ソーシャル・インパクト・ボンドとは

ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB:Social Impact Bond)とは、

行政による成果連動型の民間委託契約と、民間資金の活用を組み合わせた、

新たな官民連携手法の一つです。

これまで行政が担ってきた社会的課題の解決を、民間の力を借りて行う新たな仕組みとして、

世界中で注目されています。

外部資金提供者を巻き込んだ成果連動支払い=SIB

ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB:Social Impact Bond)とは、行政による成果連動型の民間委託契約と、民間資金の活用を組み合わせた、新たな官民連携手法の一つです。

サービス提供者(NPOや民間企業など)が、民間投資家から調達した資金を活用して、社会課題解決型の事業を実施し、その事業が成果を上げた場合に行政から成果報酬を受け取れる仕組みのことを指します。

これまで行政が民間に業務を委託する場合、通常、大きく分けて2種類の方法がありました。
  • 固定報酬型:民間事業者と業務委託契約を締結して、基本的に契約で定められた業務(アウトプット)が履行されていれば、サービスの成果(達成度)に連動させることなく、契約で定めた対価を支払う方法
  • 成果連動報酬型:あらかじめ定めた成果(アウトカム)指標を設定し、成果(達成度)に応じて対価を支払う方法。欧米諸国では複数年度契約で実施されることが多い。

通常の行政サービスの民間委託事業

成果連動型支払いの民間委託事業

2つめの成果連動型の民間委託について、米国ではPFS(Pay for Success)と呼ぶことが多く、日本政府も内閣府等がPFS推進室を設置し、普及に力を入れています。

この成果連動型の民間委託(=PFS)での資金調達は、さまざまな方法で行われています。必ずしも、SIBのように民間からの資金調達ありきで行われるわけではないのです。

PFSの中で、民間から資金調達を選択する場合がSIBとなり、これまで行政が担ってきた社会的課題の解決を、民間の力を借りて行う新たな仕組みとして、世界中で注目されています。

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ソーシャル・インパクト・ボンドを理解する

ソーシャル・インパクト・ボンドの歴史とは
世界で最初のSIB案件は、2010年にイギリスのピーターバラ刑務所における再犯防止・受刑者社会復帰を目的として始まりました。同刑務所に収監されていた2,000人の軽犯罪者を対象に自立支援事業を実施した結果、対象者の再犯率は対象群と比較して9%低くなり、目標値を上回ったのです。注1

その後2013年に、アメリカ・ニューヨークにおいても再犯防止・受刑者社会復帰を目的としたSIB案件が始まるなど、欧米を中心に発展していきました。

日本でも2015年に最初の取り組みが行われたのち、2017年度から本格導入され、一部で成果が上がっています。
中間支援組織とは
SIBを行う際には、行政・資金提供者・サービス提供者の間の調整や案件形成などを担う中間支援組織が必要とされます。

中間支援組織には、財団などの非営利団体、シンクタンク、コンサルティング会社、資金運用会社などの営利団体が想定されます。サービス提供者に対して進捗や成果管理を行う評価アドバイザーを兼任したり、投資資金等の受け皿となる特別目的会社(SPC)の設立を支援することもあります。
サービス提供者が資金調達をするタイミングはいつか
行政からの支払いを受けるまでの事業にかかる費用については、金融機関や財団機関、投資家や個人投資家、企業のCSR部門といったさまざまな民間の資金提供者から、前払いで資金を受け取ることになります。
資金提供者のリターンとリスクはなにか
資金提供者は、投資を通じて社会的課題を解決することへの貢献ができることはもちろん、サービス提供者が成果を出せばより多くのリターンを受けることができます。

しかし、通常の債券とは異なり、固定された償還金が約束されているわけではありません。

投資したサービス提供者が社会的成果を達成できなかった場合、リターンのみならず元金を失うこともあります。リスクという点からすれば株式(エクイティ)に近いといえるでしょう。しかし、うまくいけば社会的利益(社会に貢献できたという「社会的リターン」)に加えて経済的利益(高い財務リターン)を得られる可能性があります。
成果の達成度合いはどう確認するのか
SIBをはじめる(組成する)前に、期待される成果(アウトカム)を定義し、それらの成果量を測るための成果指標や成果に関するデータの収集方法、成果量に紐付けた支払いモデル等を設計し、SIBの契約のなかに組み込みます。

