第1回
第1回目に登場するのは、Indeed Japan株式会社 荒木剛さんです。
【プロフィール】
荒木剛さん
所属:Indeed Japan株式会社
採用人事の業務歴:3年目
担当業務:中途採用、新卒採用
2019年4月に同社へ入社し、中途採用をメインに担当。国内外の現場マネージャーと人材の要件定義を行い、採用プロセスの設計、候補者の獲得、面接の実施、オファーまで一連の流れを担う。やりがいを感じる瞬間は、今後の事業成長のために「こんな人がいいね」「妥協したくないね」と、現場のマネージャーと話していたポジションの採用が成功した時。その人の入社初日に“採用担当と候補者”というそれまでの立場から“同僚”として話せるようになる瞬間に、喜びを感じる。
採用人事の担当者におすすめしたい3冊は?
◆『LIFE SHIFT – 100年時代の人生戦略』
(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著/池村千秋訳/東洋経済新報社)
「人生100年時代」にどう生きていくか、変化し続ける環境にどう対応していくべきなのか。自分らしく生きていくためのヒントをくれる一冊として、ベストセラーになった本です。
本書には、従来の社会における「学生→働く→老後」という3ステージが崩れ、ステージの移行を数多く経験するマルチステージの人生へ様変わりすることが示されています。今後の社会では、新しいステージが現れ、選択肢が多様化することを認識できました。
特に、より長くなる「働く」ステージについて、その変化を深く考えるきっかけになりました。私たち採用担当は、候補者が「働く」ステージについて大きな意思決定をする場面に日々立ち合います。候補者が入社後にどのように働き、キャリアを形成していくのか、彼らの人生設計をサポートするのも私たちの役割です。
本書を読んでから、面接や面談で向き合う人たちとの会話の中で「人生の選択肢として何が最善か」を一緒に考えるようになりました。人生設計について、本書で示されるフレームワークを知ることは、皆さんの採用業務にもきっと役立つでしょう。
◆『ワーク・ルールズ! 君の生き方とリーダーシップを変える』
(ラズロ・ボック著/鬼澤忍、矢羽野薫訳/東洋経済新報社)
グーグルの人事部門トップである著者が、採用、育成、評価について詳細に明かしたことで話題を呼んだ本です。大手コンサルティングファームから2006年にグーグルに入社したラズロ・ボック氏は、従業員数6,000人から6万人までに増えていく過程で「世界最高の職場」と評される人事システムを設計しました。
2010年頃のグーグルについて著者は、「無鉄砲でちっぽけな新興企業」と表現しています。世界的大企業となった現在では、にわかに信じがたいですよね。
急激な成長を遂げたグーグルの文化を定義する3つの要素として、「ミッション」「透明性」「発言権」が挙げられています。本書では、定義に至った背景や実際に起こった課題、そしてどう意思決定をして文化を浸透させてきたか、事例を通じて学ぶことができます。
以前の自分は日々の業務に忙殺され、流行りの採用手法やトピックについて「考えてみる」「やってみる」だけで手一杯。それで業務をこなしている気になっていました。
そんな時に本書を読んだのですが、紹介されている行動や考え方は、既に当社でも取り入れていることが多いと感じました。しかし、「どうしてそうするのか」「そこから得られる教訓や弊害は何か」まで掘り下げて考え、採用業務に取り組めている人は一体どのぐらいいるでしょうか? 本書は、私に日々思考しながら採用活動を進めるきっかけを与えてくれました。
◆『労務管理のことならこの一冊』
(高橋幸子著/自由国民社)
労務管理の基礎知識と職場での具体的なケースを想定したトラブル防止、解決法の指南書です。入社後の社員が直面し得る労務課題として、残業などの労働環境、メンタルヘルスの不調、ハラスメント、産休や育休取得のハードルなどが挙げられます。これらを知ることは、採用と人事どちらの領域でも大切ではないでしょうか。
私は初めて管理職になった際に、労務管理を学ぼうと本書を手に取りました。会社組織には、様々な法律や会社規定、過去の失敗の蓄積に基づいて明文化されたルールがあることを知りました。本書を読んで、組織で働くことに対する理解が進んだといえます。
自社の制度や過去の業務事例については、ある程度話せる採用担当も多いと思います。そこからさらに一歩踏み込んで、自社の取り組みにどんな特徴があるのかを語れるようになるため、原理原則を学ぶのに非常にわかりやすい一冊です。
読後はチームメンバーへの接し方だけでなく、採用業務について自信を持って話せる範囲が広がりました。労務問題を起こさないために自社の管理職がどう努力しているかを候補者に伝えることで、安心して入社を決めてもらえると考えています。
【自社での取り組み紹介】初めてオンライン選考を導入するには?
コロナ禍では、採用計画の立て直しを行ったりオンライン選考を導入したりと、手探り状態が続く採用担当者は多いと思います。
当社では、早くからオンライン完結型の選考を進めてきました。初めは「オフィスに来ないままで意思決定をしてくれるだろうか」「直接会わないと分からないところを見逃していないだろうか」と不安がありました。しかし、転職活動中の候補者も全く同じ不安を抱えているはずです。そこで大事なのは、「仕方ない」と最低限の面接と質疑応答だけで乗り切ろうとするのでなく、どうすればその不安を解消できるかを考えて、一つずつ実行していくことだと思います。
自社のWebサイトでの情報発信や候補者向けの自社紹介スライドの作成、オンライン上で社員と候補者が交流できるイベントの設計など、少しのアイデアと労力でできることは広がります。採用チームは、新しい時代の採用手法をいち早くキャッチアップし、ノウハウを蓄積していくことが求められているのではないでしょうか。
また採用で大切なのは「いつまでに、何人採用するか」だけでなく、採用した方が入社後、どのような役割でどのように活躍してくれるかをイメージすることだと思います。「会社や現場は、なぜ人を増やそうとしているのか」。そこをきちんと考えることで、採用すべき人材要件が設計できます。採用したい人に納得してもらうため、自社の課題と解決に向けたチャレンジを自分の言葉で伝えられるようにもなります。
こうした作業を丁寧に行うことで、ミスマッチのない採用に繋げられると思います。入社後に活躍するイメージを候補者と共有できるよう、採用担当として日々アップデートを重ねていきたいですね。
TEXT:合戸 奈央
EDITING:Indeed Japan +ノオト