2021年4月からキャリアアップ助成金が改正 変更点と注意事項

非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するため、事業主に対して助成金を支給するキャリアアップ助成金制度。この制度が2021年4月1日に制度改正されました。では今後、申請する際に気をつけなければならないことは何でしょうか? 具体的な変更点と共に解説します。

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キャリアアップ助成金の変更点

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対して、助成金を支給する制度のことです。

◆正社員化コースの支給額

例えば有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換および直接雇用する「正社員化コース」については、
(1)有期雇用⇒正規雇用=1人あたり57万円
(2)有期雇用⇒無期雇用=1人あたり28万5,000円
(3)無期雇用⇒正規雇用=1人あたり28万5,000円
がそれぞれ支給されます。
※ただし1年度1事業所あたりの申請上限は20人まで
 
この制度におけるめぼしい3つのコースについて、変更のポイントをまとめました。

◆正社員化コースの変更点のポイント

(1) 正規雇用等への転換時の賃金増額率が「5%以上」から「3%以上」に引き下げ
従来の制度では、有期雇用等から正規雇用等に転換した場合、転換前6カ月と転換後の6カ月の賃金総額を比較し、5%以上の増額が必要でしたが、令和3年4月1日以降の転換については、3%以上の増額で認められるようになりました。基準が5%から3%に引き下げられましたので転換時のハードルが下がったといえるでしょう。
 
(2)賃金総額に賞与は含めない
従来、賃金総額に賞与を含めることが可能でしたが、令和3年4月1日以降の転換では含めることができなくなりました。そのため、基本給および定額で支給されている諸手当だけで3%以上の賃金増額が必要となります。
 
ただし、毎月の給与で支給されているとしても、賃金総額に含めることができないものがあります。本人の営業成績等に応じて支払われる歩合給や実費補填的な意味合いのある通勤手当や住宅手当等は、賃金総額に含めることができませんので、賃金総額に含めることができるのかどうかを事前にきちんと確認しておきましょう。
 
(3)短時間正社員制度の追加
令和3年度からは、1事業所当たり1回のみ、短時間正社員に転換した場合に助成金の加算措置があります。短時間正社員制度を規定し、短時間正社員に転換した場合に対象となりますが、すでに短時間正社員制度を導入している事業所は対象になりません。

◆障害者正社員化コースを新設

障害者雇用安定助成金の令和2年度末での廃止に伴い、今回の改正では「障害者正社員化コース」が新設されました。障害者の雇用促進と職場定着を目的として、障害を持つ人材を対象に、次のいずれかの措置を講じた事業者に対して、助成金が支給されます。
 
(1)有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換すること
(2)無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換すること

◆諸手当制度等共通化コースの変更点

令和3年度から「健康診断制度コース」は「諸手当制度等共通化コース」に統合されました。非正規雇用労働者に対して、次のいずれかの措置を講じた事業者に助成金が支給されます。
 
(1)有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設けて適用した
(2)有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した
 
対象となる手当は以下の通りです。次のいずれかの制度を新設し、定められた条件で適用する必要があります。

  • 賞与(6カ月分相当として5万円以上支給)
  • 家族手当(1カ月分相当として1つの手当につき3,000円以上支給)
  • 住宅手当(1カ月分相当として1つの手当につき3万円以上支給)
  • 退職金(月3,000円以上積み立て)
  • 健康診断制度(定期健康診断等の受診日の前日から起算して3カ月以上前の日から受診後6カ月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であること)

改正に伴う企業側のメリットとは

今回の改正では、要件の緩和によって申請しやすくなっているといえるかもしれません。また、このキャリアアップ助成金は「生産性要件」の対象でもあり、会社の生産性を一定基準以上引き上げたと認められた場合、助成金額が増額されます。1年間で最大1440万円までの受給が可能な助成金であるため新規雇用や有期雇用労働者等の正社員化などを検討している企業にとっては、自社の生産性を高めることと合わせて、助成金の受給に繋げることができるかもしれません。

申請する際の注意点

今回の制度改正については、こちらで記載しているものがすべてではなく、他にも細かな変更点があります。助成金の申請については、要領に定められた手順と内容で進める必要がありますので、令和3年度中に助成金の活用を検討している場合は、厚生労働省のホームページなどで詳しい要項を事前に確認のうえ、準備を行うようにしましょう。


※記事内で取り上げた法令は2021年6月時点のものです。
 
<取材先>
汐留社会保険労務士法人 社会保険労務士 池田優子さん
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
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