こんな振る舞いをしていない?
職場でSOGIハラになりえる言動と対策法

職場における発言や行動で、知らず知らずのうちに人を傷つけてしまうことがあります。どんな人にとっても心地よい職場環境をつくるにはどうしたらよいのでしょうか。職場におけるシーン別に心がけたいことについて、認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」で事務局長を務める有田伸也さんにお話を伺いました。
公開日:2023/09/29

職場において最も多いSOGIハラスメントの一つ「差別的発言・行動」

私たちが毎年実施している、LGBTQ+の仕事と暮らしに関するアンケート調査「nijiVOICE」注1の結果によると、職場でLGBTQ+に関する差別的言動が起こっていることがわかっています。
(資料提供:虹色ダイバーシティ)
これらの言動を繰り返し行うことは、職場におけるSOGI(※Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字で性的指向と性自認のこと。性的指向は好きになる相手の性別、性自認は自身の性別をどう認識しているかを表現する性の要素)ハラスメントに該当するため、絶対に避けてください。

◆ 職場のあらゆるシーンで起こりうるケース

LGBTQ+当事者に関する発言を例に挙げると、「ホモ」や「オネエ」といった差別的な言葉の使用や、「うちの職場にはゲイはいない」といった存在の否定、そのほか「LGBTQ+はみんな個性的で苦手」「オネエタレントは気持ち悪い」といった属性を1つに括った否定などがあります。

◆ 職場における特定のシーンで起こりうるケース

中途採用や異動で赴任してきた同僚に対して「あの人って本当に男性なの?」「新しく来た人はレズビアンって聞いたけど本当?」などと、性別に関わる詮索や噂話を執拗にし続けたりするケースです。
注1:参考:過去のnijiVOICE一覧

職場において個人間で起こりうる「属性の決めつけ」

差別的な発言・行動に次いで、性的指向や関係性、性別などを一方的な思い込みで判断する「属性の決めつけ」についても注意が必要です。

◆ 同僚に対する「属性の決めつけ」の事例と対策

同じ職場内で、従業員の活躍について褒めるときに「女性ならではの提案だね」という言動があったと仮定します。この言葉の裏には「女性だからできた」という意味合いや「女性らしさ」への偏見が隠れています。

こうしたケースでは「◯◯さんらしい素敵な提案だね」などと、性別に関するフィルターを通さずに、一人ひとりを評価することが大切です。

◆ お客様に対する「属性の決めつけ」の事例と対策

属性の決めつけは、お客様に接客する場面でも起こり得ます。たとえば小売業の場合、男性同士あるいは女性同士で来店したお客様に対して、「ご友人の意見も大切ですよね」と言ったと仮定します。この言葉は「同性同士なのだから友達であるに違いない」という想定のもと発されているため、もしもお客様が恋人同士だった場合に居心地の悪い思いをさせてしまう可能性があります。

このケースでは、「ご友人」ではなく「お連れ様」という言葉を使うほか、明らかに交際している間柄であることがわかる場合でも、性別の決めつけにならないよう、「彼氏/彼女」ではなく、「お付き合いしている方」や「パートナー」といった言葉に言い換えるようにします。

◆ お客様に対する「性別の決めつけ」の事例と対策

属性の決めつけの一種には、性別に関する決めつけも含まれます。たとえば、化粧品をはじめとした女性が購入することが多い商品を、男性のお客様が購入した際に、「どなたへのプレゼントですか?」と尋ねることも「性別に関する決めつけ」に含まれます。お客様が自分で使うために購入していた場合は「男性が自分用に買うはずがない」というメッセージが伝わって居心地が悪くなってしまうためです。

このケースでは、「贈り物ですか?」ではなく「ご自宅用ですか?」と言い換えると、より多くの立場の人を包括する言葉になります。

◆「属性の決めつけ」と言い換え表現

対象を限定してしまうことで、誰かが取り残されてしまう表現には今後配慮が必要になってくると思います。

たとえば、不動産業界で例を挙げると「夫婦別々の寝室」という言葉は、男性と女性を想起させる「夫婦」が使用されています。これらの単語が何度も続くことで、同性カップルが「自分達のあり方はここには包括されていない」と違和感を抱くかもしれません。こうしたケースでは、「広々とした別々の寝室」と言い換えると、より多くの方を包括する表現になります。

ほかにも「出産後、もう一部屋あれば自分の時間が持ちやすい」といった言葉も、物件を検討している方が、同性カップルをはじめ、血縁関係にある子どもを何らかの理由で持てない方であった場合には、取り残されている感覚を持つかもしれません。「出産」を「家族が増える」と言い換えるだけで、より多くの方が自分ごととして感じるのではないでしょうか。

これらはとても小さなことかもしれません。ですが、今後より多様性が尊重される社会になっていくにつれ、自身の発言や会社として発信している情報に対して、立ち止まって振り返れるかが重要になってくるのではないでしょうか。そしてその際は、自分だけではなく是非チームで進めていってもらえたらと思います。

このように、無意識の偏見に基づく「属性の決めつけ」を避けるためには、より多くの人を包括できる言葉を知っておく、選択肢として持っておくことが非常に重要です。

職場においてSOGIハラを防ぐためにできること

職場において知らず知らずのうちに人を傷つけることを防ぐ対策としては「正しい知識を身に着けること」と「『自分らしいとっさの一言』を考える」ことの2つがあります。

◆ 対策①「正しい知識を身につける」

LGBTQ+についての配慮を例に挙げると、SOGI(に関することは繊細な個人情報であると、認識をアップデートすることが大切です。

性的指向や性自認などの個人情報を本人の了解を得ずに暴露することがパワハラに当たることは、厚生労働省が定める「パワハラ防止指針」の中にある「個の侵害」という項目にも記載されています。

◆ 対策②「『自分らしいとっさの一言』を考える」

同僚はもちろん、取引先の方から「あの人ってトランスジェンダーなの?」などと聞かれたときは話に乗ってはいけません。こうしたケースでは「それは繊細な個人情報なので、私からは言いかねます」「企業方針として、そうした話について本人の了承を得ずに言及することはできません」などと返答することができます。

上記のケース以外でも、LGBTQ+当事者へのハラスメントに該当する発言や行動を目の当たりにしたときには「自分らしいとっさの一言」で、ハラスメントを止めることが大切です。
(資料提供:虹色ダイバーシティ)
具体的には「これは相手にとってハラスメントになる可能性があるよ」「私もまだ勉強中だけど、そういう発言を控えていこうね」といった言葉などが挙げられます。

差別的言動を制止する際は、「指導」や「叱る」といったニュアンスではなく「伝えていく」ことを意識します。差別的言動を発している側は、それが差別的だと認識していないケースがほとんどであるためです。誰もが気づかぬうちに言ってしまっている可能性があるからこそ、正しい知識を得た人たちが知らない人たちに伝えていってもらえると嬉しいです。
取材先
認定NPO法人虹色ダイバーシティ 事務局長 
有田伸也 さん
1986年奈良県生まれ。近畿大学理学部卒業。5つ星ホテル、飲食業界にてマネージメント業務に従事。前職の飲食関連ベンチャー企業で、人事・採用・教育・労務など、人事系の幅広い業務を経験し、現職に。大手企業へのLGBTQ施策導入・推進支援の実績多数。

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