新卒採用を実施している企業であれば、インターンシップを実施することは珍しくありません。しかし、採用に結びついているのか、学生を受け入れる現場社員の負担に見合う成果が出せているかと疑問を抱くこともあるのではないでしょうか。インターンシップを企業の「負担」から「投資」へと変えるためのノウハウを綴った『企業のためのインターンシップ実施マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター)の筆者である名古屋産業大学准教授・今永典秀さんに、企業にとってのインターンシップの意義をうかがいました。


社内外に企業の価値を知ってもらう機会に


――企業が学生のインターンシップを受け入れるメリットとは何でしょうか。
 
企業にとっては、やはり第一には採用だと思います。学生も必ず就職先の候補や参考にしたいと考えて参加しますし、企業にとっても学生や大学とつながる手段になります。
 
新卒採用のみを目的とするならば、インターンシップは「効率が悪い方法」と受け取られることもあります。就職フェアなどのイベントや一般的な広報などの広告にコストをかけた方が、直接的な成果を実感しやすいためです。
 
しかし、学生にとって満足度の高いインターンシップの機会を提供できれば、確実に企業ブランドの向上につながります。インターンシップで企業の実情を知って、選考に応募する学生とはいわば「相思相愛」の状態になりますから、面接など採用のプロセスもスムーズでしょうし、入社後のミスマッチも少なくなるでしょう。
 
学生の入社につながらずとも、インターンシップの評判は口コミやSNSなどで広がる可能性が大いにあります。また、より長期的に見れば、インターンシップを経験した学生が将来の顧客や取引先の社員になる可能性も考えられます。良いインターンシップの経験は、企業と学生の間の信頼につながり、企業のソーシャル・キャピタルを豊かにするとも言えるでしょう。
 
――採用活動以外の利点は、他にもありますか?
 
社員がインターンシップに関与することで大きく成長するという効果も期待できます。学生に自社の魅力を説明するためには、自社の業務内容やこれまで自分が担当してきた仕事を客観的に見つめ直すことが必要です。これは社員自身の社内での経験の棚卸しをする機会となります。
 
また、若手社員がインターン生に業務を教え、マネジメントの経験を積む機会とすることもできるでしょう。

学生と共に活動し、成長するインターンシップを


――インターンシップには意義があると知りつつも、「忙しい中での学生の受け入れは負担」と考え、積極的に取り組めない社員もいるのではないでしょうか。
 
どんな目的や思いでインターンシップに参加する学生を募集しているか、そしてインターンシップ中の様子や、終了後の学生の感想を社内報や企業のサイトで発信することをおすすめします。社員の理解やモチベーションが高まり、プロモーションにつながります。
 
また、インターンシップのプログラム自体にも工夫が必要です。「1~2日で、できるだけ多くの学生を受け入れたい」と考える企業がありますが、実は短期間で大人数が参加するインターンシップほど、学生の満足度を高めることが難しく、結果として社員もやりがいを感じにくくなるものです。可能であれば、数週間から数カ月間、1人から数名程度の少人数の学生と一緒に活動するインターンシップの実施をおすすめします。
 
――長期にわたるインターンシップに対して、抵抗を感じる企業もありそうです。
 
インターン生に社員が付きっきりになる必要はありません。自社の事業内容や市場について調べ、レポートを書くことを課題にして、学生一人で取り組んでもらう時間を作ってもいいのです。
そのレポートやインターンシップ活動についての中間報告や成果発表会を社内で開催し、若手社員から役員まで様々な人が参加してコメントすることも、社員のインターンシップへの関心や理解を深めるよい機会となるでしょう。
 
――学生の思いや成長の様子に触れる機会を作ると、社員のモチベーションが高まるのですね。
 
そうですね。他には、インターンシップのために特別にプログラムをあつらえなくとも、社員が「時間が合ったら取り組みたい」と日頃から考えている業務を学生に手伝ってもらうのもいいですね。たとえば、資料整理や市場環境の調査、顧客やステークホルダーへのアンケートやヒアリングといったことです。学生にとっては、実際の仕事に近い業務を体験し、報告・発表することで、「働く」イメージを掴むよい経験になります。
 
インターンシップは企業に好感を持つ人を増やすとともに、社員の育成や社内の活性化にもつながる活動です。採用やPRに大きな予算を割けない中小企業こそ、大きな成果が感じられるのではないでしょうか。

 
 

<取材先>
今永典秀さん
名古屋産業大学現代ビジネス学部経営専門職学科准教授、日本インターンシップ学会理事。インターンシップや課題解決型授業のプロデュースを行う傍ら、企業やNPO法人のアドバイザーなども務める。共著に『企業のためのインターンシップ実施マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト