データで見る、職場におけるLGBTQ+当事者の困難と対策
LGBTQ+当事者が置かれている現状や直面している困難にはどのようなものがあるのでしょうか。LGBTQ+当事者の職場環境について、2013年から調査・分析を続けているNPO法人「虹色ダイバーシティ」で事務局長を務める有田伸也さんにお話を伺いました。
公開日:2023/11/29
職場におけるLGBTQ+当事者の困難を約10年間分析
――虹色ダイバーシティさまの「NIJI BRIDGE」というサイトには、主にLGBTQ+当事者を対象にしたアンケート結果が掲載されていますよね。これはどういったデータなのでしょうか。
NIJI BRIDGEは国内・国外問わず、私たちの団体が信頼しているLGBTQ+に関する調査データを紹介するサイトです。国内のデータには2013年から私たちが実施してきた、LGBTQ+の仕事と暮らしに関するアンケート調査「nijiVOICE」のデータも含まれます。
2013年に実施したアンケート調査は、弊団体の代表を務めている村木真紀が一人で行ったパイロット版(試験的に作成したもの)ですが、2014年から2020年までは国際基督教大学のジェンダー研究センターの学術研究者とともに調査・分析を進めてきました。2020年以降は、本プロジェクトに携わっていた学術研究者の方を中心に調査・分析を継続しています。
虹色ダイバーシティは立ち上げ当初、LGBTQ+当事者が直面する職場での問題を解決するために、海外における調査データを中心に紹介していました。なぜならば、LGBTQ+と職場に関する調査データがほとんど日本には存在していなかったからです。日本企業からは、海外のデータではなく日本のデータを求められる機会が増え、データが存在しないのであれば自分たちで調査をしよう、ということで2013年からアンケート調査をスタートしました。
LGBTQ+当事者が働くうえで直面しやすい困難は「差別的言動」
――LGBTQ+当事者が働くうえで、直面しやすい困難にはどういったことがあるのでしょうか?
「職場のLGBT白書」より抜粋
最も多いのは「異性愛規範の強制/逸脱とみなす言動」です。恋愛や結婚、育児において同性間のあり方が想定されていないため、度々職場で起こることがあります。たとえば、恋人がいない男性に向かって「そろそろ彼女をつくって結婚しなよ」と言うことなどが挙げられます。異性愛を前提に話が進み、それ以外のあり方が想定されないことで居心地の悪さを感じている人たちが皆さんの周りにもいるかもしれません。
次に多いのが、「単語の差別的な使用」です。「ホモ」や「レズ」といった差別的な言葉を使用することで、LGBTQ+当事者やアライの人たちなどに居心地の悪さを与えているかもしれません。ちなみに、こうした言葉を差別的な単語だと思わずに使用しているケースがとても多いと感じています。まずは「知る」ことがとても重要です。
3番目に多いのが、いわゆる「男性らしさ」「女性らしさ」を押し付けられる「ジェンダー規範の強制/逸脱とみなす言動」です。
――職場における差別的な言動の状況は、徐々に変化してきているのでしょうか。
2018~2020年までの3年間のデータの経年変化をみると、差別的な言動は少しずつですが、全体として減少傾向にあるという結果が出ています。
しかし、2020年に差別的言動があると回答したLGBTQ+当事者が約40%なのに対し、非当事者は24.3%と、差別的な言動があると回答した方はLGBTQ+当事者のほうが多くなっています(※1)。さまざまな要因が想定されますが、もしかするとLGBTQ+当事者は差別的言動に気付いているが、当事者ではない人たちは差別的言動に気付いていない可能性があることが、このデータから読み取れます。
(※1)参考:職場のLGBT白書
――ほかにも、LGBTQ+当事者の働くことに関する困難はありますか。
LGBTQ+当事者が抱える困難は、職場での差別的な言動による精神的苦痛だけではなく、就業形態や収入といったかたちでも現れています。
「職場のLGBT白書」より抜粋
また、就業形態に関しては、出生時に割り当てられた性別が男性より女性の方が、シスジェンダーよりトランスジェンダーの方が非正規雇用の割合が高い結果が出ています。職場における年収や就業形態など、さまざまな点において差が生まれているため、今後もデータを注視する必要があると考えています。
――LGBTQ+当事者ではない人たちと比べて、収入が低い・学歴が低くなる傾向にあるのはなぜでしょうか?
