転職を成功させるために不可欠なキャリアの棚卸しとは?
具体的なステップを解説

転職のための採用試験で用いる職務経歴書には、詳細な職務経歴や自己PRを記載します。あなたのキャラクターを確立し、ほかの応募者と差別化するためにも、訴求力のある職務経歴や自己PRを作成する必要があります。「キャリアの棚卸し」は、その土台となるものです。この記事では、キャリアの棚卸しの基本、その手順などについて解説していきます。
更新日:2026/05/18

キャリアの棚卸しの基本を知ろう

【図版】キャリアの棚卸し
職務経歴書には、詳細な職務経歴や自己PRを記載します。採用担当者は、それを読んで次の面接試験に進めるか判断することになり、職務経歴や自己PRに記載されている事項は、面接時の質問の材料にもなります。

つまり、転職活動では、職務経歴や自己PRはそれほど重要だということです。

自己PRでは、自身の長所など行動特性をアピールしますが、職務経歴と連動している必要があります。例えば、「積極性、チャレンジ精神、行動力」などの行動特性があったからこそ、前職で一定の実績を残すことができた、という整合性がなければなりません。

そのためには、しっかりとした自己分析が必要であり、その手法のひとつが「キャリアの棚卸し」ということになります。

キャリアの棚卸しを行う3つのメリット

ここでは、キャリアの棚卸しを行うメリットについて考えてみます。

自分に合った仕事が分かる

とりあえず転職は考えていないけれど、今の仕事・会社は自分には合っていない、という方もいるのではないでしょうか。こうした場合、転職に踏み切れないのは、自分に合った仕事、会社が分からないのが原因です。

「自分に合った仕事」「自分に合った会社」とは、あなたの行動特性、スキルや経験に合った仕事であり、あなたの行動特性と社風が一致する会社を意味しています。

これらが一致していなければ、いくら給与などの労働条件がよい企業に転職しても、結局「今の仕事と会社は自分には合っていない」ということになってしまいます。

キャリアの棚卸しの最大のメリットは、自分に合った仕事と会社が分かることだといえるでしょう。

履歴書や職務経歴書で効果的な自己PRが書ける

転職活動において職務経歴や自己PRは、合否を左右する最も重要な事項です。採用担当者は、まず書類選考の時点で多数の職務経歴書に目を通さなければなりません。

その時点で「おっ!」と目に留まるような訴求力のある職務経歴や自己PRを書くには、行動特性とキャリアでの実績に整合性と説得力が必要となるでしょう。

また、履歴書や職務経歴書は、面接の際の質問事項の材料にもなるため、いわば面接対策でもあるわけです。

キャリアの棚卸しによって、履歴書や職務経歴書で効果的な自己PRが書けるだけでなく、面接対策としても有効な準備作業であることを知っておきましょう。

今後のキャリアデザインの土台となる

【図版】キャリアの棚卸しを行う3つのメリット
キャリアの棚卸しは、転職活動で有効なだけではありません。棚卸しをすることで、転職後の具体的な働き方や将来のキャリアプランをイメージできるようになる、という面もあります。そのキャリアデザインをベースに、転職面接でも具体性を持って自身の働きや貢献できるポイントをアピールできるようになるでしょう。

例えば、企業の人事制度における能力開発のひとつに、キャリアディベロップメントプログラム(CDP:Career Development Program)というものがあります。CDPは、社員の長期的なキャリア形成を目的として、本人の適性を見極めながら配属や教育をしていくというものです。日本では、一般的に大手企業で導入されています。

企業ニーズに合致した社員のキャリア形成をはかることを目的としていますが、社員自身が明確にキャリアの志向性を把握していなければ、人事制度としては十分な効果は望めません。本人にとってもハッピーな会社員生活を送ることはできないでしょう。結果的に転職に至ることも考えられます。

人事制度としてCDPが導入されていない場合も、満足のいく会社員生活を送るためには本人自身が主体的にキャリアデザインを描いていくことが重要です。キャリアの棚卸しは、そのための土台にもなります。

キャリアの棚卸しの手順

では実際に「キャリアの棚卸しシート」を使ってキャリアの棚卸しをしてみましょう。具体的な手順を紹介していきます。
【図版】キャリアの棚卸しシート(サンプル)

Step 1. 現在の勤務先、職務、職務、実績、習得スキルを書き出す

まず、現在の勤務先での仕事について次の事項を「キャリアの棚卸しシート」に記入します。「キャリアの棚卸しシート」には、4つの勤務先・配属先の記入欄があります。

① 会社名・概要
従業員数、資本金、事業内容、売上高などを記入します。

② 部署・役職
部署・役職のほか、担当プロジェクト名を記入します。

③ 期間
在職期間や在任期間を記入します。

④ 職務内容
どのような職種を経験し、どのような業務やプロジェクトを担当したのか、主な仕事内容、プロジェクトの内容などを記入します。

⑤ 人数・役割
部署、プロジェクトの人数などを記入します。

⑥ 実績
目標達成率、売上実績、企画通過率、社内表彰など、数値化できるものは数字で、その他の場合もできるだけ、具体的に記入します。

⑦ 習得スキル・資格
Word、Excel、Photoshopなどのオペレーションスキル、TOEIC点数などの資格について記入します。また、接客などの仕事で習得したスキル、書籍で学んだ知識などについても書いてください。