サービス提供者が、社会的成果を達成できているかどうかを測定して行政に報告する役割も必要です。サービス提供者や中間支援組織が担うこともありますが、多くの場合、SIB契約の利害関係者ではなく第三者評価機関が厳正・中立・公正な評価者となることが期待されます。第三者評価機関には、大学、評価専門組織、監査法人などが含まれます。
ソーシャル・インパクト・ボンドのメリットとは
これまでの成果連動型の民間委託契約は、成果の達成状況に連動して、行政からサービス提供者に報酬が後払いされるものでした。この方法は、規模が小さく資金的余裕のない民間事業者の場合、運転資金の調達が容易ではなく、参入が難しいという課題がありました。

しかしSIBは、サービス提供者に対して民間の資金提供者が資金を前払いし、成果目標が達成されれば行政が資金提供者へ報酬を支払うという仕組みになっています。そのため、サービス提供社の資金調達上のリスクが緩和されるのです。

また、支払う側である国や地方公共団体にとっても、成果達成状況に連動した報酬を支払うというSIBの仕組みは、社会的課題解決の施策を実行するための限られた財源を効果的に活用でき、行政コストを削減できるというメリットがあります。
ソーシャル・インパクト・ボンドのデメリットとは
SIBのデメリットとしては、複数の関係者が関わることで利害調整や契約締結が複雑になるため、取引コストが高いことや、成果が出るまでに手間や時間がかかることが挙げられます。

また、成果主義を前提に、行政からの事前介入などが減ることで、サービス提供面での事業者の裁量度や工夫の余地が、成果主義ではない委託契約よりも高まる可能性があります。

反面、支払いの紐付けられた成果指標が予め定められているため、契約された成果の達成のみに専念する傾向が生まれる可能性もあります。

つまり、本来その事業者が取り組むべき、より困難な社会的課題から事業者を遠ざけてしまうリスクがあるのです。
ソーシャル・インパクト・ボンドが適している分野はなにか
SIBを導入するのに適しているのは、課題解決のために長い時間がかかることが予想されるけれども、適切な対策を行えれば一定の成果を得やすく、成果が可視化・定量化しやすい分野です。
  • 幼児教育、生活困窮者支援、若年雇用応援、認知症・介護予防、受刑者再犯防止といった、予防することで将来発生する課題を未然に防ぐことができる分野
  • 行政コストをかけているにも関わらず十分な成果が出ていない分野
上記のような分野では、資金的なリスクを抑えながらエビデンスや知見を蓄積できるため、SIBに合った手法と言えるでしょう。
ソーシャル・インパクト・ボンドが適していない分野はなにか
下記のようなビジネスやサービスは、SIBに適していません。
  • どんな地域で、どんな事業者が実施したとしても、仕様で定められたサービスを提供すれば一定の成果が見込めるような、既に世の中に広く普及していて十分なエビデンスが得られているサービス
  • 融資や出資などSIB以外でも容易に資金調達できるビジネスなど
日本のソーシャル・インパクト・ボンドの主な事例とは
2018年に広島県域の6つの自治体が、予防医療や保険事業分野でサービスを展開する株式会社キャンサースキャンに委託する形でヘルスケア事業に取り組みました。6自治体の国民健康保険者を中心に、がんの早期発見による健康寿命の延伸、生活の質の向上を目的として、大腸がん検診の受診勧奨を行う事業を実施し、一定の成果をあげています。

こちらは、複数の行政団体が共同で行うことで、事業規模を拡大できたことも大きな成果として注目されました。

国内では、こういったヘルスケア事業のほか、再犯防止やコミュニティビジネス支援の分野でもSIBが導入されています。

海外の事例では、就労支援、教育・若者支援、ホームレス自立支援、貧困や環境問題など、さらに多岐にわたります。
本項目の監修
明治大学経営学部 専任教授 
塚本一郎 さん

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