プロのアスリートと共に高みを目指す「アスリートマネジメント」という仕事。堂安律選手をはじめとするトップアスリートを裏で支える株式会社イレブン・マネジメント代表・杉本啓さんのお話を伺いしました。

中学2年生の頃からアスリートマネジメントの道を志し、スペイン・バルセロナの大学でスポーツマネジメントの学位を取得。その後、広告代理店へ新卒入社し、飲料メーカーでのスポーツマーケティング職を経て2017年に独立。現在は堂安律選手をはじめとするトップアスリートのマネジメントを手掛ける。

アスリートマネジメントの
仕事

  • アスリートマネジメントとは、具体的にどのようなお仕事なのでしょうか?

    マネジメントという面では、いわゆる芸能事務所の業務と大きく変わりません。所属アスリート達が出演するメディアやスポンサー企業との調整や現場での立ち会いなど、窓口業務もあります。ただ、僕は自分を「プロデューサー」だと意識して仕事していて、アスリートの価値を一緒に作っていくところに重きを置いています。

    堂安選手もそうですが、僕らが抱えているのは現役のトップアスリート達。調子が良い時もあれば、そうじゃない時もある。必ずこちらが狙った通りに活躍できるわけではありません。そんな中で僕が常に心がけているのは、すべての選手を「多くの方に応援され、期待される存在にしていくこと」です。

    マネジメントは選手に技術的なアドバイスはできません。でも、選手がいろんな人に応援してもらえていることが、きっと彼のエネルギーになっていくと信じています。だから、堂安選手のマネジメントとして僕ができる最高の仕事は「堂安律というアスリートの大応援団」を作ることなのかもしれません。

「目が良かった」だから、
堂安選手に賭けた

  • 堂安選手との出会いのきっかけを教えてください。

    これは本当に偶然で。堂安選手に出会ったのは、独立前に勤めていた飲料メーカー時代です。4年ほどスポーツマーケティングの担当をやっていた頃で、当時彼は16歳くらいで、ガンバ大阪のアンダー23でプレーしていました。

  • 第一印象はいかがでしたか?

    「関西の男の子だな!」という印象でした。初めて会った時は、大阪でコーヒーを一緒に飲みました。海外に出たい、というすごく強い意志を持っていると感じました。僕も高校、大学を海外で過ごしていたので、英語の勉強の仕方や「海外ってどうなの?」「SNS投稿はどうすればいい?」など、堂安選手の方からすごく興味を持って質問してくれました。

    当時僕はまだ会社員でしたから、単純に知り合いとして、英語の勉強の仕方やSNS投稿のやり方をサポートしていたんです。今思えば、それがマネジメントの仕事の起源かなと思います。

  • そこから、自分の人生を託そう(マネジメントしよう)と思ったタイミングは?

    独立のきっかけは、プロクライマーの野中生萌選手のマネジメントでした。一緒に東京オリンピックで金メダルを取りたいねという話からはじまって、堂安選手はその1年後にマネジメントをスタートしました。

    なぜ彼に賭けてみよう思ったのか ―― やっぱり「目が良かった」ですね。強かったし、魅力的だった。この人間にはいろんなものを引き寄せる力があると確信できたのが、僕がすべての時間をかけて、やれることは全部やりたいと思えた理由かもしれません。

元々は、プロサッカー選手を
目指していた

  • このお仕事を志した原点を教えてください。

    中学校2年生の頃から、この仕事は僕の夢でしたから、その夢を叶えるためにどんな勉強をするか?どういう企業に勤めて経験を積むか?など、さまざまな選択をしてきました。

  • はじめから、ゴールから逆算して動いていたのでしょうか。

    元々はサッカーのプロになりたかったんです。小学校の時は、人より正直ちょっと上手くて、当時はいけるのかな?って自分では思っていたんです。当時はデビッド・ベッカムにすごい憧れてて...でも、中学校に上がってクラブチームに入ったらめちゃめちゃ強い選手ばっかりでした。ずっとベンチで、まったくプレーさせてもらえなくて...その時「無理だな、自分は井の中の蛙だったな。」と気づきました。それが中学2年生の時です。