Step 2. 「1」について自己評価する

自己評価として満足度を5段階評価します。また、シートの2つ目の区分「満足度の分析」に「やりがい」「取組姿勢」「不満要因」「反省点」を記入します。

Step 3. 「1」「2」を過去の仕事についても行う

上記の作業をほかの過去の仕事についても行います。

Step 4. 全体をシートにまとめる

一連の作業で「キャリアの棚卸しシート」の3つの区分のうち、2つが記入されたことになります。

Step 5. 全体を俯瞰して自分の強み・伸ばしていきたい点を書き出す

「キャリアの棚卸しシート」を完成させます。2つの区分全体を俯瞰して「自分の強み・伸ばしていきたい点」「理由」、そして「行動特性」を記入します。その上で、これから先の自分のキャリアの方向性についてイメージします。

なお、行動特性を表現するキーワードとしては類似するものも含め、以下のようなものがあります。

性格・行動特性キーワード
  1. 忍耐強い:勤勉、タフ、打たれ強い、努力家、粘り強い
  2. 明るい:明朗快活、ユーモアがある、社交的、人付き合いがよい
  3. クリエイティブ:独創的、好奇心旺盛、創造的、思考が柔軟
  4. まじめ:素直、約束を守る、几帳面、気配り、繊細
  5. 知的:緻密、理性的、学究肌、研究熱心、探求心旺盛
  6. 気配り:協調性、気遣い、気が利く、話をよく聴く
  7. 意志が強い:物怖じしない、エネルギッシュ、負けず嫌い、熱心
  8. 向上心:チャレンジ精神、ハングリー精神
  9. 行動力:実行力、遂行力
  10. 熱意:意欲的、情熱的、貪欲
【図版】キャリアの棚卸しの手順

実際に自己PRをつくってみる

シートを活用したキャリアの棚卸しの具体的な手順をみてきました。作業自体は、さほど時間がかかるものではないでしょう。

一連の作業を踏まえ、実際に言語化することが重要です。文例として前職が飲食チェーン店長で行動特性が「行動力」の場合の自己PR文をご紹介します。

まず、その前提となる「職務経歴」欄の職務内容について例文を挙げましょう。直近の経歴から記載する「逆編年体式」です。

(例)
平成〇年〇月 〇〇株式会社入社(本社〇〇市、従業員数〇〇〇人)
【事業概要】レストランなどのフードサービス業として全国〇箇所で事業展開。
平成〇年〇月 レストラン○○○ ○○店 店長(正社員○人 パート・アルバイトスタッフ○○人)
【職務内容】店舗管理全般(パート・アルバイト○○名のマネジメント、売上管理、スタッフ教育)。
【実績】平成〇年度:売上〇〇〇〇万円(目標達成率〇〇〇0%)
平成〇年度:売上〇〇〇〇万円(目標達成率〇〇〇0%)
平成〇年度:売上〇〇〇〇万円(目標達成率〇〇〇0%)
平成〇年〇月 レストラン○○○ ○○店に配属(正社員○人 パート・アルバイトスタッフ○○人)
【職務内容】ホールでの接客業務全般(ホールでの接客、配膳業務、店舗の清掃業務、調理補助業務、棚卸し作業)、スタッフリーダー業務(スタッフのシフト管理、新人スタッフのOJT、店長不在時の売上管理業務、在庫管理業務)。
【実績】率先してスタッフのシフト管理に取り組み、店長不在時の管理業務でもトラブルは皆無だった。

次に上記と連動した自己PRの例文をご紹介します。
(例文)
私の長所は行動力です。前職の飲食チェーン店長のときには、それまで実施されていなかったスタッフの能力やモチベーションを高めるための体制を導入しました。初めて店長に配属された店舗は、売り上げが低迷していました。理由は、スタッフのモチベーションが低く、チェーン店としてのブランドイメージにそぐわないサービスの低下があったことです。私は、スタッフの能力やモチベーションを高めるために、定期的な研修やフィードバックの実施を徹底しました。その結果、半年後には売上は前年比を大幅に上回ることができました。こうしたことから、私の長所は、行動力であると認識しています。貴社においても私の長所である行動力を活かし、事業に貢献したいと考えています。

「職務経歴」欄の職務内容と自己PRが連動していることが分かります。この2つの記入欄を記載する前提として、「キャリアの棚卸しシート」による作業が行われています。

まとめ

あなたのキャラクターを確立し、ほかの応募者と差別化するために不可欠なキャリアの棚卸しの概要と具体的な作業の進め方について解説してきました。

今すぐに転職を考えていない場合でも、キャリアの棚卸しをすることは必ず、将来のキャリア形成に役立ちます。「キャリアの棚卸しシート」を活用し、実際にご自分のキャリアの棚卸しをしてみてはいかがでしょうか。
監修者
坪 義生 さん
千葉大学大学院社会科学研究科修士課程修了(経済学)。じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)などがある。

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