一概に明確な原因を提示することは難しいのですが、就職以前の教育現場に大きな原因があると見ています。特に生まれたときに割り当てられた性別が女性のトランスジェンダーで学歴が低い人の割合が高い結果が出ました。
教育現場でLGBTQ+に関する正しい知識を学ぶ機会がないことで、自分自身の性のあり方が周りと違うことに違和感を抱いたり、男女分けされている状況に居心地の悪さを強く感じたりすることで教育にアクセスできなくなる人が増える。その結果、大学等の高等教育を受けられず、非正規雇用の割合が増加することにつながっているのではないかと私たちは分析しています。
職場でのLGBTQ+施策の数を増やすことが大切
――LGBTQ+当事者が働きやすくなるために、企業はどのようなことができるでしょうか。
「niji VOICE 2022 報告書」より抜粋
――実際に導入されている職場のLGBTQ+施策には、どのようなものがあるのでしょうか。
私たちの調査データでは、残念ながら自社にLGBTQ+施策は何もないと回答した人が最も多かったです。そのうえで、研修やeラーニングを導入する企業が近年多くなっています。
次に多いのが「差別の禁止の明文化」です。人権規定の中には、人種や性別、国籍、宗教などへの差別を禁止しますという条文が盛り込まれています。そうした規定の中に、性的指向や性自認といった項目も記載されるようになってきました。そのほか、「相談窓口の設置」や福利厚生で「同性パートナーを配偶者として扱うこと」などが挙げられます。
私どもとしてはLGBTQ+に関する正しい知識を学んでほしいので、研修やeラーニングを積極的に導入してほしいと考えています。
ただ、それが難しい場合には、ポップやポスターの掲示、ステッカーの配布などを通じて、多様な性のあり方を可視化する取り組みもあります。6月のプライド月間に合わせて、ポップを社員食堂や休憩所に置いてみるなど、小さな一歩を踏み出すことがとても大切です。
虹色ダイバーシティが公開している、職場で掲示できるLGBTQ+啓発ポスター
虹色ダイバーシティが無償配布している、職場ですぐに使えるレインボーPOP
――最後に、虹色ダイバーシティさまが今後取り組んでいきたいことについて教えていただけますか?
私どものミッションは「Bridging the gaps for diversity & inclusion」で、SOGI(※2)による格差のない社会をつくり、次世代につなぐことを目指しています。
(※2)Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字で性的指向と性自認のこと。性的指向は好きになる相手の性別、性自認は自身の性別をどう認識しているかを表現する性の要素
設立当初、職場に関する問題に注力する機会が多かったのですが、年々、団体として取り組む領域が幅広くなってきました。「医療」や「住まい」「子育て」「スポーツ」におけるLGBTQ+の困りごとの解決に向けても積極的に取り組んでいます。今後も多角的な視点を大切にしながら、SOGIによる格差のない社会を実現するために活動を続けていきます。
そのために、海外の先進的な取り組みにも目を向け、情報をキャッチアップしていきたいです。
取材先
認定NPO法人虹色ダイバーシティ 事務局長
有田伸也 さん
1986年奈良県生まれ。近畿大学理学部卒業。5つ星ホテル、飲食業界にてマネージメント業務に従事。前職の飲食関連ベンチャー企業で、人事・採用・教育・労務など、人事系の幅広い業務を経験し、現職に。大手企業へのLGBTQ施策導入・推進支援の実績多数。
有田伸也 さん
社会への取り組み
Indeedは、「We help people get jobs.」をミッションとし、
あらゆる人々が自分に合った仕事を見つけられるような社会の実現を目指して、
人々が仕事やキャリア形成に向けて多様な可能性を感じられる機会の創出に取り組んでいます。
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