    でも、そういうトップ選手たちの近くにいられるような仕事は何かないのか?と考えた時、選手と二人三脚で高みを目指せるマネジメントという仕事があることを知ることができました。

    自分には努力をし続ける才能が足りない。けれど、圧倒的な努力ができる人たちの隣で、一緒に同じ景色を見られる立場っていうのはすごい夢があるなと思って。そう考えると、アスリートを支えてるというよりは、やっぱり「連れて行ってもらえる」感覚の方が近いかもしれませんね。

アスリートと同じように
「結果がすべて」

  • お仕事をする上での「信念」や大切にしていることはありますか?

    やっぱり「結果がすべて」という事です。アスリートたちは結果がすべての世界で戦っているので、僕自身も自分に対してプレッシャーをかけて仕事をしています 。極端な話、電話1本で取れた仕事も、1,000回電話して取れた仕事も「取れた」という結果は一緒なんです。アスリート達に結果を求め続けるからこそ、僕も自分の努力や苦労は、基本的に見せないようにしています。

  • 具体的に、堂安選手とのやり取りで意識していることは?

    堂安選手本人にはサッカーに集中してもらうようにしています。そして、彼も僕も本当にいいと思える仕事を一緒にやることで「応援してもらえている、自分の影響力を必要としてくれる人がいる」と彼が感じられれば、それがピッチでも後押しになるはずだと思っています。

    堂安選手から学んでいる姿勢は「自分に矢印を向ける」ことです。サッカーは監督や相手がいて、不確定な要素が多いスポーツです。そこで人のせいにせず「自分がやるしかないんだ」という強い想いを持つ彼の強さには僕も学ばせてもらっています。

マネジメントは
「アスリート
の人生を背負う」職業

  • この仕事に興味を持っている人へ、どのような人が向いていると思いますか?

    キラキラして見えるかもしれませんが、実際は相当泥臭いです。だから、まずは「自分に矢印を向けられる人」ですね。思い通りにいかない時に環境や人のせいにせず、自分の何が足りなかったかを因数分解して考えられるかどうか。それと、アスリートをリスペクトしすぎて遠慮するのではなく、彼らと対等に結果にコミットできる強さも必要です。

    選手がすべてを賭けて戦っている以上、サポートする側も「彼らの人生を背負う」という腹のくくり方が求められます。自分の努力を見せず、選手の結果が出た時、自分のこと以上に幸せに感じられる。そんな「献身」と「野心」の両方を持てる人が、この仕事に向いているんじゃないかなと思います。

杉本さんの思う、
いい未来とは

  • 今後の展望や、杉本さんが思い描く「いい未来」について教えてください。

    アスリートになった人たちに、評価や見返りがあるような世界になってほしいです。僕は正直、アスリートに「狂気」を感じます(笑)。普通に就職するのが一番安全で安心なのに、何の約束もされていない競技でプロに突っ込んでいく。そのネジが外れている人たちが、企業のサポート、国の支援など、何かしらの見返りや注目を得るのは当然だと思っていますし、そういう世界にしていきたいです。

  • それが杉本さん自身の喜びにも繋がっているのですね。

    間違いなくそうだと思います。今、関わっているアスリートのみんなが全員自らのフィールドで活躍をしていて、僕のすべてを賭ける価値があることを常に証明し続けてくれています。

    何かを達成できた時に戻ってくるものは、ちょっと言葉では表せません。ワールドカップで決定的なゴールを決めた選手が、僕のマネジメント選手にいるんですよ?(笑)そういう普通の人が経験できない瞬間を経験できることが、この仕事のやりがいであり生きがいです。「あの感覚をもう一回味わいたい」「またあの景色を見たい」みんなが望む未来に、僕の仕事がちょっとでも影響しているんだったら、もうそれ以上何もいらない。そういう仕事かなと思います。

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