気候変動・環境問題の対策は、雇用にどんな影響を及ぼすのか
SDGsやサステナビリティといった言葉が一般的になりつつある現在、国だけでなく、企業も気候変動や環境問題の対策に関心を持ちつつあります。一方、環境対策を推進することで、2030年までに化石燃料分野などに従事する約600万人の雇用が失われるという試算も出ています注1。
気候変動・環境問題への対策は、喫緊の課題です。しかし、それによってどんな産業が縮小、もしくは失われる可能性があるのでしょうか。また、それに伴い失われる雇用に対しては、どのような対策を取っていけばいいのでしょうか。環境コンサルタントの安藤光展さんにお話を伺いました。
気候変動・環境問題への対策は、喫緊の課題です。しかし、それによってどんな産業が縮小、もしくは失われる可能性があるのでしょうか。また、それに伴い失われる雇用に対しては、どのような対策を取っていけばいいのでしょうか。環境コンサルタントの安藤光展さんにお話を伺いました。
公開日:2023/06/30
気候変動・環境問題とは?
◆ 気候変動・環境問題の基礎知識
そもそも、気候変動・環境問題とはどういったものなのでしょうか。- 気候変動 気候が変動・変化してしまうこと。たとえば、地球温暖化による海面水位の上昇、大規模な山火事、田畑の干ばつ、猛暑や豪雨などが挙げられます。
- 環境問題 環境問題は、気候変動よりもう少し大きな枠組みのこと。森林伐採などの自然破壊、環境汚染、ごみ問題のことを指します。環境問題が深刻化すると、生態系へ影響が出たり、異常気象が起こりやすくなったり、農作物に影響が出たりすることもあります。
◆ 気候変動・環境問題が私たちに与える影響
- 猛暑や豪雨などの影響で、農作物が育たなくなる
- 湖が干上がり、水不足や電力不足になる
- 住んでいる地域の環境が変化し、これまでできていた生活ができなくなる
同じように、今対策を強化し始めても、目で確認できるような結果が出るのは10年以上先となります。そのため、放置していると確実に悪くなっていくにも関わらず、「自分ごと化しづらい」という課題があります。
◆ 気候変動・環境問題に注目が集まるようになった経緯
「自分ごと化しづらい」と言われていた中でも、例を見ない干ばつや豪雨といった異常気象が世界各国で起こるようになったため、多くの人に注目されるようになりました。日本では、1960年代の高度成長期に水俣病を始めとした公害が発生したことで、1971年に公害問題に対応する環境庁が設立。それに伴い、環境問題や公害に関する法律もできましたが、企業の活動を規制するものは「経済成長を止めてしまう」という懸念から長らくつくられてきませんでした。
2020年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めを示したパリ協定に署名したことで、ようやく日本における環境関連の規制ができたのです。
企業から注目されている気候変動・環境問題対策
◆ 多くの企業が気候変動・環境問題対策に参入し始めた理由
政府がパリ協定に署名したことも、多くの企業が気候変動・環境問題対策に参入し始めた理由のひとつですが、それ以外にもいくつか理由はあります。- 気候変動・環境問題対策に関する事業には、政府の補助金がある
- 気候変動・環境問題対策に関する事業は、銀行から資金調達を行いやすい
- SDGsの考え方が一般にも広まり、気候変動・環境問題対策に関する事業を行う企業の就職・転職活動人気が高まっている
- SDGsの考え方が一般にも広まり、環境や社会に配慮したプロダクトやサービスであることを重視する消費者や投資家が増えてきた
◆ 気候変動・環境問題対策を行っている企業事例
国内外から気候変動・環境問題対策について高い評価を受けている企業事例をいくつか紹介します。- ある精密化学メーカーでは、自社内で利用した全エネルギーで二酸化炭素排出量ゼロを実現するためにグループ会社を設立した
- ある通信会社では、再生可能エネルギーを選択できる電力メニューの提供を開始した
- ある飲料メーカーでは、子どもたちに水の大切さを伝えるための出張授業を行っている
- あるお菓子メーカーでは、2030年までに廃棄物10%削減を掲げ、数字の良し悪しに関わらず成果を公表している
気候変動・環境問題対策強化により影響を受ける産業とは
◆ どんな産業が、失われる可能性が高い?
産業構造はさまざまな要素で成り立っているため、何か1つの要因で衰退したり、失われたりすることは考えにくいです。しかし、もともと衰退傾向にあった産業の衰退が加速することは考えられます。たとえば、出版・印刷業。紙を大量に使用するということは、その分、紙の生成に使われる水や木といった貴重な資源も大量に消費しているということ。また、紙や本を生成する際には二酸化炭素も排出されるためペーパーレス化が進んでいるいま、失われる可能性のある産業のひとつだと言えます。
同様に、自動車メーカーに部品を卸している部品メーカーも、気候変動・環境問題対策が進むことで失われる可能性があります。今後、ガソリンを使わずに走れる電気自動車が主流となっていくと思われますが、電気自動車は使う部品やパーツが少なく、普及すればするほど部品メーカーは縮小していくことになります。
◆ 伸びていく産業は?
SDGsコンサル、サステナビリティコンサルといった、気候変動・環境問題対策を支援するコンサルティング業界がすでに勢いを見せ始めています。ただ、環境×コンサルティングのマーケットは確実に伸びているものの、人材の育成が追いつかず、需要と共有のバランスがとれていない側面もあるようです。そうすると、今後より需要が高まっていっても、これ以上拡大できない懸念もあります。
気候変動・環境問題対策強化により失われる可能性のある産業の未来
◆ 生き残るヒントは、社会の変化に乗り遅れないこと
しかし、失われる可能性が高い、と言われている産業もただその日を待っているわけではありません。新しいマーケットを作れば、新しい雇用も生まれます。たとえば、あるテーマパーク運営会社では、これまでテーマパーク近隣での売上が9割以上を占めると言われていました。しかし、当該地域は津波や地震に弱い。気候変動・環境問題の影響によっては、今後売上や雇用が大きく変化するかもしれません。そんな社会の変化を敏感に察知し、最近ではベンチャー投資に力をいれ、新しいマーケットを生み出そうとしています。
他にも、出版・印刷業では、編集やデザインなどの領域にまで制作の手を広げるなど、新しいチャレンジを始めている企業も出てきています。
「この産業は失われる可能性が高い」と言っても、その産業に属するすべての企業が失われるわけではありません。今後は、社会のニーズに対応できるかできないかで、生き残れるかどうかが変わってきます。
◆ これからは、企業も個人も“リスキリング”が必要
社会のニーズに対応できるかどうか。それは、失われていく産業だけでなく、伸びている産業についても同じことが言えます。企業はマーケットを開拓するため、新しいチャレンジをしていかなければいけません。また、そういった“未来のある企業”で活躍するためには、個人間でのリスキリングも当たり前のものとなってくるでしょう。10年後、20年後と生き残るためには、企業も個人も社会の変化を敏感に捉え、常に新しいことへチャレンジしていく必要があるのです。
取材先
サステナビリティコンサルタント
安藤光展 さん
一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。ネット系広告会社などを経て、2008年に独立。2016年にサステナビリティコンサルタントに。現在はコンサルタントとしての活動の他、執筆活動や講演会登壇、テレビ、新聞、雑誌など、多数のメディアでサステナビリティに関する取材・出演も行っている。
安藤光展 さん
社会への取り組み
Indeedは、「We help people get jobs.」をミッションとし、
あらゆる人々が自分に合った仕事を見つけられるような社会の実現を目指して、
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